とう‐どり【頭取】
〘名〙
※楽家録(1690)一三「調子一名品玄、奏楽毎調始奏レ之、畧之時音取也 〈略〉至二于終句一止レ之法、絃管共頭取一人奏二終之一」
(ロ)
能楽・
歌舞伎で「翁
(おきな)」「三番叟」を演奏するとき、
小鼓方三人のうちの中央の主奏者。小鼓方の統率者。
※四座役者目録(1646‐53)「子へ、忝も、
観世の頭取、不
二相替
一被
二仰付
一」
② 転じて、一般に頭(かしら)だつ人。
※三河物語(1626頃)一「信忠も
聞召て、其中に頭取
(トウトリ)之族を御手討に被
レ成ければ」
※浮世草子・嵐無常物語(1688)上「頭取(トウドリ)に断りいひて帰りさまに」
※古今相撲大全(1763)下本「頭取は、往古禁廷にて、相撲番行はせ給ふとき、相撲長と称するもの是なり」
※大新ぱん浮世のあなさがし(1896)「会社の頭取が其会社の事を知らぬがある」
※英政如何(1868)五「ミニストル方の組は下院に於ては、スピーケル(頭取)の
椅子の右側に坐し」
あたま‐とり【頭取】
〘名〙 売買その他で、なかに立った者が代金や賃金の一部を取ること。上前取(うわまえとり)。
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デジタル大辞泉
「頭取」の意味・読み・例文・類語
とう‐どり【頭取】
1 音頭を取る人。転じて、集団のかしら。頭領。
2 銀行などの首席の取締役。その代表者として業務執行に当たる。
3 雅楽で、合奏の際の各楽器の首席演奏者。特に、管楽器でいう。音頭。
4 能・歌舞伎で、「翁」「三番叟」を上演するとき、小鼓方三人のうち、中央に座る主奏者。
5 歌舞伎劇場で、楽屋のいっさいの取り締まりをする役。また、その人。古参役者から選ばれ、楽屋入り口の頭取座に詰めた。今は庶務係化している。楽屋頭取。
6 相撲で、力士をまとめ、取り締まる人。
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頭取
とうどり
雅楽、能楽、歌舞伎(かぶき)の演奏に際し主奏者となる人、あるいは音頭(おんど)をとる人、音頭取をいう。転じて、江戸時代に至っては一般に頭(かしら)だつ人をいう。たとえば、火消し人足や鳶(とび)の者などの集団の長である人、首領、頭目をさす。このほかに、とくに楽屋頭取や相撲(すもう)の年寄をいう場合もある。前者は、歌舞伎劇場で楽屋いっさいの総取締り役をする名題(なだい)下の役者の呼称で、楽屋2階への階段の反対側に設けられた一段高い所にあった「頭取座」に控え、大切りには口上を述べるなど、中心的な働きをし、物わかりよく、顔の売れた古参の役者がこれを務めた。後者は、相撲興行にあたって、力士を統轄する者をいう。現在では、銀行や会社、組合などの取締役の首席で、その代表者となって業務執行の任にあたる者をいう。
[棚橋正博]
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とうどり【頭取】
〈頭取〉の語は,雅楽の音頭(おんどう)(管楽器の主席奏者),能楽の頭取(《翁》の小鼓方の統率者)から転じて頭(かしら)に立つ人の意に用いられる。相撲で力士を統轄し興行に参加する者や,銀行,会社の代表取締役のこともいう。歌舞伎では劇場の楽屋内の職掌の一つ。一番太鼓のころに出勤し,楽屋入口に近い頭取座,着到板の前に控え,病気休演や舞台事故の処置,無用な者の楽屋立入りの監視,仕切場からの化粧料,日払い,焚捨の配分,終演時に観客に対し〈切口上〉を述べるまで,一切の楽屋進行や取締をする。
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頭取
とうどり
(1) 歌舞伎劇場の楽屋庶務を担当する役。昔は劇界の故実を心得た古老の俳優がつとめ,楽屋入口近くの頭取部屋にいて事務をとった。おもな仕事としては,毎日の支払い経費の配分,代役の選定,諸掲示,紛争の処理,終演時に舞台へ出て「今日はこれぎり」という切口上 (きりこうじょう) を述べることなどであった。現在は名称だけ残り,舞台事務所に勤めて雑務をする係をさす場合がある。 (2) 雅楽では音頭のこと。 (3) 能では翁舞の小鼓のリーダーのこと。 (4) 銀行の長。
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