かく‐り【隔離】
〘名〙
① へだたること。へだてはなすこと。また、へだたりはなれること。
※土井本周易抄(1477)一「天は天、地は地と隔離するは非二交泰之義一」
②
感染症の
患者などを通常の社会生活から遮断して、
一定の場所に移すこと。
※
伝染病予防法(明治三〇年)(1897)八条「病毒
感染の疑ある者を隔離所其の他適当の場所に隔離することを得」
③ ある一つの
集団内では
交配が行なわれるが、他の違った集団同士では、もはや交配が行なわれなくなる
現象。
海洋、
山脈、
河川などの障害物によって起こる地理的隔離と、
人種、
言語、
風俗の違いによって起こる社会的隔離がある。
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デジタル大辞泉
「隔離」の意味・読み・例文・類語
かく‐り【隔離】
[名](スル)
1 へだたること。へだて離すこと。
「小さい私と広い世の中とを―している此硝子戸の中へ、時々人が入って来る」〈漱石・硝子戸の中〉
2 伝染性の病原体の蔓延を防ぐためなど、他から引き離して接触を避けること。「患者を隔離する」
3 交配の可能な生物集団が、地理的あるいは生理的・遺伝的な条件の違いによって交配ができず、また交配しても次世代ができにくくなり、遺伝子の交流が妨げられる現象。
[類語]離す・隔てる・遠ざける・離隔
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
かくり【隔離 isolation】
生物学用語。互いに交配可能な個体の集りである集団が種々の原因でいくつかの分集団に分かれ,分集団間で自由な交配が起こりにくくなったり,たとえ交配してもその雑種が不稔や不妊であって,集団間の遺伝子の交流が極度に妨げられることを隔離という。
[隔離説]
地理的隔離が種分化に重要な役割を演じているという考えは,古くC.ダーウィンやそれ以前までさかのぼることができる。しかし隔離は地理的に異なった集団には異なった要因による自然淘汰が働くという意味での副次的な役割をもつにとどまらず,隔離こそが種分化の必要条件だとする隔離説Separationstheorieを唱えたのはワーグナーM.Wagner(1868)であった。
かくり【隔離】
医学用語。伝染病が広がるのを防ぐために,患者,疑似症者,保菌者,または接触者などを,一般の社会生活環境から切り離して生活させること。伝染病予防法に基づき,法定伝染病,指定伝染病に対して行われる。感染指定伝染病法定伝染病【編集部】
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
普及版 字通
「隔離」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
隔離
かくり
isolation
感染症患者や,感染症発生の可能性のある場合に,個人や集団を一定の場所に引離しておくことをいう。有効な対策であるが,人道的でないということで,最近はあまり行われない。日本では旧伝染病予防法において,法定伝染病 10種,および法令によって定められたその他の感染症の患者は,専用の隔離病院に収容して,感染を防ぐことになっていた。 1999年施行の感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律においては,ペストなど1類感染症患者に対しても「入院」という措置が示されている。
隔離
かくり
isolation
ある大きな交配集団で,なんらかの原因で任意交配が成立しない現象をいう。ヒトの場合,海洋,山脈,河川,砂漠などにより他集団との婚姻がきわめて困難な場合に起る地理的隔離と,人種,言語,風俗習慣,社会的地位の差などによって相互間の婚姻が困難なために生じる社会的隔離とがある。近代文明が発達するにつれて隔離は急速に打破されつつある。一般生物集団においては生理的隔離も影響し,進化の過程で重要な役割を演じてきた。
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世界大百科事典内の隔離の言及
【防衛機制】より
… 防衛機制にはさまざまなものがあるが,どの防衛機制をもっぱら優先的に用いるかによって,個人の性格も違ってくるし,防衛機制が破綻したときに(防衛機制はもともと不合理なものだから,成功したとしても一時逃れだが)生じる精神疾患の種類も違ってくる。たとえば〈抑圧〉とヒステリー,〈反動形成〉および〈分離(隔離)isolation〉と強迫神経症,〈投射(投影)〉とパラノイアは関係が深いといわれる。防衛機制のもっとも基本的なものは,自我を脅かすふつごうな観念や感情を無意識へと追いやる〈抑圧〉であるが,抑圧したからといってそれらの観念や感情は消滅しないので,さらにいろいろと防衛機制が必要となる。…
【防衛機制】より
… 防衛機制にはさまざまなものがあるが,どの防衛機制をもっぱら優先的に用いるかによって,個人の性格も違ってくるし,防衛機制が破綻したときに(防衛機制はもともと不合理なものだから,成功したとしても一時逃れだが)生じる精神疾患の種類も違ってくる。たとえば〈抑圧〉とヒステリー,〈反動形成〉および〈分離(隔離)isolation〉と強迫神経症,〈投射(投影)〉とパラノイアは関係が深いといわれる。防衛機制のもっとも基本的なものは,自我を脅かすふつごうな観念や感情を無意識へと追いやる〈抑圧〉であるが,抑圧したからといってそれらの観念や感情は消滅しないので,さらにいろいろと防衛機制が必要となる。…
※「隔離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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