閉伊川(読み)へいがわ

日本歴史地名大系 「閉伊川」の解説

閉伊川
へいがわ

盛岡市との境にある区界くざかい(標高七五一メートル)水源とし、北上高地を削ってほぼ西から東に流れ、宮古湾に注ぐ。流路延長七五・六キロ。二級河川。下閉伊郡域内では深い峡谷を形成しつつ蛇行し、国道一〇六号(閉伊街道)とJR山田線が並行して走る。「邦内郷村志」に「二日半路行程、数百千流を争い閉伊川に輻奏、舟あらず渉べからず」とある。おもな支流御山おやま川・夏屋なつや川・小国おぐに川・薬師やくし川・刈屋かりや川・長沢ながさわ川などがある。古くは「続日本紀」霊亀元年(七一五)一〇月二九日条にみえる「閇村」を流れる川として川とよばれていた。元亨四年(一三二四)一一月二三日の関東下知状案(宮古田鎖文書)に、この河川敷にできた集落として閇河(のちの根市村、現宮古市)の名がみえる。当時はこの付近に船着場があったが、室町時代にはいるとやや下って小山田こやまだ(現同上)に船着場ができており、阿部家伝(豊間根文書)に「湊、或は閉伊湊と呼ばれた」とある。戦国期にはなお下って、黒田くろた(現同上)が湊となり、江戸時代にはいっては元和元年(一六一五)新たに宮古村が立てられ宮古湊が開かれた。

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改訂新版 世界大百科事典 「閉伊川」の意味・わかりやすい解説

閉伊川 (へいがわ)

岩手県中央部を流れる川。北上高地の兜明神(かぶとみようじん)岳(1005m)に源を発し,区界(くざかい)高原を曲折しながら東流して宮古市の旧川井村,旧新里村を流れ,同市藤原で宮古湾に注ぐ。幹川流路延長75.7km。北上高地を横切って流れるため上・中流部に深い峡谷をつくり,高原のシラカバと渓谷美は〈盛山(せいざん)渓〉とよばれ,快適な観光地となっている。中流部の腹帯(はらたい)付近に腹帯発電所(最大出力1万0700kW)があり,河口の三角州低地に宮古市の市街地が立地している。河谷に沿ってJR山田線,国道106号線が通じる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「閉伊川」の意味・わかりやすい解説

閉伊川
へいがわ

岩手県中央部の北上(きたかみ)高地兜明神岳(かぶとみょうじんだけ)(1005メートル)に源を発し、区堺(くざかい)高原を東流、宮古(みやこ)市藤原(ふじわら)で宮古湾に注ぐ川。延長75.7キロメートル。御山(おやま)川、夏屋(なつや)川、小国(おぐに)川、刈屋(かりや)川、長沢(ながさわ)などの支流を集め、下流では広い沖積地をつくり河口三角州に宮古市を発展させた。下流は変化に富む奇岩景勝に恵まれ、魚類生息も多い。JR山田線、国道106号が並走している。

[金野靜一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「閉伊川」の意味・わかりやすい解説

閉伊川
へいがわ

岩手県中央部,北上高地の兜明神岳付近に源を発し,蛇行しながら深い峡谷をつくって東流し,宮古湾に注ぐ川。全長 76km。上流から川内,箱石,川井,腹帯,茂市の小集落があり,河口の三角州低地に宮古市がある。峡谷に沿って JR山田線,閉伊 (宮古) 街道 (国道 106号線) が通る。沿線は高原のシラカバや渓谷美の「盛山渓」がある観光地。

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百科事典マイペディア 「閉伊川」の意味・わかりやすい解説

閉伊川【へいがわ】

岩手県中央部の区界(くざかい)峠東麓に発し,古生層の北上高地を峡谷をつくって東流,宮古市で太平洋に注ぐ。長さ76km。古くは閇川とも称され,14世紀には船着場があった。江戸時代の初めから役鮭を納めていたが,一方では洪水の多い河川でもあった。谷沿いに山田線と国道106号が通じる。電源開発,流域一帯の森林開発が進む。

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