ゆき【雪】
[1] 〘名〙
① 雲中の氷晶が
併合成長して生じた、白色・不透明の
結晶が降ってくるもの。結晶は六方晶系で、星状・角
板状・角柱状・
針状など種々な形のものがある。《季・冬》
※
万葉(8C後)五・八二二「我が園に梅の花散るひさかたの天より由吉
(ユキ)の流れ来るかも」
※仮名草子・恨の介(1609‐17頃)下「恥しながら自らも御返事申さんとて、
ゆきの薄様にかうろぎの
墨磨り流し」
※
古今(905‐914)春上・八「春の日の光にあたる我なれど
かしらの雪となるぞわびしき〈
文屋康秀〉」
④ 氷を掻きおろして、白砂糖をかけたもの。かきごおり。
⑤ (漢字の旁
(つくり)から) 鱈
(たら)をいう、
女房詞。雪のいお。雪の下。雪のとと。
※御湯殿上日記‐文明一四年(1482)一二月二八日「すゑよりかん二、かいあわ一折、ゆき五まいる」
⑥ 蕪(かぶ)、また、大根(だいこん)をいう女房詞。
※御湯殿上日記‐明応元年(1492)一二月一二日「御たいの御かたより、ゆき、しろ物のめつらしきおほくまいる」
⑦ 紋所の名。①の結晶をかたどったもの。雪、雪輪(ゆきわ)など種々ある。
※雑俳・柳多留‐三二(1805)「寛永に三角なゆきふりはじめ」
※雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一四「八月の二日質やへ雪がふり」
[2]
[二]
謡曲。三番目物。
金剛流。作者未詳。旅僧が天王寺参詣の途中、摂津国野田の里で雪に降られ、その晴れるのを待っていると、雪の精が現われて僧に読経を乞い回雪の舞を舞う。
よき【雪】
〘名〙 「ゆき(雪)」にあたる上代東国方言。
※万葉(8C後)一四・三四二三「上毛野(かみつけの)伊香保の嶺(ね)ろに降ろ与伎(ヨキ)の行き過ぎかてぬ妹が家のあたり」
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デジタル大辞泉
「雪」の意味・読み・例文・類語
ゆき【雪】[曲名]
地歌・箏曲。流石庵羽積作詞、峰崎勾当作曲。天明・寛政(1781~1801)ごろ成立。曲中の合の手は「雪の手」とよばれ、雪を象徴するものとして、後世の邦楽にも流用されている。地唄舞の代表曲。
謡曲。三番目物。金剛流。旅僧が摂津の野田の里で雪の晴れるのを待っていると、雪の精が現れて僧に読経を頼み、舞をまう。
よき【▽雪】
「ゆき」の上代東国方言。
「上野伊香保の嶺ろに降ろ―の行き過ぎかてぬ妹が家のあたり」〈万・三四二三〉
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ゆき【雪】
(1)地歌の曲名。大坂の峰崎勾当(こうとう)が天明・寛政(1781‐1801)ころに作曲した本調子端歌物。作詞は《歌系図》の編者流石庵羽積(りゆうせきあんはづみ)。尼になって浮世を捨てた大坂南地の芸妓そせきが昔を回想しつつ,仏門に入った心境を格調高く歌っている。宝暦(1751‐64)以降最高潮に達した芸術的創作歌曲である端歌の代表曲。〈心も遠き夜半の鐘〉の後の合の手は〈雪の手〉として知られている。本来は遠くから聞こえてくる鐘の音をしみじみと表したもので,雪の描写ではないが,いつしか雪のイメージに結びつき,のちの三味線音楽では雪の降る情景を表す旋律として利用されるようになった。
ゆき【雪 snow】
雲の内部でつくられた氷の結晶が降るもの(降雪),またはそれが積もったもの(積雪)をいう。降る雪は古くから花にたとえられ,雪華,六華(花)ともいわれる。雪の語源にはユキヨシ(斎潔),ユキヨ(斎清。いみきよめるとの意味)などから,〈やすく消える〉との意味から,あるいは神の〈御幸(みゆき)〉(神の降臨の意味)からきたなどとする諸説がある。いずれにせよ,古来日本文化の中心であった大和地方や京都では,雪の舞い下りるさまや,純白で積もってもすぐはかなく消える雪を風雅なものととらえ,月や花とともに雪を風流の代表にあげていた。
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雪
ゆき
地歌の曲名。大坂の峰崎勾当の手になる本調子端歌物。天明~寛政年間 (1781~1801) 頃の作で,地歌の代表曲。『歌系図』の編者流石庵羽積の作詞で,浮世を捨てて尼になった女が一生を回想し,捨てかねる芸妓時分の恋心を歌ったもの。大坂南地の芸妓そせきがモデルとされる。有名な合の手はすぐ前の句「夜半の鐘」にちなんだ鐘の音の描写であるが,「雪」の手として雪の降るさまを表わす旋律として誤用されている。この旋律は長唄『綱館 (つなやかた) 』,常磐津『宗清 (むねきよ) 』,清元『三千歳 (みちとせ) 』,山田流箏曲『近江八景』や,芝居下座にも用いられている。上方舞でも代表曲とされ,茶の湯の点前に合せて演奏されることもある。箏,胡弓,尺八などの簡単な手も作曲されているが,主体は三弦にあって,他はあくまでも助演にすぎない。
雪
ゆき
snow
空気中の水蒸気が,空気の上昇に伴う断熱冷却により昇華してできた氷の結晶の降水。雪の結晶形には,針状,角錐状,角柱状,星状,板状あるいはそれらが組み合わされたものや不規則な形をしたものがあり,過冷却した水滴が凍結してできた微小な氷の粒をつけたもの,多少水分を含んだものなどがある。雪が降るとき,前述のような結晶が個々ばらばらになって降る場合と,多数の結晶が付着しあった雪片の形で降る場合がある。学術上単に雪という場合は,おもに降ってくる雪を意味し,地上に積もった雪は積雪といって区別する。
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知恵蔵
「雪」の解説
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
雪
日本の唱歌の題名。文部省唱歌。発表年は1911年。2007年、文化庁と日本PTA全国協議会により「日本の歌百選」に選定された。
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