デジタル大辞泉 「雁」の意味・読み・例文・類語
かり【×雁/×鴈】
[副]ガンの鳴き声を表す語。
「声に立てつつ―とのみ鳴く」〈後撰・秋下〉
[類語]
( 1 )「万葉集」ではもっぱら飛来する姿や声が詠まれ、秋を告げる鳥。平安時代になると「春霞立つを見捨ててゆくかりは花なき里にすみやならへる〈伊勢〉」〔古今‐春上・三一〕のように北方の故国に旅立つ「帰雁」も注目されて春の景物となる。
( 2 )雁の声は「かりがね(雁音)」の①に引いた「万葉‐一五一三」のように寂しいもの、聞くと悲しく感じるものと考えられ、平安の恋に寄せる歌の多くは「人を思ふ心はかりにあらねども雲居にのみもなきわたるかな」〔古今‐恋二・五八四〕のように鳴き声を絡ませている。「かりがね」が後に雁の異名となったのは、鳴き声が雁を象徴するほどに特徴あるものだったからであろう。
森鷗外の長編小説。1911年(明治44)から13年にかけて《スバル》に断続連載,15年に補筆して刊行。無縁坂に囲われた高利貸の妾お玉は東大生の岡田と知りあってほのかな慕情をいだき,夢のような未来を空想する。しかし,今日こそは岡田を呼びとめてと思いつめた日,ふとした偶然から彼女の思いは通ぜず,岡田はドイツ留学のため日本を去ってゆく。岡田の友人,〈僕〉の回想形式で書かれ,鷗外自身の青春の思い出が生きる本郷界隈を舞台に,薄幸な美しい女の自我のめざめと挫折の内的ドラマを,均整のとれた文体で心理解析とともに描き,ロマンティックな詩情をただよわせている。岡田も〈僕〉も,鷗外の分身と見ていい。
執筆者:三好 行雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
森鴎外(おうがい)の長編小説。1911年(明治44)9月号から13年(大正2)5月号まで『スバル』に連載。15年5月籾山(もみやま)書店より刊行された。明治13年(1880)当時の東京・上野近辺の物語。高利貸し末造のめかけである美女お玉は、たまたま、飼い鳥を蛇の難から救ってもらった医科大学生岡田に恋し、1日、ひそかに彼を待ち受けるが、その日の岡田は友人と連れ立っていて、ついに声をかけることができず、そのまま岡田と縁が切れてしまったという話。岡田が投げた石に偶然に当たって死んだ不忍池(しのばずのいけ)の雁が、不運なお玉の象徴となっている。鴎外の小説のなかでは、もっとも小説らしい結構をもった作品で、哀感の漂う佳作である。
[磯貝英夫]
『『雁』(岩波文庫・角川文庫・講談社文庫・新潮文庫)』
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… 以後,林芙美子原作《泣虫小僧》(1938),阿部知二原作《冬の宿》(1938),伊藤永之介原作《鶯》(1938)など一連の〈文芸映画〉のなかで,暗い時代の日本の庶民像を描き出していった。愛国婦人会を創設した明治の女傑の半生を描いた伝記映画《奥村五百子》(1940),ハンセン病療養所で献身する若い女医の実話をリリカルなヒューマニズムで描いた《小島の春》(1940)などをへて,戦後も丹羽文雄原作《女の四季》(1950),森鷗外原作《雁》(1953),有島武郎原作《或る女》(1954),室生犀星原作《麦笛》(1955),織田作之助原作《夫婦善哉》(1955),谷崎潤一郎原作《猫と庄造と二人のをんな》(1956),川端康成原作《雪国》(1957),志賀直哉原作《暗夜行路》(1959),永井荷風原作《濹東綺譚》(1960)と〈文芸映画〉の系列がある。 女を多く描き,フェミニストともいわれたが,そのフェミニズムは,女の美しさよりも無知や貪欲さを凝視する目のきびしさと執念に特色があるといわれる。…
※「雁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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