電磁誘導(読み)でんじゆうどう

精選版 日本国語大辞典 「電磁誘導」の意味・読み・例文・類語

でんじ‐ゆうどう ‥イウダウ【電磁誘導】

〘名〙 閉じた回路を貫く磁束変化すると、その変化を妨げるようにこの回路に電流が流れる現象をいう。変圧器電動機発電機などに応用される。電磁感応。〔電気訳語集(1893)〕

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デジタル大辞泉 「電磁誘導」の意味・読み・例文・類語

でんじ‐ゆうどう〔‐イウダウ〕【電磁誘導】

コイル磁界の中で磁力線を横切るように動かすと、コイルに電流が流れる現象。1831年、ファラデー発見。電磁感応。
[類語]磁気地磁気磁性磁場磁界

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電磁誘導」の意味・わかりやすい解説

電磁誘導
でんじゆうどう

コイルを貫く磁束が変化することにより、コイルに起電力が発生する現象。コイルを貫く磁束数を変化させる主な方法、すなわち誘導起電力を発生させる方法は六つある(図A)。(1)コイルに対して磁界(磁場)の源である磁石を動かす方法。(2)磁石を固定しておきコイルを動かす方法。コイルを貫く磁束は、磁石とコイルの相対的位置関係だけで決まるので、この観点からみれば(1)、(2)は同等のものである。(3)、(4)の方法は(1)、(2)の磁石を電磁石(電流回路)で置き換えたものである。磁石と電流回路は同等であるとみなされるので、(1)と(3)、(2)と(4)は本質的に同じものである。(5)磁界の中でコイルを変形させる方法。(6)コイルおよび電磁石は固定しておき、電流回路の電流のみを変化させる方法。これらのどの方法によってコイルを貫く磁束を変化させても、コイルに生ずる起電力の大きさは、コイルを貫く磁束の時間変化率に等しい。電磁誘導による起電力を誘導起電力という。誘導起電力の正の側がコイル端子a、bのどちら側に現れるかを判断する方法の一つは、レンツ法則による方法である。コイル端子a、bを接続すると、誘導起電力による電流が流れる。この電流がつくる磁界によりコイルを貫く磁束は、初めの磁束変化を妨げる向きのものでなければならない。もう一つの方法は、回路の向きと、回路を貫く磁束の正負の向きを考える方法である。図Bにおいて、回路を回る向きを矢印のように定めた場合、この回路を貫く磁束の正負を図に示すように定める。これはいわゆる右ねじの法則と一致しており、回路を回る向きが右ねじの回転方向、磁束の正の向きは右ねじの進む向きに相当する。誘導起電力は、磁束が正の向きに増大するとき、回路を回る向きと逆向きに発生する。この意味で、誘導起電力を逆起電力ということもある。

 磁界の中で電荷qが運動するとき、電荷は磁界から磁力を受ける。その向きは、磁界と速度とが定める平面に垂直な向きである。一般にこのような力をローレンツの力とよぶ。図Cに示すように、磁界と速度が垂直な場合はフレミング右手の法則に相当している。図Aの(1)から(5)までの電磁誘導の法則は、電荷が磁界から受ける力によって説明される。しかし、(6)の場合は、ローレンツの力から説明できない。それゆえ、電磁誘導の法則は原理的な法則として意味をもつのである。電磁誘導の法則は、電界・磁界のすべての法則を表すマクスウェルの方程式の四つの式の一つとなっている。

 電磁誘導の法則は、われわれの生活とも関係が深い。図Dは変圧器の原理図である。一次コイルに電流を流すと、発生した磁界は鉄芯(しん)によって効率よく二次コイルへ導かれる。一次コイルに交流電流を流せば磁束も交流となり、その時間変化によって二次コイルに誘導起電力を発生する。この電圧は、一次コイルに加えた電圧に、二次コイル巻数の一次コイル巻数に対する比を乗じたものになる。図Eは発電機の原理図である。一定の磁界があり、その中で針金の枠が回転するようになっている。枠が磁界と平行になっているときは、この枠を貫く磁束はゼロである。垂直なときは、最大の磁束が貫く。枠を回転させると、枠を貫く磁束が変化し、枠に誘導起電力が発生する。この電圧を外部へ取り出す。電気回路において、抵抗、コンデンサー、コイルは線形回路素子として重要である。コイルに流れる電流が変化すると、コイルに逆起電力が発生し、コイルに流れる電流の変化を妨げる。それゆえ、コイルには、交流周波数に反比例して交流電流を通しにくくする働きがある。これに対してコンデンサーは交流周波数に比例して交流電流を通しやすく、抵抗は交流周波数と無関係な交流電流の通りにくさ(抵抗値)をもつ。

[山口重雄]


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百科事典マイペディア 「電磁誘導」の意味・わかりやすい解説

電磁誘導【でんじゆうどう】

磁場の変化によって回路に起電力(誘導起電力)を生じる現象。誘導起電力の大きさは,回路を貫く磁束の変化の速度に比例し(ファラデーの電磁誘導の法則),この起電力によって回路に生じる電流(誘導電流)は常に磁束の変化を妨げるような方向に流れる(レンツの法則)。磁束の変化の原因には,磁石または電流の流れている他のコイルの運動,他のコイルの電流の変化(相互誘導),その回路自体の電流の変化(自己誘導)などがある。ファラデーが発見(1831年),F.E.ノイマンが数学的に表現(1845年)。発電機,変圧器などに応用。
→関連項目インダクタンス渦電流起電力ファラデーの法則ヘンリーマイクロホン誘導(物理)誘導コイル誘導電動機

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電磁誘導」の意味・わかりやすい解説

電磁誘導
でんじゆうどう
electromagnetic induction

ある回路の近くの磁場が変化するとき,その回路に起電力が生じる現象。 1831年 M.ファラデーが見出した。このとき生じる起電力を誘導起電力という。この場合,回路が閉じていれば電流が流れるが,これを誘導電流という。この誘導起電力,誘導電流の向きは,磁場の変化を打消すように起り (レンツの法則 ) ,ある閉回路に生じる誘導起電力は,この回路を貫く磁束を Φ とすれば,-(∂Φ/∂t) で与えられる (ファラデーの電磁誘導の法則) 。回路のない空間でも,磁束密度 B が時間的に変化すると電場 E が生じる。この電場はマクスウェルの方程式 rotE=-(∂B/∂t) により決る。

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世界大百科事典 第2版 「電磁誘導」の意味・わかりやすい解説

でんじゆうどう【電磁誘導 electromagnetic induction】

一つの閉じた回路の面を貫いている磁束の量が変化したとき,その回路に沿って起電力が生じ過渡的な電流が流れる現象。その起電力を誘導起電力induced electromotive force,電流を誘導電流induced currentと呼ぶ。1831年M.ファラデーによって発見され,それまで別の現象と考えられていた電気と磁気との間に関係があることが示された。閉じた回路の近くで永久磁石を動かすか,あるいは電流が流れている他の回路を動かしたり,その電流を切ったりしたときこの現象が観測されるほか,また閉じた回路に流れている電流が変化した場合にも,この回路を貫く磁束が変化するため回路に誘導起電力を生ずる。

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