[1] 〘名〙
[一] 空間的にいう。
① ある物の存在する近くの空間を漠然とさしていう。そば。あたり。
※万葉(8C後)三・四八一「朝霧の おほになりつつ 山城の 相楽(さがらか)山の 山の際(ま)に 行き過ぎぬれば」
② 二つ以上の同質の物のあいだにある空間。あいだ。あわい。
※万葉(8C後)七・一一九四「紀の国の雑賀(さひか)の浦に出で見れば海人(あま)のともし火浪の間(ま)ゆ見ゆ」
③ 連続して並んでいるようなものの中間の、あいている空間。すきま。転じて、人と人との関係に生じた間隙。→
間(ま)無し・
間(ま)無し。
※十輪院内府記‐文明一七年(1485)八月九日「武田与所司代有レ間云々」
④ 建物の柱と柱の間。
(イ) 建物の居住区で二本の柱を一辺とする部分。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「ま一つに臼四つ立てたり、臼一つに女ども八人たてり」
(ロ) 柱間と規格化された畳の寸法との関係を示す名。「京間」「江戸間」など。
⑤ 部屋などの一区切り。古代の家屋は、部屋としての独立した構造を持たないことが多いので、几帳、障子、襖などで区切られた一区画をさしていい、前項の例と区別しがたい場合も多い。部屋がそれぞれ独立して作られるようになると、主として部屋をさしていう。「居間」「次の間」「床の間」など。
※枕(10C終)一八四「次のまに長炭櫃にひまなく居たる人々」
[二] 時間的にいう。
① ある限定された時間的なひろがり。
※万葉(8C後)五・八〇四「蜷(みな)の腸(わた) か黒き髪に いつの麻(マ)か 霜の降りけむ」
② ある動作・状態が継続している時間帯。間(かん)。
※万葉(8C後)四・七〇九「夕闇は道たづたづし月待ちていませ我が夫子(せこ)その間(ま)にも見む」
※海を見に行く(1925)〈石坂洋次郎〉「もしそれが雨降りの夜でもあれば、滴のポトンポトンという音が、語彙に乏しい会話の間(マ)を埋め」
④ 何かをするのに振り当てる時間。機会。
※人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)四「おいそがしいから、夫で此方へお出なさるお間(マ)がなひので在(あら)ふ」
⑤ 邦楽・舞踊・演劇で、音と音、動作と動作の間の休止の時間的長短をいう。転じて、拍節・リズム・テンポと同意に用いる。
※門三味線(1895)〈斎藤緑雨〉二〇「唄の間(マ)外したで沢山なを未足らぬか儂が肱へぶつかって」
⑥ めぐりあわせ。運。
※歌舞伎・絵本合法衢(1810)五幕「『お亀、与兵衛が勘当のその内に丁度くたばったから、ソレ、殺し手は与兵衛となるワ』『成る程、こいつは好い間(マ)だの』」
[2] 〘接尾〙
① 柱と柱の間を単位として数える時に用いる。実際の長さは一定しないが、六尺から一〇尺ぐらいをさす。室町時代には七尺ないし六・五尺であった。
※枕(10C終)一九三「灯籠(とうろ)に火ともしたる二まばかりさりて」
② (二)①から、建物や部屋の広さをいうのに用いる。一間は、たてよこ一間に一間の広さをいい、五間といえば二間に二間半の広さをいう。
※禁秘鈔(1221)上「一 清涼殿。〈略〉二間。敷二畳二帖一」
③ 部屋の数を数えるのに用いる。「三間の家」
④ 一定の区切られた空間を数えるのに用いる。障子の桟で囲まれた一区切など。
※徒然草(1331頃)一八四「明り障子〈略〉なほ一間づつ張られけるを」