(読み)ケン

デジタル大辞泉 「険」の意味・読み・例文・類語

けん【険/×嶮】

[名・形動]
山などのけわしいこと。また、その場所難所
箱根の山は天下の―」〈鳥居忱・箱根八里〉
困難が多いこと。
「―を冒し危きを凌ぎ」〈中村訳・西国立志編
(「権」「慳」とも書く)顔つき・目つき・物言いなどに表れるきつい感じ。また、とげとげしさのあるさま。「―のある顔」
「其の嫉妬しっと執着の、―な不思議の形相が」〈鏡花歌行灯
[類語]天険要害険難険阻険峻峻険急峻険要険所険しい峻峭峻抜峻岳峻峰峻嶺高峰高嶺奇峰

けん【険〔險〕】[漢字項目]

[音]ケン(呉)(漢) [訓]けわしい さがし
学習漢字]5年
地形が切り立ってけわしい。けわしい所。「険阻険要険路峻険しゅんけん天険
危ない。危ないこと。「危険探険保険冒険
とげとげしい。「険悪険相陰険
[補説]1は「けん」と通用する。
[名のり]たか・のり

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「険」の意味・読み・例文・類語

けん【険・嶮】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 )
  2. けわしいこと。また、その所。難所。
    1. [初出の実例]「深溝作険、以断逆賊首鼠之要害者」(出典:続日本紀‐宝亀一一年(780)一二月庚子)
    2. 「山の険によりて、ついぢを高くつくぞ」(出典:史記抄(1477)一五)
    3. [その他の文献]〔春秋左伝‐成公一六年〕
  3. むずかしいこと。困難なこと。
    1. [初出の実例]「中古以来、商賈の険を冒(おか)し危きを凌ぎ」(出典:西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉七)
  4. よこしまなこと。悪いたくらみ。〔阮籍‐大人先生伝〕
  5. ( 「権」「慳」と書くこともある ) 性格がとげとげしいこと。顔つきや物言いなどにとげとげしさのあること。
    1. [初出の実例]「人心ほど険な物は無ぞ」(出典:寛永刊本江湖集鈔(1633)一)
    2. 「ちっと権(ケン)があるよ。あれで愛敬がありゃア鬼に鉄棒(かなぼう)さ」(出典:滑稽本浮世風呂(1809‐13)三)

さ‐が【険・嵯峨】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用タリ 〙 石や岩山などの高くけわしいさま。
    1. [初出の実例]「高嶺嵯峨多奇勢、長河渺漫作廻流」(出典:懐風藻(751)吉野之作〈丹比広成〉)
    2. 「須彌の頂き嵯峨(サガ)とそばたち」(出典:浮世草子・近代艷隠者(1686)五)
    3. [その他の文献]〔司馬相如‐哀二世賦〕

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