翻訳|weeding
耕地や庭園,林地その他に発生する雑草を除去すること。雑草が作物などと共存すると,(1)相互間に生育の競争が起こり,しばしば作物が圧倒される,(2)雑草が病虫害,獣害の媒介者となる,(3)雑草の繁茂は通風不良,過湿,気温・地温の低下など,作物周辺の環境条件を悪化させるなどから,作物の生育・収量が抑制される。とくに(1)の競争は,光,水,養分の争奪で,最も大きな害を生ずる。これらはいずれも雑草の繁茂による直接的な害であり,これを防止するのが除草の主目的となる。しかし,わずかな雑草であっても,大量の種子をまき散らすことになるので,翌年以降の雑草害を考慮して除草する必要がある。
(1)生態的方法 作物の作付順序,栽培方法など生態的条件を変化させることによって雑草の増加を防ぐもので,(a)地表を覆って雑草の発生を減少させる作物や中耕によって容易に除草できる作物を輪作に組み入れる,(b)田畑輪換により土壌環境を変化させ,生態的適応性の異なる水生雑草と畑雑草の発生を交互に防止する,(c)苗床で育てた大きな苗を植えて雑草に対する作物の優位を確保する,(d)雑草の発生盛期を避けて種まきをするなど多くの方法がある。(2)機械的方法 人力農具,畜力・動力機械を使って雑草を防除するもので,(a)鎌,鍬,ホー,カルチベーター(除草づめ付き)などで雑草の根を地表直下で切断して枯らす,(b)レーキ,カルチベーター(中耕づめ付き),ロータリー耕耘機,水田中耕除草機などで地表を浅くかくはんして雑草を引き抜き,根を露出させて枯死させる,(c)鍬,すき,プラウ,カルチベーター(培土刃付き)などで土を反転して雑草を埋めるなどの方法がとられている。(3)化学的方法 除草剤によるもので,第2次大戦後急速に普及した。薬剤の種類は多いが,(a)土壌に散布し発芽する雑草を枯らすもの,(b)雑草の茎葉に直接処理して殺草効果を示すもの(作物の生育中に使用する場合には作物にかけないように畝間のみに散布する),(c)選択性除草剤と呼ばれ,特定の作物には害作用を示さず他の植物に対しては殺草効果のあるもので,作物の生育中に全面に散布することができるものなどがある。(4)物理的方法 火炎や蒸気を用いて苗床の床土中の雑草種子を殺したり,黒色のプラスチックフィルムを敷いて雑草の発生を抑制するなどの方法がある。(5)生物的方法 昆虫,微生物,家畜,魚類などを用いるもので,農業用水路の除草にソウギョ(草魚)を用いたりする例もあるが一般的ではない。しかし,鳥による雑草種子の採食など,表面に現れない大きな効果が推測される。これらの除草法は,実際には幾つかが組み合わされて用いられる。
日本では,春から秋にかけて高温多湿な条件にあるので,雑草の生育はきわめて旺盛で,作物栽培上,除草はきわめて重要な作業となっている。また,小規模な集約的経営が行われてきたため,古来除草作業は素手による引抜きと人力農具により,早期に完全に除去することがすすめられてきた。早期除草は作業が容易で効果が大きく,翌年に種子を残さないことから,合理的な除草法ということができる。明治以降一部では畜力による機械除草が行われたが,第2次大戦後は機械化の進展とともに除草への機械利用が広がる一方,除草剤の普及が除草作業を一変させた。現在の除草法は,水田では代搔きで雑草を殺したのち,田植前後に土壌処理除草剤を,また生育の盛期に選択性除草剤を散布するのが主体となっており,出穂期に人力でヒエ抜きを行うほかは,ほとんど除草剤に依存するものとなっている。畑では播種(はしゆ)前後に土壌処理除草剤を散布し,除草剤の効果が消失して再び雑草が発生する場合には,畝間に茎葉処理除草剤を散布するかカルチベーターによる中耕除草を行う。株間の除草は,培土あるいは手取りで行う。
果樹園では土壌管理の形式に清耕法と草生法がある。前者は,園内の表土を浅く耕耘(こううん)して雑草を取り除く方法で,水分・養分に対する果樹と雑草との競争を防ぐことや病虫害の発生源を除去できる点で優れている。後者は,園内に雑草あるいは播種した牧草を生やし,定期的にこれを刈り取る方法で,土壌保全,地力増強,地温の上昇の点で優れており,土壌管理労力が少なくてすむ点でも有利である。
林地では,造林時の植付け前の地ごしらえの際に除草が行われ,また植付け後幼木が生育して林冠を形成するまでの間,幼木が雑草に覆われないように夏季に下刈りを行う。大鎌,刈払機,除草剤などが使われる。アカマツ,カラマツ,スギ,ヒノキなどでは通常全刈りが行われるが,樹種が陰樹である場合や幼木を強風や寒さから保護することが必要な場合には,列状に刈り残す条刈りや,木の周辺だけを刈る坪刈りを行う。
→雑草
執筆者:春原 亘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
耕地から雑草を駆除すること。雑草防除ともいい、生育中の雑草を除去することだけでなく、発生を抑制することも含まれる。雑草の発生防止には、深く耕して表土に多い雑草種子を作土の下深くに埋めてしまう方法や、藁(わら)やビニルなどで地面を覆う、いわゆるマルチングによって発芽を抑制する方法などがある。発生した雑草を駆除するには、手取り除草をはじめ、表土を浅く攪拌(かくはん)して芽生えたばかりの雑草を殺す方法、うね間を耕して雑草の根を切断して枯らす中耕除草、雑草を埋め込んでしまう培土などの方法がある。水田では、水を深く張り、雑草を溺死(できし)させる方法もある。以上のような物理的除草法とともに、最近では除草剤を用いる化学的除草法が普及している。除草剤には、無差別に植物を枯らす型のものと、特定の雑草だけを枯らす選択性除草剤とがある。炎天下でのもっともつらい農作業といわれた除草も、現在では物理的除草法と化学的除草法とを組み合わせて行われており、全農作業労力中に占める比率は激減した。
[星川清親]
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