防波堤(読み)ぼうはてい(英語表記)breakwater

精選版 日本国語大辞典 「防波堤」の意味・読み・例文・類語

ぼうは‐てい バウハ‥【防波堤】

〘名〙 港の海中に設け、外海からの波浪を防いで港内を静穏に保つための突堤。比喩的に、外からの圧力やよくない影響が及ばないように守るものをいうこともある。
※仏国風俗問答(1901)〈池辺義象〉附録「我船は進んでフエヤブエー浮標、防波堤灯台の前を過ぎ」

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デジタル大辞泉 「防波堤」の意味・読み・例文・類語

ぼうは‐てい〔バウハ‐〕【防波堤】

外海からの波浪を防ぎ、港内を静穏に保つために築く突堤。
よくない影響の及ぶのを防ぐもの。「親が子供防波堤となる」
[類語]堤防土手突堤・堤塘

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「防波堤」の意味・わかりやすい解説

防波堤
ぼうはてい
breakwater

防波堤は港湾における外郭施設の主体をなすもので、外海から来襲する波浪が港内へ浸入するのを防ぎ、また状況に応じては、高潮津波の浸入を軽減するために設置されるものである。防波堤の歴史は古く、当初は地中海で用いられ、現存するものではローマ時代のハドリアヌス帝のころのものが知られている。地中海周辺では重量の大きい5トン程度の石材が多量に採取できるため、これら石材を用いた捨石(すていし)堤が用いられた。捨石堤前面の法面勾配(のりめんこうばい)は1対3に保つように計画されたが、低気圧、季節風によって波高が5メートルを超えることが多く、法面は崩れて1対8程度以上になり、石材も飛散して、絶えず補修の必要に迫られていた。このような状態が18世紀まで続いていたが、このころよりイギリス、フランス、オランダの北海グループが、当時のセメント・コンクリート技術の進歩に裏づけられて、捨石部の上部にコンクリートブロックの層積みあるいはコンクリートケーソン壁体を据え付け、捨石部の頂面を海面下へ大きく下げて、現今の混成堤へ導く技術を展開してきた。一方、フランス、イタリアを含む地中海グループは、捨石堤の弱点は波高に対する石材重量の不足にあることから、1個当り30~50トンのコンクリートブロックで被覆する方法を採用し、これが今日のマルセイユ港の長大な防波堤にその姿を見せることとなった。この流れはさらに深まり、コンクリートブロックの異形性と噛(か)み合わせ、適宜な空隙(くうげき)率という観点から、1940年代以降異形消波ブロックの開発へと進んでいった。

 わが国の港湾の近代化は明治20年代から開始され、北海グループの指導により実施されたので、防波堤は当初からブロックまたはケーソンを用いた混成堤の型式をとっている。また水深の浅い陸岸からの巻き出し部は捨石堤の型式をとるが、被覆層には異形消波ブロックを採用するのが普通である。

 上述の防波堤は分類上からは重力式となるが、1915年以降、空気泡を利用した混相流による空気防波堤、さらに現代では、浮体を海面近傍に用いた浮き消波堤、消音効果をもつ吸音板の機能を応用した多孔壁もしくはスリット壁ケーソン防波堤、あるいは鋼管矢板式防波堤など、新しい理論に基づいた新機軸の防波堤が、情勢に応じて各地に築造されるようになった。

[堀口孝男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「防波堤」の意味・わかりやすい解説

防波堤
ぼうはてい
breakwater

港湾施設や港湾内の船舶を波浪の被害から守り,係留,荷役作業の波浪による妨害を防ぐために,港湾付近に設けて,港内の静穏を維持する港湾構造物。構造によって,傾斜堤,直立堤,混成堤などに分類される。傾斜堤は石塊やコンクリートブロックなどを海底から積上げて傾斜法面をつくり,砕波させて消波するもので,施工が容易である。直立堤は波の大きいところでコンクリート直立壁により波を反射させる方式であるが,基礎が堅固でないと沈下や破壊のおそれがある。混成堤は,上部に直立堤,下部に傾斜堤の捨石堤を用いた組合せであり,両者の特徴をうまく利用したもので,現在最も多く採用されている。特殊な例としては,浮体で波エネルギーを吸収する浮防波堤や,空気の泡を利用する空気防波堤などがあるが,一般には堤状の工作物である。

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百科事典マイペディア 「防波堤」の意味・わかりやすい解説

防波堤【ぼうはてい】

港内の船や諸設備を波浪から守るための堤状構造物。コンクリート製の壁を海底から直立させて波のエネルギーを反射する直立堤,捨石や異形ブロックの長い斜面でエネルギーを減殺(げんさい)する傾斜堤,傾斜堤を基部にし,その上に直立堤を配置した混成堤がある。
→関連項目突堤

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世界大百科事典 第2版 「防波堤」の意味・わかりやすい解説

ぼうはてい【防波堤】

港湾は,船舶を安全に出入港させ,停泊,旅客の乗降,貨物の積卸しができなければならない。そのため,外海の波を遮断もしくは,その船舶への影響を最小限にする必要がある。港湾技術の未発達の時代は,岬の陰,入江,リアス式の湾に港を選定していた。このような場所は天然の良港といわれたが,海上交通の結節点としての港湾機能からは,近代港湾として不適合のことが多い。そのため,必要に応じて岬や島を埋め立てて,人工の波止(はと)をつくり,その中に船を停泊させようとした。

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世界大百科事典内の防波堤の言及

【海岸保全】より

…このことは海岸での土砂収支の均衡を破る結果となったのである。もう一つ見のがせない問題は,海岸に防波堤をはじめとして,多くの構造物が築造されたことである。これらの構造物は,それぞれの機能を果たすのに有効ではあるが,一方では沿岸を移動する漂砂に対しても大きな障害物となり,海浜土砂の移動量の分布に変化を生じさせた。…

※「防波堤」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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