三上於莵吉(おときち)の伝奇時代小説。1934年(昭和9)から翌年にかけ岩田専太郎の挿絵で『朝日新聞』連載。悪徳な番頭や長崎奉行の奸謀(かんぼう)で一家離散の悲運にあった長崎の豪商、松浦屋清左衛門の幼児雪太郎が、大坂役者の中村菊之丞(きくのじょう)によって育てられ、江戸一の人気女方(おんながた)中村雪之丞として成長したのち、侠盗闇太郎(きょうとうやみたろう)の助けを得て、自分の手を汚すことなく、深謀を用いて宿敵を倒すという復讐譚(ふくしゅうたん)。歌舞伎(かぶき)女方による仇討(あだうち)という設定と、波瀾(はらん)に富んだ物語展開が読者の人気を得た。繰り返し劇化・映画化されているが、雪之丞と闇太郎を一人二役で演じるのが通例。映画化のうちでは35~36年公開の松竹京都製作の三部作(衣笠貞之助(きぬがさていのすけ)監督、林長二郎主演)が秀作で、東海林(しょうじ)太郎の歌う主題歌『むらさき小唄(こうた)』ともども大ヒットした。
[磯貝勝太郎]
『『大衆文学大系12 三上於莵吉他集』(1972・講談社)』
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…その〈水もしたたる美貌〉を買われて,1927年,18歳で松竹下加茂撮影所に招かれ,女形から美男剣士の道へと進んだ。師匠の鴈治郎から林長二郎の名をはなむけにもらい,主として衣笠貞之助監督と組んで(《お嬢吉三》《鬼あざみ》(ともに1927)等々から代表作の1本となった松竹創立以来の大ヒット作《雪之丞変化》三部作(1935‐36)などに至るまで),松竹時代劇の人気スターとなった。32年には松竹蒲田撮影所で初の現代劇《金色夜叉》にも貫一の役で出演している(田中絹代がお宮を演じた)。…
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