難波(読み)なんば

精選版 日本国語大辞典 「難波」の意味・読み・例文・類語

なんば【難波】

(「なにわ(難波)」の変化した語)
[1]
[一] =なにわ(難波)色葉字類抄(1177‐81)〕
[二] 大阪市中央区浪速区にまたがり、南海電鉄の難波駅を中心とする地域の通称近畿日本鉄道・市営地下鉄四つ橋・御堂筋・千日前の各線が通じる。道頓堀・千日前・戎橋筋などを含む、いわゆる大阪ミナミ繁華街として発達。
[2] ネギを用いた料理にいう語。難波煮、難波漬などがある。また、「南蛮」の字をあてて呼ぶようになったものもある。
[語誌]→「なんばん(南蛮)」の語誌

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「難波」の意味・読み・例文・類語

なにわ〔なには〕【難波/浪速/浪華/浪花】

大阪市付近の古称。特に、上町うえまち台地の北部一帯仁徳天皇難波高津宮孝徳天皇難波長柄豊碕宮ながらのとよさきのみやなど、たびたび皇居造営された地。また、一般に、大阪のこと。
(浪速)大阪市中部の区名。道頓堀川の南、木津川の東の地域。今宮えびす神社新世界通天閣がある。

なんば【難波】

《「なにわ(難波)」の音変化》大阪市の中央区から浪速区にまたがる地名道頓堀千日前などとともに「ミナミ」と称される繁華街をなす。→梅田

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「難波」の解説

難波
なにわ

上町うえまち台地を中心とする地域をいう。「古事記」「日本書紀」「万葉集」など、多くは難波と表記するが、浪速(記紀)浪花(紀)、名庭・奈尓波・那尓波(万葉集)などとも書く。近世には浪華・浪花と表記することもある。地域の範囲は明確ではないが、「難波(浪速)国」の語が、「日本書紀」神武天皇即位前紀戊午年二月条や「万葉集」巻三、年未詳写成唯識論掌中枢要校正注文(正倉院文書)などにみえる。一方、「摂津国風土記」逸文に「住吉国」がみえるので、おおむね摂津国東生ひがしなり西成にしなり両郡の地を難波の範囲としてよかろう。地名の起源については、「日本書紀」神武天皇即位前紀に「皇師遂に東にゆき(中略)、方に難波碕に到る。奔き潮有りて太だ急なるに会ふ。因りて以て、名づけて浪速国と為す。亦浪花と曰ふ。今難波と謂ふは訛れるなり」とある。潮流が速いので浪速といったというのだが、大阪湾の潮流はそれほど速くないため、この説は信じがたいとする意見が強く、ナニハは魚庭なにはの意で、魚の多い所から生れた名称とする説が出された。しかし近年、古代の大阪平野の内陸部には大きな潟湖が存し、それと大阪湾とをつなぐ水路の流れが、潮の干満によって急流となることから浪速の地名が生じたとして、「日本書紀」の所伝を復活してよいとする説もある。またナニハはナミ(波)ニハ(庭)のつづまったもので、波静かな海面をいうとする説もある。これには大阪湾を静かな海面とする意見と、かつて内陸部に存在した潟湖をいうとする意見とがある。このほか、朝鮮語のナルが太陽を意味するところから、太陽を祀る神聖な場所をさすナルニハがつづまって、ナニハとなったとする説も出されている。

難波の地は、淀川と近世につけかえる以前の大和川とがここで合流して、大阪湾に注ぎ、河口には難波津とよばれる良港が発達したため、古代以来交通の要衝として発達した。「日本書紀」によると、応神天皇二二年に難波の大隅おおすみに皇居が置かれ、次の仁徳天皇は難波高津たかつ宮を皇居として、治世八七年に及んだという。所伝のすべてが事実ではあるまいが、五世紀代の大古墳が難波に近い和泉北部や河内中部に多数存することなどを考えあわせると、四世紀末ないし五世紀前半頃、一時難波地方に強大な政権が存したのではないかと思われる。なお仁徳天皇は、淀川の茨田まんだ堤の築造や難波の堀江なにわのほりえの開掘など水利の大工事を行ったと伝えられる。五世紀後半以降は皇居はおおむね大和に設けられたが、六―七世紀に朝鮮や隋・唐との交渉が盛んになるにつれ難波の重要性は再び高まる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「難波」の意味・わかりやすい解説

難波【なにわ】

大阪市付近の古称。浪速,浪華とも書く。仁徳天皇の難波高津宮,孝徳天皇の難波長柄豊碕(ながらのとよさき)宮など,古代の皇居が定められた地。中世からは大坂(大阪)の地名が使われ始め,近世には両者が並称された。
→関連項目安曇江大阪[府]大阪[市]磯長谷難波津物部尾輿

難波【なんば】

大阪市の中央区,浪速区にわたり,南海電鉄本線の起点難波駅を中心とする一帯。百貨店,専門店街,劇場,飲食店などが集まり,大阪ミナミの歓楽街の一部をなす。
→関連項目新地千日前

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「難波」の意味・わかりやすい解説

難波
なにわ

現在の大阪市およびその周辺地域の古称。「浪速」「浪華」とも書く。大化前代には海上交通の要地として栄え,なかでも三韓の朝貢以来,外国使臣接待用として鴻臚館 (こうろかん) が設けられ,朝廷の対外交渉の中心となり,聖徳太子によって四天王寺が建立された。また,短期間ではあったが,たびたび皇居の設置をみた (→難波京 ) 。このような事情から,難波を含む摂津には国司をおかず,摂津職がおかれたが,桓武天皇のとき廃された。この難波が大坂の名で呼ばれるようになったのは,本願寺の蓮如が生玉荘大坂に道場を建ててからのことである。この地はのち豊臣秀吉によって支配され城が築かれたが,豊臣氏滅亡後大坂城代によって支配された。現在の大阪市の難波 (なんば) は,南海電鉄,近鉄,地下高速鉄道のターミナルとなっている。

難波
なんば

大阪市中央区南西部から,浪速区にまたがる繁華街。南海電鉄難波駅付近一帯の地区。明治初期までは近郊農業地帯であったが,1884年阪堺鉄道 (現南海電気鉄道) が開通,翌年の難波駅開設以来,千日前とともに急速に発展し,心斎橋筋や道頓堀と一体となって大阪随一の繁華街「ミナミ」を形成する。現在は近畿日本鉄道線,地下鉄線も集中する一大ターミナルで,劇場,映画館,遊技場,飲食店などが多く,地下は商店街をなす。難波駅周辺から南側は浪速区で,府立体育館を中心に一大スポーツ・アミューズメントセンターが形成されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版 「難波」の意味・わかりやすい解説

なにわ【難波】

能の曲名。脇能物。神物。世阿弥(1363?‐1443?)時代からある能。シテは王仁(おうにん)。旅行中の朝臣(ワキ)が摂津の難波に着くと,老人(前ジテ)と若者(ツレ)が梅の木陰を清めているのに出会い,名高い難波の梅について,仁徳天皇と縁の深いことなどを教えられる。老人は,仁徳帝の仁政について詳しく物語り(〈クセ〉),自分は当時百済国(はくさいこく)から来た王仁であると身の上を明かして消える。夜になると,梅の神霊である木花開耶姫(このはなさくやひめ)(ツレ)と王仁(後ジテ)が現れ,姫の舞(〈天女ノ舞〉)に続いて王仁が舞楽(〈楽(がく)〉)を奏し,天下太平を祝福する(〈ロンギ〉)。

なんば【難波】

古く難波(なにわ)の地があるが,現在は大阪市中央区南部から,浪速区北東部一帯にまたがる地域の総称。江戸初期の難波村は,いまの西区の一部にもまたがる広い範囲であったが,市街の発展とともにしだいに南方に縮小され,現在は町名として中央区に難波・難波千日前,浪速区に難波中が残されているだけである。江戸時代にはアイ(藍)の栽培が盛んな農村地帯で,阿波藍の濃色用に対する薄色用の難波水藍として知られていた。また隣村木津のあたりまで5,6町の間に,難波市場と呼ばれる朝市が立ち,木津市場の延長をなした。

なにわ【難波】

現在の大阪市の上町台地北半部を中心とする地域の古称。おおむねもとの摂津国東成,西成両郡の地にあたる。淀川と近世につけかえる以前の大和川とが合流して大阪湾に注ぐ地をふくみ,古代以来交通の要衝として栄え,いまに至る。《日本書紀》では神武天皇が日向より東征して〈難波之碕に到る〉とあるのが初見。その条に,潮が急なので浪速国といい,また浪花ともいったとある。《古事記》も神武天皇条では〈浪速之渡〉とするが,それ以外では難波と記す。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「難波」の解説

難波
なにわ

現在の大阪地方の旧称
古くから海上交通および西国と中央を結ぶ要衝として栄え,仁徳天皇の高津宮,大化の改新に際し孝徳天皇の難波長柄豊碕宮 (ながらとよさきのみや) ,奈良時代に聖武天皇の難波宮が造営された。律令制では国司に代わって摂津職 (せつつしき) を置いたが793年廃され,国司が置かれた。中世,蓮如 (れんによ) が道場(石山坊,のち石山本願寺)をたて,その寺内町が近世大坂の母体となった。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典内の難波の言及

【上町台地】より

…古河内湾が河川堆積物によって縮小し,さらに潟湖から湖沼へと変化する弥生時代,古墳時代においても,高燥な台地とその西と北に発達した砂堆は安定した生活の場を提供しており,数多くの古墳や貝塚遺跡が見られる。古代難波(なにわ)の中心はこの台地で,難波宮をはじめ四天王寺,住吉大社などの社寺が造営され,また中世から近世にかけては石山本願寺と大坂城が建設された。現在は官公署,文教施設が集中し,高級住宅も立地する大阪の山手地区となっている。…

※「難波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

激甚災害

地震や風雨などによる著しい災害のうち、被災地域や被災者に助成や財政援助を特に必要とするもの。激甚災害法(1962年成立)に基づいて政令で指定される。全国規模で災害そのものを指定する「激甚災害指定基準に...

激甚災害の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android