1935年に公布された青年学校令によって,実業補習学校と青年訓練所とが合併して発足した勤労青年教育機関。1926年に発足した青年訓練所は,16歳から徴兵年齢までの青年に軍事教練を施すことを目的としていたため,青年学校本科の教科の37%は教練科であった。同時に青年学校は,1893年に設けられた実業補習学校の目的としていた公民教育と職業教育の機関でもあった。尋常小学校卒業を入学資格とし,普通科(2年),本科(男子5年,女子3年),研究科,専修科からなり,高等小学校卒業者は本科から入学できた。施設は小学校があてられ,設備も不十分で専任教員も少なかった。39年には男子のみ義務制となった。この義務制は,国民の中等教育への進学要求を正規の中等教育の改革によって解決するものではなく,青年期教育の二重構造を温存したまま,日中戦争を契機とした国家総動員体制をになう国民を養成するためのものであった。しかし,それまで勤労青年教育の中心であった農業青年だけでなく,都市勤労青年にも教育の機会が与えられることになり,工場や事業場に私立の青年学校が設けられた。第2次大戦後,47年に公布された学校教育法により,新制中学校,新制高等学校が発足,青年学校は廃止された。その際,青年学校生徒によって,勤労青年の教育の機会を確保するため定時制高校の分校設置運動がおこされた。
執筆者:大串 隆吉
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1935年(昭和10)青年学校令によって設立された勤労青年のための中等教育程度の定時制の学校。39年に義務制(男子のみ)となり、47年(昭和22)まで存続した。従来の勤労青年教育機関は、明治中期からの実業補習学校と大正末年発足の軍事教練を主とした青年訓練所とがあったが、両者は施設、教員、対象者において重複する場合も多く、青年学校として統合された。普通科(尋常小学校卒業者。2年)、本科(普通科修了者、高等小学校卒業者。男子5年、女子3年)のほか、研究科、専修科が置かれ、最初公立のみであったが、のちに私立も認められ工場や事業所に設置された例も多かった。その教育は「皇国青年ヲ練成スル」ことを本旨とし、修身公民科、普通学科、職業科、教練科(男子)、家事裁縫科(女子)などが課せられたが、男子については軍事的予備教育を施して優秀な兵卒を得ることにねらいがあった。
[小股憲明]
『文部省社会教育局編・刊『青年学校制度解説』(1936)』▽『菅菊太郎著『青年学校及青年教育』(1939・明文堂)』▽『文部省社会教育局編・刊『青年学校教育義務制に関する論説』(1940)』
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…当初,全国に1万3852ヵ所設けられた青年訓練所は16歳から20歳までの男子青年を対象としており,実業補習学校を修了して入営するまでの期間を埋めるべく意図されていた。しかし,青年訓練所はたいていの場合実業補習学校に併置されたため,市町村当局ではその二重運営に不満が生じ,35年青年学校令によって両者は合併して青年学校となった。39年には国防力充実と産業発展の必要上の名目で青年学校を義務制とするとともに,軍事教練を主要目的とするようにした。…
…青年に例をとると,近代化の過程で解体のすすんだ〈若者組〉などの地方青年組織を,内務省と文部省は自覚的な青年や地方名望層の指導を求めて地域青年会(青年団)として再編させ,国民教化態勢強化のための地方改良運動の展開と通俗教育調査委員会設置(1911)などの施策のなかで幾度か訓令を発して,地域共同体における伝統的秩序と国家意識を浸透・定着させる修養団体として育成した。低廉な労働力形成のねらいから設置されていた実業補習学校(1893)は,のちに軍部の要請でつくられた青年訓練所(1926)と合体して青年学校となる(1935)が,政府は青年団員にこれらへの入学を奨励(のちに義務化)して,国民教化,労働力陶冶,兵士養成を一体化させたのである。地域共同体に基礎をおいた団体育成によって国民教化をすすめる方法は婦人に対しても同様であって,日清戦争出征兵士慰問を契機に組織された婦人会をはじめとして,地方改良運動,教化総動員,隣組の組織化,国防意識の高揚などに積極的に動員をはかり,青年とともに教化活動の重要な担い手として育成した。…
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