一般に1か月以上に及ぶ期間の気象予報をいう。日本の気象庁では、1週間先までの予報を週間予報、これより長い1か月、3か月、暖候期、および寒候期を対象とする予報を季節予報とよんでいる。日常一般にはこの季節予報のことを長期予報とよぶ。長期予報では予報対象期間の天気の状態を、平年より高い(多い)、平年並み、平年より低い(少ない)などの3階級に分け、それぞれの階級の状態が出現する可能性を確率表現する。従来の長期予報は、南北両半球の地上および高層の大気の状態のほか、海水温、雪氷面積、火山活動等の大気以外の状態など、多種多様な天候変動要因の時間的空間的変動を統計的手法を用いて解析し予報に利用してきた。1980年代以降、地球温暖化や気候変動の研究が国際的な協力のもとで行われるようになった結果、数値予報技術を長期予報に応用する技術が開発され、実際の予報に利用されている。
長期予報のための数値予報では、大気の初期状態だけでなく、長期の気象変化に重要な海面水温や雪氷原、植生など大気の境界条件を表すデータを数値予報モデルに取り込んでいる。また、長期間の予測計算では、初期値(観測値や解析値)に不可避的に含まれる微少な誤差が、予測時間の経過とともに拡大あるいは変化し、予測結果に誤差として影響する。初期値の誤差が違えば、予測値の誤差も違ったものになる。初期値に含まれる誤差を完全になくすことは現実的に不可能であるため、予測の誤差をなくすことも不可能である。このような誤差を含んだ予測結果を利用する方法として、アンサンブル予報とよばれる手法が用いられている。初期値に含まれる誤差を可能性のある範囲内で変えて、数多くの予測計算を試験的に行うことにより、いくつもの異なる予測結果が得られる。これら多くの予測結果の平均をアンサンブル平均とよび、また、個々の予測結果をメンバーとよぶ。多くの予測のうちどの予測(メンバー)が正しい予測に近いかは不明だが、何らかの理由をつけて特定のメンバーを最良の予測結果として選ぶよりも、アンサンブル平均を最良の予測値として採用した場合に、予報成績がよくなるという結果が得られている。また、メンバーのばらつきは予報の信頼性を表す指標でもある。メンバーのばらつきが大きければ予報の信頼性は低く、小さければ予報の信頼性は高い。さらに、多くのメンバーの予測値の分布からは予測値の確率分布が得られるので、確率予報に利用できる。
[能登正之]
『全気象労働組合編『天気予報はどうなっているか』(1988・大月書店)』▽『内嶋善兵衛著『四季の農業気象台』(1990・農林統計協会)』▽『岩崎俊樹著『数値予報――スーパーコンピュータを利用した新しい天気予報』(1993・共立出版)』▽『立平良三著『気象予報による意思決定――不確実情報の経済価値』(1999・東京堂出版)』▽『天気予報技術研究会編、新田尚・立平良三著『最新 天気予報の技術――気象予報士をめざす人に』改訂版(2000・東京堂出版)』▽『気象庁監修『1か月予報ガイド』(2000・気象業務支援センター)』▽『西本洋相著『気象予報士の天気学』(2002・成山堂書店)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…天気予報には予報期間によってここ一両日の天気を予報する短期予報,1週間先までの毎日の天気を予報する週間予報,1ヵ月,3ヵ月先までのおおよその天気の推移を予報する1ヵ月予報,3ヵ月予報,来る夏や冬の天候を予報する季節予報がある。1ヵ月以上の予報を総称して長期予報という。また,災害が起こりそうなときに出す気象注意報や気象警報も広義には天気予報の一種である。…
※「長期予報」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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