雑徭(読み)ゾウヨウ

デジタル大辞泉 「雑徭」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐よう〔ザフエウ〕【雑×徭】

律令制で、令で定められた歳役ほかに、国司によって公民に課せられた労役正丁は1年に60日、次丁は30日、中男は15日を限度とし、土木工事などに従った。ざつよう。

ざつ‐よう〔‐エウ〕【雑×徭】

ぞうよう(雑徭)

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精選版 日本国語大辞典 「雑徭」の意味・読み・例文・類語

ぞう‐ようザフエウ【雑徭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制の税の一つ。正丁(成年男子)に課せられた労役奉仕。年間六〇日を限度とし、次丁は半分、中男は四分の一。のち軽減された。国司の指揮の下に土木工事などに従事したが、国郡司の私役に悪用されることもあった。〔令義解(718)〕
  3. ざつよう(雑徭)

ざつ‐よう‥エウ【雑徭】

  1. 〘 名詞 〙
  2. いろいろの賦役。〔旧唐書‐楊炎伝〕
  3. ぞうよう(雑徭)

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改訂新版 世界大百科事典 「雑徭」の意味・わかりやすい解説

雑徭 (ぞうよう)

古代の律令制において,成年男子に課せられた強制労働の一種。年間60日以内,国郡司によって地方の雑役に徴発された。雑徭は中国の律令制の継受にともない,飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりよう)で制度化されたが,クサグサノミユキの古訓があり,律令制以前からのミユキの系譜をひく労役であった。ミユキは天皇またはそのミコトモチ(国宰など)が地方に巡行してきたときの奉仕役にその起源があると推定され,地方豪族が地域社会で独自に徴発してきた労役とは別系列の,朝廷のための労役であったと考えられる。したがって初期の雑徭も,朝廷のための労役という性格が強く,日本の雑徭が--唐の律令制とは異なり--調庸とともに課役(かえき)にふくまれるようになるのは,そのような雑徭の性格によるものであろう。大宝律令の施行以後,国司の権限と機能が拡大するのにともない,雑徭を充てておこなわれる仕事の内容も拡大し,とくに道路堤防の新設,水田開発に不可欠な池溝の新設などに雑徭が充てられ,雑徭は律令国家の地方行政を支える重要な役割を果たした。律令では雑徭日数は60日以内と規定されていたが,実際には国郡司が60日いっぱい使役することが多かったので,757年(天平宝字1)に藤原仲麻呂が政権を握ると,雑徭日数の限度を30日に半減した。この改革は仲麻呂が没落すると廃止されたらしく,795年(延暦14)には再び60日から30日に半減されている。1年間の雑徭徴発の内訳を毎年中央に報告する制度は,奈良時代には成立していなかったと推定されるが,平安初期には諸国から雑徭徴発の内訳を〈徭帳〉に記して報告させる制度が成立し,中央政府は調庸や正税を確保するための代償物として雑徭を操作するようになった。国司の雑徭徴発権は,国司の刑罰権が制約された神戸や伊勢神郡においてまず失われ,国司の権力や権威の低下とともに,なしくずし的に解体していったと推測される。
徭役
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雑徭 (ざつよう)
zá yáo

中国中世に行われた徭役の一種で,唐前期には法制的に課(租調役)の外に設けられ,地方の州県が徴発に当たり,丁男・中男を対象とする多目的の臨時的使役であった。毎年県令が差科簿(役務徴発台帳)を按じて必要人数を徴し,官衙,道路,城壁,堤防等の建築修理や,官物の輸送・保管,あるいは城市の警備など比較的単純労働に充てられ,該当者は夫と称し,その労働は制度的に正役の1/2に評価された。年間40日(一説50日)を限度とし,それを大幅に超えると一定の方式で租庸調が免除される規定があった。兵士や郷官をはじめ,官人の従僕に任ずる執衣・白直,城門看守の門夫,駅舎・駅馬を世話する駅夫,水運に使われる水手,灌漑をみはる渠頭(きよとう),のろし係の烽子(ほうし),牢番の典獄等,種々の色役(しきえき)を負担する者は雑徭の対象から除かれたので,雑徭に徴発できる丁が不足する傾向にあり,8世紀には資課とよばれる銭の代納が普及した。唐制をとりいれた日本では課役として雑徭(ぞうよう)があった。
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百科事典マイペディア 「雑徭」の意味・わかりやすい解説

雑徭【ぞうよう】

律令制度での徭役(ようえき)労働の一つ。地方で道路・堤防・官舎建設や修理など,肉体労働を必要とするとき,成年男子に課した無償労働の義務。唐では年間50日以内,日本では60日以内。唐では資課(しか)といって銭による代納が許され,やがてこれが一般化し,日本では奈良後期から平安初期にかけて期間が30日に短縮された時期もある。
→関連項目駅子駅長(日本史)課役里長租庸調夫役臨時雑役

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「雑徭」の解説

雑徭
ぞうよう

律令制での労役負担の一つ。正丁(せいてい)は1年に60日以内(次丁30日,中男15日),国郡司により地方での雑役に徴発された。浄御原令で制度化されたらしいが,古訓はクサグサノミユキで,大化前代からの天皇行幸や使者への奉仕など,ミユキの系譜をひく朝廷のための労役という性格が強い。大宝令施行により国司の権限が拡大し,地方行政に不可欠な労役として範囲が拡大するが,徴発権は実質的に郡司にあった。どの範囲を雑徭としたかは諸説がある。国郡司が限度いっぱい使役するため,757年(天平宝字元)一時期30日に半減し,795年(延暦14)再び30日とされて定着し,京戸のみは銭納で天平年間には正丁120文であった。平安時代になると国司が徴発権を強め,国内の労役はすべて雑徭とされ,中央への徭帳の報告制度も成立し,やがて受領(ずりょう)による臨時雑役制へひきつがれた。雑徭は日本では唐と異なり課役に含まれ,定額税的性格をもっていた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雑徭」の意味・わかりやすい解説

雑徭
ざつよう
za-yao; tsa-yao

中国における力役の一種。北魏以来現れ,規定以外の力役,雑多な労役もしくは年齢によって全役の半分が課され,この半課,半役を雑徭といった。唐代,均田制が行われて,租調役とともに雑徭は4賦役の一つとなった。すなわち,労働奉仕の中央的なものを「正役」というのに対し,地方の土木工事など臨時的な県の労働奉仕を雑徭といった。雑徭は唐制ではおよそ 50日であった。日本では「ぞうよう」と呼び,律令制時代に行われ,60日以内成年男子に課せられた無償労働。唐と同じく地方で,道路,堤防,官舎の建設などにあたった。

雑徭
ぞうよう

古代の律令制下の課役の一種で,労役。賦役令によれば毎年 60日を限度とし,国司の必要に応じて課せられた。地方の水利工事,道路の修造,官衙,寺院の造営がおもなもので,さらには国司が私用にあてることも行われた。食糧は原則として支給されず,農民はそれらの負担に苦しんだ。使役日数は天平宝字1 (757) 年 30日に半減されたが,のちまた 60日に復し,さらに延暦 14 (795) 年にまた 30日と改められた。その後,京畿の公民は 10日とする特例や一律に 20日と改められるなどの変遷をみた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「雑徭」の解説

雑徭
ざつよう

唐代の律令制度での徭役の1つ。「ぞうよう」ともいう
庸が中央政府の事業にあてられるのに対し,雑徭は地方的な土木工事などへの労役提供をいう。丁男(だいたい21〜59歳)は年40日,庸の負担のない18歳以上の中男(だいたい16〜20歳)は50日以内で,給田のない16・17歳の中男にも課せられた。両税法の施行で廃止。

雑徭
ぞうよう

ざつよう

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「雑徭」の解説

雑徭(ざつよう)

唐代の徭役の一種。租庸調が中央政府に直接出されるのに対し,雑徭は地方的な労役を提供するもの。中男,残疾者にも課せられた。丁男の義務日数を40日以内とする説と50日以内とする説とがある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「雑徭」の解説

雑徭
ぞうよう

律令制において,国司に使役された公民の労役
正丁は1年に60日,次丁は30日,少丁は15日を限度に,諸国の土木工事や雑事に従事した。国司はこれを私用に使ったりして私腹を肥やし,公民の重い負担となった。757年30日に減ぜられた。

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防府市歴史用語集 「雑徭」の解説

雑徭

 律令[りつりょう]時代の労働奉仕で、税の一種です。一般の人々は1年に一定の日数だけ、地方や都で労働をしなければいけませんでした。

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普及版 字通 「雑徭」の読み・字形・画数・意味

【雑徭】ざつよう

賦役。

字通「雑」の項目を見る

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雑徭」の意味・わかりやすい解説

雑徭
ぞうよう

租庸調・雑徭

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世界大百科事典(旧版)内の雑徭の言及

【賦役】より

…北朝では六丁兵,八丁兵,十二丁兵という交代制の徭役に徴発されたが,隋・唐では兵農一致の府兵制が整備されるにつれ,賦役はふつう兵役を除く力役を指称するようになる。 すなわち隋・唐の均田制下の人民の負担には,租庸調と雑徭があった(均田法)。このうち庸というのが本来は力役であり,正役または歳役と呼ばれて,年に20日間中央政府の行う土木事業に従事した。…

【徭役】より

…古代の律令制において,成年男子に課せられた強制労働をさす用語。狭義には,歳役(さいえき)(正役)と雑徭(ぞうよう)とをさしたが,歳役は一般には庸で物納されたので,実役である雑徭だけをさす場合もあり,徭役という用語は強制労働の実役をさすことに重点があった。身体障害者(残疾)や父母の喪中の人に対して徭役を免除するという律令の規定も,実役を免除することに主眼があったと考えられる。…

※「雑徭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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