険しい(読み)ケワシイ

デジタル大辞泉 「険しい」の意味・読み・例文・類語

けわし・い〔けはしい〕【険しい/×嶮しい】

[形][文]けは・し[シク]
傾斜が急で、登るのに困難であるさま。「―・い山道
困難や危険な事態が予想されるさま。「再建への道は―・い」
怒りや緊張のため、言葉や表情などがとげとげしいさま。「―・い声」「―・い目つき」
自然現象などが、荒々しく激しいさま。
「磯にをる波の―・しく見ゆるかな沖になごろや高く行くらん」〈山家集・中〉
危険である。危うい。
「我―・しき事に出会ひしは四十三度。一度も手を負はざりしに」〈浮・諸国ばなし・三〉
あわただしい。せわしい。忙しい。
「取り上げ婆呼んで来てやる―・しき時も、茶漬飯を食はずにはゆかぬものなり」〈浮・胸算用・四〉
[派生]けわしげ[形動]けわしさ[名]
[類語](1険阻険難険峻けんしゅん峻険しゅんけん急峻きゅうしゅん要害天険険要険所峻峭峻抜峻岳峻峰峻嶺高峰高嶺奇峰/(2厳しい苦しい多難困難険悪不穏際どい物騒危険危難危機危殆きたい危地虎口ここうピンチ剣呑けんのん危ないやばいきな臭い呉越同舟一触即発風前のともしび薄氷をふむ風雲急を告げる/(3厳しいきつい鋭いとげとげしい険阻険悪厳格厳重厳酷厳正冷厳峻厳しゅんげん峻烈しゅんれつ苛酷かこくこく容赦ようしゃない仮借かしゃくない激しいひどい手痛い手厳しい手ひどいこっぴどい辛辣しんらつびしっと物物しい厳めしいおごそ厳粛粛粛厳然森厳荘厳荘重重厚重重しい厳として重量感どっしりずっしりずしりずしっとどっかとがっしり重み広量堂堂大度太っ腹マッシブ存在感睥睨へいげい粛然貫禄威厳威徳尊厳威儀権威威信威名威望名望威光威力権力勢威重圧すご脅威威圧威風威風堂堂威容偉容英姿雄姿勇姿仰仰しいご大層息が詰まる大風呂敷を広げる

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精選版 日本国語大辞典 「険しい」の意味・読み・例文・類語

けわし・いけはしい【険・嶮】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]けは〘 形容詞シク活用 〙
  2. 山や坂などの傾斜が急で、登るのに困難である。道が急峻である。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
    1. [初出の実例]「其の道嶮(けは)しく難堪き事无限し。水无くして咽乾て既に死なむとす」(出典:今昔物語集(1120頃か)五)
  3. 克服するのが困難である。てきびしい。また、危険である。
    1. [初出の実例]「度々の戦に合たれども、是程軍立のけはしき事に合はず」(出典:源平盛衰記(14C前)三五)
    2. 「我けはしき事に出合しは、四十三度、一たびも手をおはざりしに」(出典:浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)三)
  4. 自然の現象や風景が人を受けつけないさま。荒々しい。猛烈である。はげしい。
    1. [初出の実例]「夜の、気色いとどけはしき風の音に、人やりならず、なげき臥し給へるも、さすがにて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)総角)
  5. 人が他を受け入れないさま。つけいる余地のないさま。
    1. (イ) きびしい。きつい。
      1. [初出の実例]「人の心は此水よりも嶮しければ」(出典:海道記(1223頃)蒲原より木瀬川)
    2. (ロ) 性格や目つきや口調などがとげとげしい。
      1. [初出の実例]「Qeuaxij(ケワシイ) ヒト」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  6. 余裕のないさまにいう。あわただしい。せわしい。けたたましい。忙しい。
    1. [初出の実例]「手飼の鶯を取放させ、庭山にけはしく、申々と声を立る」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)五)
  7. 程度がはなはだしい。勢いが強い。
    1. [初出の実例]「けはしい息をして、ぢッと僕を見つめて居るうちに」(出典:アパアトの女たちと僕と(1928)〈龍胆寺雄〉四)

険しいの語誌

→「さがし」の語誌

険しいの派生語

けわし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

険しいの派生語

けわし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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