電荷(読み)でんか(英語表記)electric charge

精選版 日本国語大辞典 「電荷」の意味・読み・例文・類語

でん‐か【電荷】

〘名〙 静電現象原因となる電気実体をいう。電子に対して引力を示すものを正電荷斥力を示すものを負電荷といい、一点に集中しているものを点電荷という。かでん。〔稿本化学語彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「電荷」の意味・読み・例文・類語

でん‐か【電荷】

物体が帯びている静電気およびその物理量。いろいろな電気現象を起こすもとになるもの。電気量荷電
[類語]電気陽電気正電気陰電気負電気静電気電磁気電場電界電流直流交流整流電圧電気抵抗発電送電配電感電通電電動電源荷電帯電充電蓄電放電

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電荷」の意味・わかりやすい解説

電荷
でんか
electric charge

電気現象のもとになる実体で,その量を電気量という。電荷,電気量または電気を同じ意味に用いることもある。電荷を正,負の2種に分類し,それぞれ正電荷,負電荷などという。等量の正電荷と負電荷を合せると電荷のない状態となり,これを電気的に中性であるという。逆に,中性の状態から正電荷を分離すると必ず等量の負電荷が現れる。摩擦によって電気を生じるのは,このような分離による。電荷をもった粒子荷電粒子,大きさを無視できる荷電粒子を点電荷という。一般に,閉じた系においては電荷の代数和は一定であるという電荷保存則が成り立つ。電気量は原子的な最小単位量をもち,この単位量を電気素量あるいは素電荷と呼んで記号 e で表わす。電荷は究極的には素粒子の電荷に帰することができ,電子の電荷は -e陽子の電荷は +e である。すべての電荷は電気素量の整数倍であって,微視的な粒子たとえば原子核は電荷 Ze をもつ。 Z はこの原子核の原子番号と呼ばれる整数である。巨視的な電気量が連続的に任意の値をもつようにみえるのは,電気素量がきわめて小さい値 1.6×10-19C だからである。電気素量の 1/3 の電荷をもつ粒子クォーク存在が仮想されていたが,1994年にその存在が実験的に確証された。なお,クォークは素粒子の中でのみ存在するので自然界で観測される最小の電荷は e である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「電荷」の意味・わかりやすい解説

電荷
でんか
electric charge

電磁気現象を引き起こす源となる物理的実体で、その電気量は電磁場から受ける作用の大きさおよび発生させる電磁場の強さを規定する物理量で、物質を特徴づける量である。電子の研究によって電荷の素量(電子1個のもつ電気量の絶対値。電気素量)eが発見され、その大きさは
  e=1.602×10-19クーロン
である。陽子の電荷は+e、電子の電荷は-eである。現在観測される限り、この素量の整数倍以外の電荷がみいだされたことはない。素粒子の基本構成要素であるクォークの電荷は、素量の2/3、1/3倍であるが、このような分数電荷をもつクォークが単独でみいだされたことはなく、クォークはハドロン内部に閉じ込められていると考えられている。電荷ということばで電気量を表現することもあるが、これについては厳密な保存則が成り立っている。すなわち電荷は自然になくなることも、増えることもない。これを電荷の保存則という。素粒子の世界では荷電粒子の生成消滅があるが、+eの粒子ができれば同時に-eの粒子ができ、電荷の代数和はつねに保存される。電荷が空間の一点に集中しているとき、点電荷という。

[小川修三・植松恒夫]

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百科事典マイペディア 「電荷」の意味・わかりやすい解説

電荷【でんか】

荷電とも。電気現象(電気)の根源となる実体。すべての電気現象は電荷の存在とその運動から起こる。導体や半導体に現れる電荷は電子またはイオンにより,誘電体では誘電分極により見かけの電荷が現れる。電荷の大きさ(電気量ともいう)はそれが生じる電気現象の強さから測られ,実用単位はクーロン。導線に1アンペアの電流が流れるとき,1秒間に通過する電気量が1クーロンである。電荷には正と負があり,必ず電気素量の整数倍になる。
→関連項目固体撮像素子静電気

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化学辞典 第2版 「電荷」の解説

電荷
デンカ
electric charge

電荷は電気の量を示す.電荷の大きさは電荷どうしが及ぼし合う力の大きさによって定義される.たとえば,真空中に相等しい二つの点電荷Qを距離rだけ隔てて置いたときに作用する力の大きさFは,クーロンの法則により,

の式で与えられるが,cgs静電単位(esu)ではr = 1 cm でF = 1 dyn になるような電荷Qを単位とし,実用単位では静電単位の2.998×109 倍をとり,これを1クーロン(C)という.また,電荷のMKSA単位およびSI単位でもクーロンを採用する.実在するすべての電荷の大きさは電子1個のもつ電荷の大きさ,

e = 4.8033×10-10 esu = 1.6022 × 10-19 C

の整数倍であり,電子に対して引力を示すか斥力を示すかによって,正電荷あるいは負電荷といわれる.電気現象(静電的および電磁的)は,すべて電荷の存在およびその運動によって起こされる.

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世界大百科事典 第2版 「電荷」の意味・わかりやすい解説

でんか【電荷 electric charge】

電気とほとんど同義語であるが,個々の物体や粒子などがもつ電気を指すときには電荷ということばを用いる。電気には正負の2種類があるので,電荷の量(電気量)は正負の実数で表され,その単位はクーロン(C)である。導線に1Aの電流が流れるとき,1秒間に通過する電気量が1Cである。
[電荷の保存則]
 経験によれば,あらゆる物理的,または化学的過程において,それに関与する物体,粒子などの電荷の総和(代数和)は一定に保たれ,過程の前後で増減することはない。

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世界大百科事典内の電荷の言及

【電気】より

…これに対する解答は,1785‐89年にフランスのC.A.deクーロンによって,逆2乗法則として与えられた(クーロンの法則)。これ以後,与えられた電荷の分布から,その周囲に及ぼされる電気力を計算することが大きな課題となった。この方面でとくに大きな成果をあげたのはS.D.ポアソンである。…

※「電荷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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