日本大百科全書(ニッポニカ) 「青年アイルランド党」の意味・わかりやすい解説
青年アイルランド党
せいねんあいるらんどとう
Young Ireland
19世紀なかばアイルランドの政治的自立を目ざして生まれた政治グループ。オコネルのリピール(併合法撤回)運動を推進していた若いナショナリストたちが、1842年、週刊『ネーション』を発刊して、アイルランド民族の伝統を文学作品などで強調した。これが青年アイルランド党とよばれたグループで、デービスT. O. Davis(1814―45)、ダッフィC. G. Duffy(1816―1903)、ディロンJ. B. Dillon(1816―66)の3人が中心だった。「どんな先祖から出ているとしても、国を愛し、国に仕えるならみんなアイルランド人」(デービス)と、アイルランド人が別個の民族であることを自覚して、イギリスからの政治的自立を求めることを説いた。彼らの情熱はおりからの大飢饉(ききん)(1845~47)に遭遇して急進的となり、48年7月、武装蜂起(ほうき)を決行するに至ったが、容易に鎮圧された。しかしイギリスによる併合(1801)以来、イギリス化が進行するなかで、アイルランド民族の伝統に根ざしてナショナリズムを改めて問いただし、現代につないだことの意義は大きい。
[堀越 智]
『T・W・ムーディ、F・X・マーチン編著、堀越智監訳『アイルランドの風土と歴史』(1982・論創社)』▽『P・B・エリス著、堀越智・岩見寿子共訳『アイルランド史―民族と階級』上下(1991・論創社)』▽『S・マコール著、小野修編、大渕敦子・山奥景子訳『アイルランド史入門』(1996・明石書店)』▽『上野格著「アイルランド」(松浦高嶺著『イギリス現代史』所収1992・山川出版社)』▽『松尾太郎著『アイルランド民族のロマンと反逆』(1994・論創社)』▽『波多野裕造著『物語アイルランドの歴史』(中公新書)』