類書(読み)るいしょ

精選版 日本国語大辞典 「類書」の意味・読み・例文・類語

るい‐しょ【類書】

〘名〙
① 同種類の書物。また、類似の書物。類本。〔布令字弁(1868‐72)〕
事項別に分類・編集した書物。特に中国で、事項別に、それに関する詩文などの文献をまとめた書。
※典籍槩見(1754)類書「類書とは、事実と文章とを合して類聚したるを事文類聚と云、或は芸文類聚とも云なり」 〔新唐書芸文志・丙部子録・類書類〕
③ 同じ性質文書同類の書類。特に中世、ある文書の筆者が書いたそのほかの文書で、筆跡花押の真偽鑑定の基準とするに足るもの。訴訟の際に、証拠書類の真偽判定のために比較検討された。
※出羽市河文書‐文永二年(1265)閏四月一八日・関東下知状「十七日状令比挍、両方承伏宝蓮自筆類書等処、云手跡、云判刑同筆之由所見也」

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デジタル大辞泉 「類書」の意味・読み・例文・類語

るい‐しょ【類書】

内容などが似ている書物。同種類の書物。類本。「類書が多い」
多くの書物から類似の事項を集めて分類し、まとめた百科事典形式の書物。特に、漢籍についていう。
[類語]異本写本流布本海賊版底本原本原典原書テキストオリジナル原作出典典拠種本抄本校本定本

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「類書」の意味・わかりやすい解説

類書
るいしょ

一般には同種類の書物をいうが、中国では内容を事項によって分類、編集した書物のことで、古来百科事典を類書の形式で発展させてきた。紀元前2世紀ごろ、秦(しん)末漢初に成立したといわれる『爾雅(じが)』は、各字を19編に分類して、単純な訓を与えた辞典と事典を兼ねたもので、類書の萌芽(ほうが)がみえる。3世紀になると、後漢(ごかん)の劉煕(りゅうき)が『釈名(しゃくみょう)』8巻を編したが、これは『爾雅』の形式を存しながら、類書の内容を備えたものであった。類書の形式を確立して、その典型といわれるのが唐の欧陽詢(おうようじゅん)ら編『芸文類聚(げいもんるいじゅう)』100巻である。分類は天、歳時、地、州、郡から瑞祥(ずいしょう)、災害まで45部とし、各部に事項名を配し、総説と古典の引用の詩文を掲げる。唐から宋(そう)にかけて多くの類書が編せられたが、これに拠(よ)っている。明(みん)初の『永楽大典』2万2877巻(1409)も、清(しん)初の『欽定(きんてい)古今図書集成』1万巻(1725)もその形式をとったものである。ことに後者は、形式が整備され内容豊富なために、現在もなお利用されている。

 日本では中国の類書を用いたので、独自な類書は発展せず、突発的に優れた類書が出現した。831年(天長8)に滋野貞主(しげののさだぬし)は、宮廷秘庫の群籍を抄出して『秘府略』1000巻を編した。また、源順(みなもとのしたごう)編の『倭(和)名類聚鈔(わみょうるいじゅしょう)』(十巻本と二十巻本がある)は承平年中(931~938)に辞典として編せられたが、名詞を分類別にしており、国書の類書でもある。江戸時代末に屋代弘賢(やしろひろかた)の編した『古今要覧稿(ここんようらんこう)』560巻(1821~1842)や明治時代の文部省計画による『古事類苑(こじるいえん)』1000巻(1896~1914)は、和書でこの形式をとったもの。寺島良安(りょうあん)編『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』100巻(1712序)は、中国に倣い、これを凌駕(りょうが)したもので、明治まで200年間にわたり実用に供せられた。以後、西洋の百科事典の形式に移った。

[彌吉光長]


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普及版 字通 「類書」の読み・字形・画数・意味

【類書】るいしよ

分類・編集した書物。〔漢学師承記、叙〕元・の際、制義を以て士を取り、古學(ほとん)どゆ。而して三百年、四方の秀乂(しうがい)、帖括(試験法)に困(くる)しむ。を以て經學と爲し、書を以て聞と爲す。長夜悠悠、天をること(ぼうぼう)たり(何もわからぬ)。

字通「類」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「類書」の意味・わかりやすい解説

類書【るいしょ】

中国で多くの既存の書物から抜粋し,利用しやすいように分類編集した書物。今日の百科事典や叢書に近く,日本にも影響を与えて《類聚(るいじゅう)国史》等ができた。中国では六朝時代から始まり,《太平御覧》《古今図書集成》など著名な類書があるが,日本では《和名(わみょう)類聚抄》が有名。
→関連項目永楽大典唐物語古事類苑塵添【あい】嚢抄太平広記塵袋佩文韻府

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図書館情報学用語辞典 第5版 「類書」の解説

類書

(1)類似の内容の図書.(2)分類された知識の書の意で,百科全書.洋の東西を問わず,古代の百科全書は個別項目が分類順であり,その内容は既存の学術文献から関連記事を抄録したものである.この形式が中国では歴代踏襲され,最終で最大のものは清朝の『欽定古今図書集成』(1726年完成)で10,000巻からなる.類書形式は日本でも長く行われ,最終の『古事類苑』(1896-1914)は明治前の知識の集大成となっている.西洋では17世紀以降,項目のアルファベット順に編成し,総合的に要約記述する百科事典に発展した.日本でも20世紀に入って西洋的な百科事典に変わった.

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世界大百科事典 第2版 「類書」の意味・わかりやすい解説

るいしょ【類書 lèi shū】

中国で編纂された書物の一形式。自然界と人間社会のあらゆる領域にわたる事物や現象を既存の書物から抜粋し,いくつかの部類に区分して体系化した書物をいう。その呼称は,宋の欧陽修などが編纂した図書目録《崇文総目》や《新唐書》芸文志が,これらの書物に類書という分類を与えたのに起源し,《四庫全書総目》以降一般に定着した。一種の百科事典ではあるが,編纂者がみずから著述した書物ではない点で,現在の百科事典と根本的に異なるところがあり,資料彙編的性格が強いので,むしろ叢書に近いといえる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「類書」の意味・わかりやすい解説

類書
るいしょ
Lei-shu

中国独特の一種の百科事典。多くの書物のなかにみえる事項を項目別に分類編纂したもの。唐代以後盛んとなり,『芸文類聚』『太平御覧』『冊府元亀』『永楽大典』『淵鑑類函』『古今図書集成』などがその代表である。

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世界大百科事典内の類書の言及

【漢文】より

…しかし,漢文らしい漢文を書くためには故事,出典を踏まえなければならず,文字どおり万巻の漢籍に通暁(つうぎよう)することは日本人にとって困難なことであった。そうした困難を緩和するものとして,〈類書〉とよばれる故事を集め分類した,いわば百科事典のごときものが利用された。古代においてもっとも利用されたものに《芸文類聚(げいもんるいじゆう)》《初学記》があり,また小学書(漢字辞典のようなもの)と類書の性格を備えた《玉篇(ぎよくへん)》があった。…

【辞書】より

…このほか語源辞書の《名語記(みようごき)》10巻(経尊著。1275(建治1)成立),類書の《塵袋(ちりぶくろ)》11巻(文永~弘安期(1264‐88)ころ成立か),最古の五十音引き辞書として《温故知新書(おんこちしんしよ)》(大伴広公著,1484(文明16)成立),イロハ分類だけで意味分類のない《運歩色葉集》(1548(天文17)成立)などが現れたが,これらの中で《和玉篇》《下学集》《節用集》は最も広く行われ,江戸時代におよんだ。 和語の語釈の辞書としては,上覚の《和歌色葉》3巻(1198(建久9)成立か),順徳院の《八雲御抄(やくもみしよう)》6巻などがある。…

【自然誌】より

…以後は,知識がふえて内容が膨大になるのと数学的科学が自然科学の中心になったので,自然誌は百科事典にその役割をゆずった。 中国では3世紀に魏の文帝の命で繆襲(びゆうしゆう)らが《皇覧》(120巻,《隋書》経籍志による)を編纂したのをはじめとして,いわゆる〈類書〉が編纂されるようになった。著名なものとしては宋の李昉(りぼう)らが勅命で編纂した《太平御覧(たいへいぎよらん)》や王欽若(おうきんじやく)が編集した《冊府元亀(さつぷげんき)》,明の王圻(おうき)が親子2代で撰した《三才図会(さんさいずえ)》がある。…

【事典】より

…一つは,主に西洋で発達した,表音表記のアルファベット順などに配列するもので,日本の五十音順もこれに当たる。それに対して事項の属する分野ごとに,さまざまな分類法に従って配列されるものがあり,東洋ではこれを類書といった。最初の事典とされる大プリニウス(23ころ‐79)編の《博物誌》は,地理,人種,動物,植物,鉱物と分類されていた。…

【百科事典】より

…【佐藤 次高】
【中国】
 中国の百科事典は辛亥革命を境として前後に分かれる。中華民国成立以前の百科事典は類書と呼ばれるものであって,今日の尺度からすれば厳密な意味での百科事典とはいえず,あくまでも中国的な百科事典であった。
[類書]
 類書が西欧風の百科事典とどのような点で基本的に相違するか,それは編纂の側と利用の側の両面からみて初めて,百科事典としての類書の性格が明らかになるであろう。…

※「類書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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