(読み)ふう(英語表記)wind

精選版 日本国語大辞典 「風」の意味・読み・例文・類語

ふう【風】

[1] 〘名〙
① ある範囲内で共通様式、方法など。
(イ) ならわし。風習風潮
※続日本紀‐天平宝字元年(757)八月己亥「移風易俗莫於楽
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四「幼より目耳曼に游学し、節約の風に染んで」 〔礼記‐楽記〕
(ロ) 様式。流儀
※正法眼蔵(1231‐53)弁道話「しばらく雲遊萍寄して、まさに先哲の風をきこえんとす」
(ハ) やり方。様子。「きいた風」
※洒落本・深川新話(1779)「こいつもある風(フウ)なせりふだとは思ったけれども」
② 人の姿や物の形。
(イ) なりかたち風体風采格好
※評判記・野郎虫(1660)花崎妻之助「何とやらんお寺がたのざうりとりの風(フウ)ありて、いやしき所あり」
(ロ) みめかたち。容姿
浮世草子・西鶴織留(1694)五「替りに風のよい女郎衆を置て見せ給へ」
(ハ) 物の形。
※人情本・仮名文章娘節用(1831‐34)前「どうもまことに風(フウ)といひ、甲といひ、いっそ好た形でござりますョ」
③ 出来事、情勢など。
明月記‐正治元年(1199)四月二二日「又々語世間之風等
④ 世間的な体裁、評判など。聞こえ。→風(ふう)が悪い
※女弟子(1961)〈有吉佐和子〉「体裁(フウ)のええ話やなし」
⑤ (形動) しゃれたさま、気どったさまなど。風流。
※浮世草子・風流曲三味線(1706)一「とかく女郎に風なる仕出して思ひつかれんと思ふも物事むづかし」
⑥ 精神的な気性、気構えなど。気風。雰囲気。
日葡辞書(1603‐04)「Fǔno(フウノ) ヨイヒト」
⑦ 「詩経」の六義(りくぎ)の一つで、雅・頌とともに、内容上の分類を示すもの。諸国風俗・習慣をうたった民謡をいう。
※作文大体(1108頃か)「詩六義者風賦比興雅頌也」 〔詩経大序〕
漢詩になぞらえて、紀貫之がいう和歌の六義の一つ。そえうた。
古今(905‐914)真名序「和歌有六義。一曰風。二曰賦。三曰比。四曰興。五曰雅。六曰頌」
⑨ 地・水・火とともに「四大(しだい)」の一つ。仏教でいう、万物のもとの一つ。
※今昔(1120頃か)一「腹中の宿食、風と成て心痛むで遂に死て地獄に堕ぬ」
⑩ やまい。風(かぜ)の毒による病気。風病。
※今鏡(1170)八「越後の乳母(めのと)、風いたみける頃」
⑪ 世阿彌の能楽論で、芸の意。
[2] 〘語素〙 名詞に付いて、それに類する、いかにもそれらしいなどの意を添える。
(イ) 形式・様式などについていう。「教会風」「西洋風」「ゴシック風」など。
(ロ) 人についていう。「商人風」「学生風」「天才風」など。

かぜ【風】

[1] 〘名〙
① 空気の流れ。一般に地球上のこととするが、現在では太陽からの帯電粒子の流れ(太陽風)や惑星大気の動きをもいう。
※古事記(712)中・歌謡「木の葉さやぎぬ 加是(カゼ)吹かむとす」
② (「かぜむき(風向)」の略) なりゆき。形勢。かざむき。
※人情本・春色辰巳園(1833‐35)初「今にも風(カゼ)のもやうによって、直(ぢき)にもわかれる了簡かへ」
③ 風習。流儀。しきたり。また、威風。
※拾遺(1005‐07頃か)雑上・四七三「久方の月の桂もをる許り家の風をもふかせてし哉〈道真母〉」
④ (「風邪」とも) 鼻、のど、気管などの上気道のカタル性炎症。「医心方‐三・風病証候・第一」に「黄帝大素経云風者百病之長也」とあるように、万病のもととされた。感冒。ふうじゃ。かぜのやまい。
※竹取(9C末‐10C初)「風いと重き人にて、腹いとふくれ」
⑤ インド古代で、地、水、火とともに万物を構成する要素の一つと考えられたもの。また、水輪、金輪とともに、須彌世界を支えているという三輪の一つ。風(ふう)。風輪(ふうりん)
※サントスの御作業(1591)一「ヒト ノ ミ ワ ツチ、ミヅ、caje(カゼ)、ヒ ヲ モッテ カカユル ケッキ タン ワウズイ ノ コト」
[2] 〘接尾〙 (人の名や身分、職業などを表わす名詞に添えて)
① そういうそぶり、様子、それらしく偉そうな様子を表わす。「大尽風(だいじんかぜ)」「役人風(やくにんかぜ)」など。
※九条家文書‐永正二年(1505)一〇月一六日・九条政基書状「彦六は孫六かせをふかせ候て申候ほどに」
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉閨閥「役所では局長風を吹かして属官を睥睨(へいげい)しおるが」
② 人をある気分にさせることを表わす。「臆病風(おくびょうかぜ)」など。
[語誌](1)中国古代の「風」は、大気の物理的な動きとともに、肉体に何らかの影響を与える原因としての大気、またその影響を受けたものとしての肉体の状態を意味した。日本での「かぜ」はもともと大気の動きであるが、(一)④の意の用例は平安時代初期から見られ、おそらくは中国語の「風」の移入か。
(2)(一)④の症状は必ずしも感冒には限らず、腹の病気や慢性の神経性疾患などを表わしていたことが、④の「竹取物語」などの例でわかる。また、身体以外に、茶や薬などが空気にふれて損じ、効き目を失うことを「カゼヒク」といったことが、「日葡辞書」から知られる。
(3)「風邪」は、漢籍では病気名とは言えず、「日葡辞書」でも「Fûja(フウジャ)」は「ヨコシマノ カゼ」で、身体に影響する「悪い風」とされている。近世では、「風邪」は一般に「ふうじゃ」と読まれ、感冒をさすようになった。病気の「かぜ」に「風邪」を当てることが一般的になったのは明治以降のことである。

かざ【風】

(「かぜ(風)」の変化した語)
[1] =かぜ(風)(一)
※俳諧・千代尼句集(1763)乾「蓋とりてつめたきかざや氷餠」
[2] 〘語素〙 風の意で、下に語を伴って「風穴(かざあな)」「風上(かざかみ)」「風車(かざぐるま)」「風早(かざはや)」などと用いられる。

し【風】

〘語素〙 「かぜ(風)」の古語。他の語と複合して用いた。「嵐(あらし)」「旋風(つむじ)」「風巻(しまき)」「級長戸(しなと)」など。

て【風】

〘語素〙 風の意で、動詞の連用形や形容詞の語幹などと熟合して用いられる。「追いて」「はやて」など。

ち【風】

〘語素〙 風の意。し。「はやち(疾風)」「こち(東風)」など。

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デジタル大辞泉 「風」の意味・読み・例文・類語

かぜ【風】

[名]
空気のほぼ水平方向の運動。風向風速で動きを表す。山谷風海陸風のような小規模のものから、中規模の季節風、大規模な偏西風貿易風などがある。「が吹く」「涼しいに当たる」「テントがをはらむ」
その身に感じられる人々のようす。また、世の中の動きやありさま。「浮世のは冷たい」「娑婆しゃば」「野党にが吹く」
寄席芸人用語で、扇子のこと。
(多く「風邪」と書く)鼻・のど・気管などのカタル性炎症。くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・のどの痛み・せきたんや発熱・頭痛・倦怠感けんたいかんなどの症状がみられ、かぜ症候群ともいう。感冒。ふうじゃ。「風邪をひく」 冬》「縁談やちまたに―のたけりつつ/草田男
風習。習わし。
「久方の月の桂も折るばかり家の―をも吹かせてしかな」〈拾遺・雑上〉
[接尾]名詞に付いて、そぶり、ようす、わざとらしい態度などの意を表す。「先輩を吹かす」「臆病に吹かれる」
[補説]書名別項。→
[類語](1雨風波風風浪風雪風雨無風微風そよ風軟風強風突風烈風疾風はやて大風颶風暴風爆風ストーム台風ハリケーンサイクロン神風砂嵐つむじ風旋風竜巻トルネード追い風順風向かい風逆風横風朝風夕風夜風春一番春風しゅんぷう春風はるかぜ花嵐薫風風薫る緑風やませ涼風すずかぜ涼風りょうふう秋風野分き木枯らし空風寒風季節風モンスーン貿易風東風ひがしかぜ東風こち西風偏西風南風みなみかぜ南風はえ凱風北風朔風松風まつかぜ松風しょうふう山風山颪谷風川風浜風潮風海風陸風熱風温風冷風/(4感冒流行性感冒インフルエンザ/(5

ふう【風】[漢字項目]

[音]フウ(漢) (呉) [訓]かぜ かざ ふり
学習漢字]2年
〈フウ〉
大気の動き。かぜ。「風雨風車風速風力寒風逆風薫風光風疾風しっぷう秋風順風旋風台風通風東風とうふう突風熱風爆風微風びふう防風暴風無風涼風
人々に影響を与えてなびかせること。感化力。また、習わしや様式。「風紀風教風習風俗風潮悪風遺風淫風いんぷう家風画風学風気風矯風古風校風作風淳風じゅんぷう新風美風弊風洋風
それとなく伝わること。「風説風評風聞
(「ふう」と通用)遠回しに言う。「風刺風喩ふうゆ
姿やようす。「風格風景風光風采ふうさい風体ふうてい威風好風
味わい。おもむき。「風趣風致風味風流
詩歌。民謡風のうた。「風騒国風
病気。「風疾風邪ふうじゃ風疹ふうしん中風痛風破傷風
さかりがつく。「風馬牛
〈フ〉
かぜ。「屏風びょうぶ
おもむき。「風情ふぜい
〈かぜ〉「秋風神風北風潮風波風松風
〈かざ〉「風上風車
[難読]追風おいて風邪かぜ東風こち微風そよかぜ手風てぶり南風はえ疾風はやて風信子ヒヤシンス

ふう【風】

ある地域・社会などの範囲内で一般に行われている生活上の様式。また、やり方・流儀。風俗・習慣。ならわし。「都会のになじむ」「昔のを守る」「武家の
人や物の姿・かっこう。なり。風体。「医者のを装う」
それらしいようす。ふり。「知らないをする」「気どった
世間への体裁。聞こえ。
「隣近所へ―の悪い思いをする」〈近松秋江別れたる妻に送る手紙
性格の傾向。性向。「人を疎んじるがある」
詩経」の六義りくぎの一。諸国の民衆の間で作られた詩歌。
名詞に付いて、そういう様式である、そういう外見である、その傾向がある、などの意を表す。「地中海の料理」「アララギの短歌」「役人の男」
[類語]振り身振り所作しぐさ素振り思わせ振り様子アクション格好演技ジェスチャー外形外見外面外貌輪郭格好かたち形状姿すがた姿形すがたかたちなりなりかたち身なりなりふり服装風体ふうていスタイル姿勢姿態体勢かたポーズ

かぜ【風】[書名]

俳句雑誌。沢木欣一が昭和21年(1946)に創刊。平成13年(2001)終刊。同人に細見綾子・金子兜太飴山実らがいる。
《原題、〈フランス〉Le Ventシモンの小説。1957年刊。ドストエフスキーの小説「白痴」のパロディー。

かざ【風】

[語素]《「かぜ(風)」の、複合語を作るときの形》他の語の上に付いて、「かぜ」の意味を表す。「かざぐるま」「かざかみ」「かざあな

て【風】

[語素]動詞の連用形や形容詞の語幹などに付いて、そのようなかぜである意を表す。「追い」「はや

ふ【風】[漢字項目]

ふう

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「風」の意味・わかりやすい解説


かぜ
wind

一般には地球上の空気の動きをいうが、太陽から放出される帯電粒子の流れは太陽風solar windといい、また、他の惑星大気の動きも風とよばれる。

 風という文字は凡と虫という文字で構成されており、凡は風という文字の発音を示すともいわれ、風はもとは「ボン」あるいは「ハン」と発音した文字であろう。これはフランス語のvent、英語のwindの、v、wと相通じる音であって、いずれも空気の振動を模した擬声語と考えられる。日本の風神は級長津彦命(しなつひこのみこと)、級長戸辺命(しなとべのみこと)(『日本書紀』)の男女二神であることからもわかるように、風の古語は「シ」または「チ」であり、コチ(東風)、アラシ(嵐)、ニシ(西風)などの用例があるが、これも擬声語と考えられる。

 英語のwindは天気weatherと同じ語源をもつものであり、weather side(風上側)の用例からもわかるように、古くは混同して用いられていた。一定の風向きの風が一定の天気を伴うことは、古くギリシア時代から識別されていたことでもある。

[根本順吉・青木 孝]

風の科学

風向と風速

風は、山を越える場合や、発達した積乱雲の中などの特殊な場合を除き、ほとんど地表に水平に吹く。通常は垂直方向の動きは水平方向のおよそ1%程度であるが、このわずかな風の垂直成分によってさまざまな天気現象が現れるので、きわめて重要な成分である。

 風は方向と大きさをもったベクトル量であるから、一般に風向と風速の二つの成分によって表される。理論的な取扱いとしては、東西成分(u、西風が+(プラス)で東風が-(マイナス))、南北成分(v、南風が+で北風が-)、および垂直成分(w、上向きが+で下向きが-)に分けて表す。

 一般に使われる風向は十六方位だが、さらに詳しく風向を示す場合には、北から東回りに360度までの角度で表現する。この表示において昔は東西が基準であったから、東北の風とか、西南の風という言い方をした。しかし現在は、世界的な航海の関係で南北が基準となっているところから、前記の場合は北東の風、南西の風といい、十六方位もそのような表現になっている。なお、きわめて初歩的な注意であるが、たとえば南風というのは、南から北に向かって吹く風であり、北から南に向かって吹く風のことではない。

 風速は通常、毎秒何メートルの単位で表されるが、航空や航海においては、長い間の習慣から国際的にマイルやノットが単位として使われている。これらの単位の換算は次のとおりである。

  1m/s(秒)=1.944kt(ノット)
   =3.600km/h(時)
   =2.237マイル/h(時)
 これをごく簡略に表すと
  毎秒1m≒2ノット,
  6ノット≒7マイル/h(時)
となる。

 風速のかわりに風力が風力階級によって表されることがある(例、天気図など)。なお竜巻などの猛烈な強風に対しては藤田哲也(1920―1998)によってF‐スケール(竜巻の風速を表す藤田スケール)が考案されている。

[根本順吉・青木 孝]

風の観測

気象台やアメダスの風の観測には風車型風向風速計というプロペラ型の風向風速計が使われるが、1960年(昭和35)までは四杯のロビンソン型風速計が使われ、以後、より特性の優れた三杯型風速計に切り替えられ、1975年から現在の風車型風向風速計になった。風速計にはこのほか、風圧を利用した圧力型風速計、熱線の電気抵抗が風速によって変化することを利用した熱線風速計、熱膜風速計、また、障害物の背後にできる渦の周波数が風速に比例する関係を利用したボルデクス風向風速計、音波の伝播(でんぱ)速度を利用した超音波風速計、光のシンチレーション・パターンの移動を利用した光風速計などがある。海洋上の風については、人工衛星にマイクロ波散乱計を搭載し、散乱計から発射した電波の海面からの反射で観測するリモート・センシング(遠隔測定)も利用されている。

 このように風の測定はさまざまな方法を用いることにより長足の進歩を示しているが、他方、風の観測は機械を用いなくても、野外などにおいておよその見当をつけることができる。室内や洞窟(どうくつ)内の微風は、水や唾液(だえき)でぬらした指を垂直に立て、2、3回指を立てたまま回転すると、風の吹いてくる方向は冷たく感じるので風向がわかる。室内の風は、たばこや線香の煙のなびき方、ろうそくの炎のなびき方などからも見当がつけられる。鳥は風に向かって止まっていることが多い。昆虫、花粉、種子などの飛び方も風に支配されているので、これらを観察することにより、風の実態を知ることもできる。春になるとヒバリは風に向かう姿勢で空高く舞い上がっていくが、風が弱いほど羽ばたきの数が多いので、だいたいの風向、風速の見当がつけられる。ある方向からの風だけが卓越するようなところでは、木の育ち方がゆがみ、偏形樹となる。カキの木のように柔らかい樹木では、新芽の出る5月ごろの風の方向に枝がなびくことが知られており、これらを利用すれば、気候的なおよその風の見当をつけることができる。

 上層の風は、その低いところでは煙の流れ、高いところでは雲の動きからおよその見当がつけられるが、定量的には、水素やヘリウムを詰めた気球を飛ばし、これをレーダーで追跡することにより観測する。雨滴や雪片の動きが観測できるドップラーレーダーが上層の風やウインドシア(乱気流の一種で、風向が水平あるいは鉛直方向に変化したり、風速が急に変わったりする現象)、ダウンバースト(積雲などから生じる強い下降流によって突風をおこさせる現象)の監視に使われている。また地上から発射した電波が空気による反射・散乱で戻ってきたものから上層の風向、風速を観測するウィンドプロファイラも実用化されている。

[根本順吉・青木 孝]

風の性質

風には次のような性質がある。

〔1〕風は物体に当たると風圧を及ぼす。風圧を表す単位は、風速Vを毎秒メートル(m/s)、風圧Pを毎平方メートルにつきkg/m2で表すと、
  P=0.125V2
となる。ただしこの関係は風圧を受ける物体の形によって大きく変わる。いわゆる流線型の場合は、風圧はこの式で与えられた値の10分の1以下になってしまう。

〔2〕地表を吹く風の風向、風速は絶えず変化している。観測された記録を調べてみると、(1)数秒程度で変わる不規則な変化、(2)100時間ないし10時間程度の変化(1時間程度の変化はきわめて少なくなっている)の2通りとなっている。これにより、風の変化には明らかに2種類あることがわかるのであるが、このうち(1)を「風の息」という。ある期間の風の息の大きさGは、その期間で観測された最大瞬間風速をM、最小瞬間風速をmとするとき
  G=(Mm)/(Mm)
をもって一つの目安にすることができる。期間として10分間をとるとき、最大瞬間風速は、10分間の平均風速のおよそ1.5倍になっている。

〔3〕風と気圧の間にはほぼ一定の関係がある。この関係を利用すると、気圧の分布から風の分布を推定することができるので、天気図などにおいては等圧線が描かれているのである。

 北半球においては、風を背にして立つとき、気圧はその地点より左手の方向でその地表よりも低く、右手の方向で高くなっており、この関係は南半球では左右が逆になる。また等圧線の間隔が狭いほど、そこで吹く風の風速は大きくなっている。これをさらに気圧配置によってまとめてみると、北半球では低気圧に対して風は反時計回りに吹き込み、高気圧からは時計回りに風が吹き出している。この場合も南半球では北半球とは逆の状態になっている。風と気圧の関係についてのこの経験則は、1867年にこの法則をまとめたオランダのボイス・バロットの名をとって、「ボイス・バロットの法則」とよばれている。

 風と気圧の関係は、上層風の場合には、地表との間に働く摩擦力を考えなくてもよい、ということから単純になる。すなわち大規模な偏西風などの場合には、上層風は上層の等圧線にほぼ平行に、北半球では左手方向が気圧が低い配置で風が吹いている。風速は地表風と同様、等圧線の間隔が狭い(気圧傾度が大きい)ほど大きく、またその地点の緯度の正弦(sin=緯度)に反比例した大きさの風として吹く。このような風は気圧傾度力が地球自転の転向力とつり合ったときに吹くものであり、地衡風とよばれる。上層風の大勢は、ほぼ地衡風とみなすことができる。

〔4〕風速は一般に高さとともに増大していく。地表付近で風が弱まっているのは地面との摩擦によるものである。地表から数十メートルくらいまでの風速分布は、ほぼ高さの対数に比例して増大している。地表に設置される風速計は普通5~10メートルの高さに取り付けられているが、この高さの風速は、地面摩擦のない上空数キロメートルの高さの風速のおよそ3分の1(海上では3分の2)くらいと考えられる。

 地上100メートル以上およそ2000メートルくらいまでの風速分布はのようになっている。その垂直分布の形は大気の安定度(上下の対流のおこりやすいときが不安定、おこりにくいときが安定)に依存し、図のように異なってくる。すなわち、不安定な場合は上下の気層の混合がよいので、地表付近では風速を増し、逆に300メートル以上では風速を減じている。大気が安定な場合は、上下気層の入れ替わりがないため、運動量の交換も行われず、500メートル以下は風は弱いが、それより上は急に風速が増大している。

〔5〕風は一般に、収束する場合には風速を増し、発散する場合は風速を減ずる。風が山を越したり、谷に気流が集まってくるとき風速を増すのはこの効果による。

[根本順吉・青木 孝]

風の原因

風が吹くための第一の原因は、気圧の場所による違いによっておこる気圧傾度力である。この力によって空気が気圧の高いほうから低いほうに向かって動き始めると、この力のほかに、次の力が及んでくる。

(1)地表および風速の異なった気層間に働く摩擦力。

(2)地球が自転しているために、ある場所の方向は刻々変わっていくが、これを地球は静止したものとしてみると、物体は運動する方向とは直角の方向に力を受けたものとして論ずることができる。この力を「コリオリの転向力」というが、風の場合も、大規模なスケールの風系ではコリオリの力が卓越する。

(3)等圧線が曲がっているときは、その曲率に応じた加速度を生じ、これに対応した力が働く。台風などの風系ではこの効果が著しい。

 以上の四つの力がつり合った状態で吹く地表の風は、地表においては等圧線とある角度を保ちつつ、気圧の高いほうから低いほうに吹き込んでいく。風と等圧線の傾度は、陸上では30度、海上では10度くらいになっている。上空では摩擦力がほとんど働かないで、風は等圧線に平行に吹くことになる。

[根本順吉・青木 孝]

垂直方向の風

大規模な風系の場合、垂直方向の風速は水平方向に比べると、およそ100分の1くらいしかない。これを水平動の優越という。垂直方向の風(気流)はこのようにたいへん小さいが、上昇気流によって雲ができ、高気圧圏内の下降気流域では晴天が続くなど、天気の分布やその変化にきわめて大きな働きをもっている。垂直方向に気流が生ずる原因は次の五つである。

 (1)山などの障害物を乗り越えて風が吹く場合、(2)地表が加熱されたり上層に寒気が流入するためにおこる対流の場合、(3)風が1か所に収束もしくは発散する場合、(4)前線面に沿って気流が上昇していく場合、(5)偏西風のような大規模な風系においては、たとえば気圧の谷の東側では、気流は上昇気流となり、西側では下降気流となっている。このため気圧の谷の東側では曇雨天となり、反対に西側では晴天のことが多い。

[根本順吉・青木 孝]

地球上の風系

地球上の風系には、全地球的な大規模なものから、室内の気流のような小規模なものまでさまざまなスケールのものがあって、これが重なり合っている。各風系のおもなものについて説明すると次のとおりである。

〔1〕小規模な風系 室内微風、隙間(すきま)風、舞台風、森林風など、地表の微細な温度差と摩擦が関係したものが考えられる。

〔2〕中規模な風系 対流(積雲、積乱雲)、重力波(山岳波)のほかに、(1)海岸地方に発達する海陸風、(2)山岳地帯にみられる山谷風、(3)おろし、だしかぜ、フェーン風などの局地風、(4)竜巻のほか、トルネード、ダウンバーストなどとよばれる局所的な強い渦動などがあげられる。

〔3〕大規模な風系 全地球的な対流圏内の風系は、およそ北緯30度以北(もしくは南緯30度以南)の(1)ロスビー循環と、これらの緯度よりは赤道に近い部分にみられる(2)ハドレー循環に分かれている。

 このうち(1)ロスビー循環は中・高緯度の偏西風といわれるもので、極を取り巻く蛇行した西風の循環である。偏西風中にみられる強風帯がジェット気流であるが、ジェット気流には、寒帯前線と一体の構造としてみられる寒帯前線ジェット気流と、亜熱帯高気圧の北側にあるやや定常的な亜熱帯ジェット気流とがある。極地の低層では東風が吹いており、これは極東風とよばれている。

 (2)ハドレー循環の下層でみられるのが貿易風(または赤道恒信風)であり、北半球では北東、南半球では南東の風となっている。

 大規模風系のロスビー循環とハドレー循環には、これより規模の小さい(3)季節風循環や、(4)日常の天気図で親しまれている熱帯低気圧(台風)、温帯低気圧、移動性高気圧などの擾乱(じょうらん)が重なっているのである。

 なお中規模な風系と大規模な風系の大きな違いは、前者においては地球自転のための転向力(コリオリの力)の影響をほとんど無視してもよいのに対し、後者は転向力の影響が圧倒的に大きくなっていることである。

[根本順吉・青木 孝]

風速の極値と風の平均分布

日本で観測された最大風速の第1位は、1965年(昭和40)9月10日の台風23号のときに四国の室戸(むろと)岬で観測された毎秒69.8メートル(西南西)である。また最大瞬間風速は、1966年9月5日に先島(さきしま)諸島の宮古島(みやこじま)で観測した毎秒85.3メートル(北東)である。山岳における最大風速の記録としては、1942年(昭和17)4月5日に富士山頂で観測した毎秒72.5メートル(西)が最大であり、最大瞬間風速は同じく富士山頂での観測で、1966年9月23日に記録した毎秒91.0メートルが極値である。

 外国における最大風速の記録は、オーストラリア西部のバロー島Barrow Islandで1996年4月10日に観測した毎秒約113メートルである。世界の最強風地帯は南極大陸周辺のアデリー・ランド東部のキング・ジョージ・アイランド西部付近であり、フランスの探検隊による1951年の記録は次のとおりである。(1)平均風速が毎秒33メートル以上の日が122日、(2)平均風速が毎秒14メートル以下になった日は22日、(3)24時間の平均風速の最大は毎秒48メートルで、これは1951年3月21~22日観測された、(4)月平均風速の最大は3月に現れ、毎秒29メートル、(5)年平均風速は毎秒18メートル、などであった。なお風向は東南東ないし南南東が大部分で、内陸の氷冠部から海岸に向けて吹き下ろしてくるカタバチック風(斜面下降風)である。

 地球自転による転向力が働くため、同じ気圧傾度のときは、極地方では低緯度地方より風がたいへん弱くなる。たとえば北極では同じ気圧傾度でも、日本付近の風速の2分の1ぐらいしか風は吹かない。しかも北極気団の中では、日本付近のように前線が頻繁に通過するというようなことがないので、探検の妨げになるような強風の吹くことはまれである。しかし、南極の周辺は、内陸部の氷冠から寒冷な空気がカタバチック風となって吹き下ろしてくるため、風が強くなる。

 赤道地帯は逆に気圧傾度が非常に緩やかで、したがって等圧線の数も少ないが、北極とは違って気圧傾度が小さくても風が吹きやすい。海岸で冬に発達する海陸風や、湖沼周辺で吹く湖風も、低緯度地方では思いのほか強く、最強時には毎秒10メートルを超すことさえある。

 地球全体にわたる風の平均状態は、季節風循環が加わるため、北半球ではとくに季節によってその様相が違っている。そのおもな特徴をあげると次のとおりである。

(1)赤道付近には南北両半球から吹き寄せてくる東寄りの風(貿易風)があるが、両気流の収束する場所は、夏は北半球に偏り、冬は南半球に移る。夏に赤道を越えた南東の貿易風は向きを変え、北半球では南西の気流となる。

(2)亜熱帯には強大な高気圧帯が東西に連なり、ここから、北半球では時計回り、南半球では反時計回りに風が吹き出している。亜熱帯高気圧帯も季節によって北上したり南下したりする。

(3)ユーラシア大陸には、冬にはそこを中心とした高気圧からの吹き出し気流がみられる。しかし夏には高温になった内陸部に風が吹き込んでいく(季節風循環)。

(4)北半球では定常的にアリューシャン方面とアイスランド、グリーンランド方面が低圧部となっており、気流はここに吹き込んでいくが、この低気圧は冬季にとくに発達しやすく、気圧配置の一部となって冬の季節風が送り込まれていく。

[根本順吉・青木 孝]

風の利用および生活に及ぼす影響

風と生物

風を生活にもっともよく取り入れているのは鳥である。鳥は羽ばたきをして飛ぶほかに、すこしも翼を動かさずに長い間空中を飛ぶことができる。これはグライダーが滑空するのと同じ原理というよりは、鳥の滑空の原理を応用してグライダーはつくられたというべきであろう。鳥が滑空しているようすを観察すると、翼の両端を完全に伸ばしている場合と、後方に曲げている場合があり、後者は早く滑空するときに示す姿勢である。

 鳥には、100メートルの高さから滑空を始めると、水平に1600メートルも飛ぶことができるものがある。この場合、大気中にもし毎秒数センチメートル程度の上昇気流があれば、ゆうゆうと飛行が続けられるのである。鳥の利用する上昇気流には、(1)力学的なものと、(2)熱学的なものがある。(1)は山岳地帯や海岸に発達する。(2)は晴れた日にみられる熱気泡(サーマルthermal)がその代表である。鳥の飛翔(ひしょう)するさまをみてそれらの存在に気づくことができる。

 風を利用する動物には鳥のほかにコウモリや昆虫があるが、羽を使わずに飛行するものに「雪迎え」がある。これは「雪送り」とも、また伊豆地方では「白ばんば」ともいわれるが、小グモが尻から長い銀糸を出し、これを風になびかせて飛ぶ生態をいう。「白ばんば」は、クモの白い糸を老婆の白髪に見立てていわれたものである。「雪迎え」というのは、このようなクモの集団移動のあと天気が変わり、日本海側では雪になりやすいからである。このようなクモの集団移動が何万という単位で行われることがあり、西洋ではこれを「天使の髪」angel hair現象とよんでいる。「雪迎え」の現象を中国では「遊糸」という。英語ではゴサマーgossamerであるが、これはgoose summer(ガチョウの夏)をつづめたものである。11月の初めの小春日和(こはるびより)(ヨーロッパではこれをサン・マルタンの夏St. Martin's summerともいう)のころにはガチョウは脂がのってうまいので食べる習慣があり、ちょうどそのころこの現象がみられるのでつけられたという。日本では1957年(昭和32)11月21日、三重県桑名郡多度町(現、桑名市多度町)でこの現象がみられたが、このときは直径4キロメートルの範囲に2時間半にわたってクモの銀糸が降り続いた。

 風媒花の花粉も風を利用して散布される。その飛び方は、(1)形が小さくて浮遊しやすい場合、(2)小さな気嚢(きのう)をつけて浮きやすい形になっている場合などがあり、気流に乗って2000キロメートルも離れた所まで飛んでいくものもある。種子の場合も同様で、タンポポのように毛状の飛行器官がついているものもある。このような器官に太陽光線が当たると、その部分だけ日射を吸収し気温が昇るので、軽くなり浮力をもつようになるのである。

[根本順吉・青木 孝]

風の利用

帆船は紀元前4500年ごろにはエジプトで用いられていた。14世紀には四角帆と三角帆を組み合わせた大きな帆船もつくられるようになったが、19世紀末には帆の数が40もある4000トンの巨大な帆船も現れ、一昼夜の平均速度は18ノットにも達し、速さの点では今日の一流汽船にも負けないほどになっていた。その後、蒸気機関の発達に伴って帆船はしだいに衰え、現在はレジャー用のヨットや、タンカーなどで省エネルギーのための帆の併用などの形で使われている。

 他方、風は風車による脱穀や製塩のため、古くからインドや中国で使われていたが、12世紀ごろにはイスラム教徒によってこれがヨーロッパに伝えられ、14、15世紀ごろからは粉ひきの動力源として用いられた。しかし、空気は水に比べると密度が非常に小さく、その吹き方が一定していないので、風力は、電力の供給が困難で、風の強い離島や山岳地帯で狭い地域の発電用に限定された。その後、環境保全のうえで重要な、クリーンなエネルギーとして風力エネルギー利用の研究開発が活発となり、日本でも、1975年(昭和50)ごろから研究に着手、国のサンシャイン計画の一環として100キロワット級風力発電プラントの開発が取り上げられた。以降、風力発電の普及は目覚ましく、急速に技術革新が進み、コスト低減と設置場所の拡大に対応できるようになった。

 飛行機が風を利用することはいうまでもないが、自由気球や飛行船もその発達の初期には風を利用したもので、そのような試みは18世紀から19世紀の初期にかけて、欧米では盛んに行われた。第二次世界大戦中、日本は中緯度の偏西風を利用してアメリカ本土に向け風船爆弾で攻撃したが、これも風の利用といえる。現在主としてレジャー用として使われているグライダーは、途中までは動力機によって曳航(えいこう)され上昇するものとはいえ、山岳波動気流を利用して14キロメートルの高さまで達したものもある。また高高度を飛行するジェット機は、成層圏付近の強風帯であるジェット気流を利用し、最短時間飛行によるもっとも経済的な運航が行われている。

[根本順吉・青木 孝]

風による災害

風は、小は塵(じん)旋風から、大は巨大な温帯低気圧まで、それぞれの大きさに応じて運動エネルギーをもっている。この大きさに応じて人間の受ける災害の規模もかわってくるが、風による災害は、(1)建築物の倒壊、樹木の折損、船舶の流失や転覆などのような直接的なものと、(2)吹雪(ふぶき)、飛砂、煤煙(ばいえん)の拡散、火災の延焼、風化現象などのような間接的なものに大別される。

 これらに対する対策としては、強風地帯では建物の強度を大にすること、地下に避難室を設けること、防風林や防砂林の設置などの恒久的なものと、天気予報や暴風警報を利用し、事前に処置する一時的なものとがある。さらに教育・啓蒙(けいもう)的には、各種の暴風対策を箇条書きにして身につけ、臨機の処置をするというようなことが考えられる。

 風害に関連した風についてのいくつかの性質をまとめてみると次のとおりである。

〔1〕風圧は風速の2乗に比例して増大する。

〔2〕最大瞬間風速は平均風速の約5割増。「風の息」の周期が、鉄塔などの固有振動周期と一致すると、共振による破壊がおこる。

〔3〕風は高さが増すにつれて強まる。地面付近の風は
  V/V0=(H/H0)n
で表される。この式でV0は標準高度H0における風速、nは定数で平らな地面なら約7分の1、市街地や森林の上では4分の1くらいになる。

〔4〕風は次の場合にとくに強くなる。(1)地物を乗り越えるとき。わずか10メートルの築堤でも、風がその上を乗り越えるときは、風速は5割増しとなる。(2)風が谷や湾の奥のような所に吹き込むとき。(3)岬や山の鼻のような突き出た地形や海峡の所を吹き抜けていくとき。

〔5〕暴風のときは風とともにさまざまなものが飛来し、それがガラスなどにぶつかって破壊する。被害は風圧だけによるのではないことを忘れてはならない。

〔6〕たとえば台風時の塩風害のように、風とともに海上からの塩分を含んだ飛沫(ひまつ)が飛んできて、樹木や送電線の絶縁などに被害を与えることがある。

[根本順吉・青木 孝]

風と生活

それぞれの風向の風は、それぞれの特徴をもった天気を伴うということは古くから知られていた。内外とも、風向によってさまざまな固有名が多いのは、その名によってある程度天気を識別し、生活に役だてることができたからである。このような風の固有名が、東西および南北の方向を組み合わせた「北東の風」というような一般的風名になったのは、ヨーロッパでは8世紀後半から9世紀初頭にかけてのカール大帝の時代のことであった。

 日本の風の固有名詞には、(1)記紀、万葉などの古典にみられるもの、(2)季節に特有な風名で、その代表的なものは俳句の季語として使われている、(3)局地的な強風につけられた地方名、(4)主として漁民などによって使われた民俗学的な固有名、の四つに分けられる。

 このうち(1)は春風とか追風とかのように叙景に普通名詞的につくられたものが多く、固有として興味あるものは、(4)からの影響のあるものと考えられる。「あいの風」「あなし」「ひかた」などの風名である。(2)については「季節の風」に示した。(3)の局地的な強風としては、たとえば山形県庄内(しょうない)平野の清川だし、岡山県の那岐山(なぎさん)南麓(なんろく)で吹く広戸風(ひろとかぜ)などが有名である。(4)については柳田国男(やなぎたくにお)や東条操(みさお)による甚大な蒐集(しゅうしゅう)があり、これをみると、日本の風の呼び名は、西日本―瀬戸内・西九州型、北海道を含む日本海型、および東日本型の三つの型に分かれることがわかる。

 日本は地勢上から毎年のようにどこかで台風の被害を受けているといってもよい。その災害のために年号を改めたことさえあった。たとえば989年(永祚1)8月13日に京都付近を襲った台風は古今無双の暴風で、この風災がきっかけとなって翌年11月7日には正暦(しょうりゃく)と改元された。

 過去300年間で日本を襲った台風の最大のものは、1828年(文政11)9月17日に九州、山陰地方を通過した台風であるが、この台風でオランダ商船コルネリス・ハウトマン号が転覆したのがきっかけでシーボルト事件が起きたところから、シーボルト台風とよばれている。

 局地的に強風の吹きやすい所は、災害の少ないことを祈願して「風祭(かざまつり)」が行われた。他方、鍛冶屋(かじや)のように強風を待ち望む職種もあり、そのような荒れ模様の天気になることをむしろ喜ぶ祭事として、兵庫県西脇(にしわき)市大木町の天目一箇神社(あめのまひとつのかみしゃ)の祭礼が知られている。

 建物の高所などに取り付けられた風見はギリシア時代からあり、アテネのアンドロニコスの風の塔はその代表として知られている。この塔は元来は水時計(クレプシドラclepsydra)として使われたもので、屋根の頂上にはトリトンTritonの像がつけられていた。この塔は八面体で、各面の壁の上部にはそれぞれの風向の神像が刻まれている。風の向きによって、トリトンが手にした棒が、それぞれの風向の風神を指示するよう設計されていたのである。現在8面のレリーフは残っているが、トリトンの像は失われている。風見としてはその後、東西分裂前のローマ帝国皇帝テオドシウス1世のころには、巨大な柱の上に女神をつけたものがあり、これはアネモデュロンanemodoulonとよばれた。ヨーロッパで教会の尖塔(せんとう)の風見に雄鶏(おんどり)がつけられるようになったのは9世紀ごろからである。これは聖職者を雄鶏で表したもの、または魔除(まよ)けとして雄鶏が考えられたとするものなど、さまざまな起源説がある。風見鶏weathercockは、フランスでは12世紀には貴族だけがこれを屋敷につけることが許された。また戦いに勝った騎士には風見の紋章をつけたりした。

 日本では風見の鳥は烏(からす)であった。『浮世風呂(うきよぶろ)』(式亭三馬(しきていさんば)作、1809~1813)に「風見の烏を見るように高くとまってすまして居るも小癪(こしゃく)」とあるのでもわかる。江戸時代にはまた鯉幟(こいのぼり)につける矢車のような玩具(がんぐ)や、そば屋の広告用としても用いられた。

 近代的な動力用風車は、1869年(明治2)に、横浜市根岸のアメリカ人経営の牛乳採取牧場で、給水に利用するため木製のアメリカ式風車が建てられたのが始まりである。その後やはりアメリカ人が経営する横浜のフェリス女学校にもつけられ、これは「赤い風車の学校」とよばれた。日本人の手になるものは、1877年に東京の芝・三田の育種場に設けられたものが最初であるといわれる。また1897年ごろには関西地方でも、神戸の舞子(まいこ)や御影(みかげ)などに住む豪商が風車を邸宅につけるようになった。1924年(大正13)には滋賀県伊吹山山頂の伊吹山観測所(のち伊吹山測候所。2001年閉鎖)の手で風力発電が試みられたが、これが風力を利用した発電のおこりである。その後風車は農村で揚水や点灯用にいくらか普及した。

 数多い風車の利用で世界的に有名なのは、エーゲ海のクレタ島にあるものである。この島の東部の山中にラシチLassithiという長径12キロメートル、短径6キロメートルの平らな盆地があるが、この盆地にはカルスト地形から地下水をくみ上げるための揚水用の風車が実に6000もある。高さ6~7メートルの鉄製の櫓(やぐら)の上に、白い帆布の翼をおよそ8枚簡単に張った風車で、尾翼でいつも風車が風に向かうようにくふうしてある。この風車で発電するのではなく、直接クランクを取り付けて地下水をくみ上げるのである。初めはディーゼルなどの動力を用いて揚水していたが、現在は風車が使われており動力は用いていない。動力の歴史に逆行したケースであるのがたいへん興味深い。

 本格的な風力発電の利用が拡大したのは1980年代のアメリカだった。その後1990年代になるとヨーロッパでも多くなり、日本では1990年代後半から増加している。2008年の時点で、風力発電容量の多い国はアメリカ、ドイツ、スペイン、中国、インドなどである。日本は世界で第13位にある。風は無料で無尽蔵なうえ、発電によって地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないなどの利点が多く、各地で風力発電の導入が進みつつある。

[根本順吉・青木 孝]

風と神話・信仰

風は雲をよび、雨をもたらすため、人々、とくに農耕民にとって好ましいものであり、また帆船で航海する人々にとって必要なものである。しかし強すぎる風は人間に計り知れない被害をもたらすため恐れられる。いずれにせよ風は人間の生活に重大な影響を与えるため、昔から人々の風に対する関心は深く、しばしば信仰の対象となり、とくに神話、伝承のなかで神や精霊などの超自然的存在として、あるいはそれらの属性や機能の一つとしてとらえられていることが多い。

 ギリシア神話では、風の支配者アイオロスは、気分によって、そよ風、疾風、暴風、貿易風などを送る。またエウロス、ゼフィロス、ノトス、ボレアスの4兄弟はそれぞれ東風、西風、南風、北風の神である。気まぐれなエウロスは、よい天気の日でも機嫌が悪くなると急に突風をおこす。ゼフィロスはもっとも恵み深い風神で、春にやってきて雪を融(と)かし、雨をもたらし、花を咲かせ、作物を育てる。ノトスは暖かい風だが、疫病を運んできたり、作物をだめにしてしまうこともある。ボレアスはもっとも狂暴で恐れられ、嵐(あらし)をおこす。ローマ神話では東風はウォルトゥルヌス、西風はファウォニウス、南風はアウステル、北風はアクイロとよばれた。このように風をその向きによって分類し、四方位と結び付ける考えは他の社会でもよくみられる。インドでは古くバーユ(バータ)が風神であった。北欧神話のオーディン、古代メキシコのケツァルコアトルは風神としての側面ももっていた。アフリカのバウレ人(コートジボワールやガーナなどの主要民族)の神話では、天空神や大地女神などの多くの神々のなかに風神グーもおり、グーはその息によって世界を回転させるという。

 風はしばしば神、とくに天空神の働きによっておこるとされている。アフリカのヌエル人の神話では神は旋風によって人間を空に連れていくと信じられている。オーストラリア先住民のなかには、天空神は風によって意志を人間に伝えると考える部族がある。風を霊魂、とくに死霊の活動と結び付ける社会もよくみられる。毎年同じ時期に同じ向きの風が吹く地域では、風は季節と方位に結び付けられる。たとえばインドのアンダマン諸島では、1年は、南西の風が吹く雨期と、北東の風が吹く乾期に分かれる。南西風はタライとよばれ、男神タライがおこす。北東風はビリクで、タライの妻ビリクがおこす。特定の風が病気をもたらすと信じられていることもある。メキシコのマヤ人の間では、風の語は黒と同一であり、好ましいものとされず、とくに冷たい風は病気をおこすといわれる。ミクロネシアのヤップ島では、西風が吹くときには風邪(かぜ)が多いといわれる。

[板橋作美]

民俗

都市生活者には、風による直接の影響は少ないが、農山漁村の人々にとっては、その生命にも関係する重要な現象である。とくに海岸地帯に住む人にとって、風の方位・強弱は、生活と密接な関係があるので、風名も生活に根ざしたものが多い。

 日本の風位名は、(1)日本海沿岸型、(2)関東・東日本型、(3)瀬戸内・西日本型、の三つの系統に大別されるという。風の去来は船の出入、漁獲の有無などに直接かかわり、内陸部にあっても農作物の豊凶に強い影響を与えている。したがって、このような生活体験から、人々は風を単なる自然現象とみなさず、神の往来と考え、とくに害を与える風を恐れてきた。たとえば、沖永良部(おきのえらぶ)島では、ウシの鼻息のような音を伴い、草木を揺り動かして通り過ぎる風をフーシジ(風の精霊の意)といい、これに当たると病気になると伝えて恐れてきた。現実には突風の一種であるが、風を妖怪(ようかい)の類とみなしているのである。熊本県天草(あまくさ)地方で憑依(ひょうい)状態になることを「風負(かぜま)け」という。病気のかぜも、風という現象を異常とし、身体の異常をカゼと表現したものである。

 風を神の去来の現れとしてきたことは、各地に伝承される風と節供の日の関係にみることができる。旧暦10月神無月(かんなづき)に神々が出雲(いずも)に集合するという伝承があるが、その往来にはかならず風が吹くという。初秋から晩秋にかけての風を、日本海沿岸・中部地方で、大師講(だいしこう)吹き(11月中・下旬)、八日吹き(12月8日)、御神楽(おかぐら)荒れなどと称して祭日としているのは、いずれも風を神の出現とみ、来年の作柄のよい知らせのように信じているのである。この季節の風が寄り物をもたらしたり、魚群を寄せるという事実によるものであろう。

 全国的に広くみられる風切鎌(かぜきりがま)の習俗は、強風が吹くと、草苅り鎌を屋根の上とか竿(さお)の先に縛り付けるもので、こうすると風の力が弱まり、ときには鎌に血がついていたなどと伝える所もある。いずれも強風を何者かのしわざと考えていたのである。

 風をつかさどる神は、古く『日本書紀』に、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の吹き撥(はら)う気(いき)が級長戸辺命(しなとべのみこと)となり、この神が風神とされている。奈良県の龍田(たつた)大社、長野県の諏訪(すわ)大社など、各地に風神を祀(まつ)る神社がある。鹿児島県に天吹(てんぷく)という笛を吹いて風をよぶ呪術(じゅじゅつ)があるが、風は本来は人々に力を与えてくれるものと信じられていたのである。

[鎌田久子]

『柳田国男著『増補 風位考資料』(1942・明世堂)』『根本順吉・倉嶋厚・吉野正敏・沼田真著『季節風』(1959・地人書館)』『田口龍雄著『日本の風』(1962・気象協会)』『藤田哲也著『たつまき――渦の驚異 上』(1972・共立出版)』『饒村曜著『台風物語――記録の側面から』『続・台風物語――記録の側面から』(1986、1993・クライム)』『塩谷正雄著『強風の性質――構造物の耐風設計に関連して』3訂新版(1992・開発社)』『大西晴夫著『台風の科学』(1992・日本放送出版協会)』『ジョン・ファーンドン著、守部信之訳『気象』(1993・同朋舎出版)』『大和田道雄著『伊勢湾岸の大気環境』(1994・名古屋大学出版会)』『島田守家著『やさしい気象教室』(1994・東海大学出版会)』『浅井冨雄著『気象の教室2 ローカル気象学』(1996・東京大学出版会)』『高橋浩一郎・宮沢清治著『理科年表読本――気象と気候』(1996・丸善)』『竹内清秀著『気象の教室4 風の気象学』(1997・東京大学出版会)』『清水幸丸著『風力発電技術――地球環境新時代を迎えて 先端技術で飛躍する風力発電』(1999・パワー社)』『市川健夫著『風の文化誌』(1999・雄山閣出版)』『平沼洋司著『気象歳時記』(1999・蝸牛社)』『吉野正敏著『風と人びと』(1999・東京大学出版会)』『鈴木秀夫著『気候変化と人間――1万年の歴史』(2000・大明堂)』『荒川正一著『局地風のいろいろ』(2001・成山堂書店)』『清水幸丸著『風力発電入門――風の力で町おこし・村おこし 地域エネルギー新時代』(2002・パワー社)』『野村卓史著『風車のある風景――風力発電を見に行こう』(2002・出窓社)』『山岸米二郎著『気象予報のための風の基礎知識』(2002・オーム社)』『饒村曜著『台風と闘った観測船』(2002・成山堂書店)』『京都大学防災研究所編『防災学講座1 風水害論』(2003・山海堂)』『青木孝著『いのちを守る気象学』(2003・岩波書店)』『吉野正敏著『世界の風・日本の風』(2008・成山堂書店)』『鈴木秀夫著『風土の構造』(講談社学術文庫)』『H. ShampDie Winde der Erde und ihre Namen(1965, Franz Steiner, Wiesbaden)』『S. WalkerWind and Strategy(1973, W. W. Norton & Co., New York)』『WMO Technical Note No.175;Meteorological Aspects of the Utilization of Wind as an Energy Source(1981, WMO)』


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百科事典マイペディア 「風」の意味・わかりやすい解説

風【かぜ】

動いている大気を風という。風は風向風速によって表され,風力ビューフォート風力階級で表示される。山を越える場合や,発達した雷雲中以外ではほとんど水平に吹き,水平方向の風が毎秒数m〜数十mに対し,垂直方向の風は毎秒数cm〜数十cm程度である。風向,風速は絶えず変化し,風は息づいている(風の息)。瞬間的に強まった風速は,普通に用いられる平均風速のおよそ1.5倍である。風速は高さとともに次第に強くなっている。およそ200mの高さで,地表から10mの高さにおける風速の1.5〜2倍になる。風と気圧分布の間にはほぼ一定の関係があり,北(南)半球では風を背にして立つと左(右)手の方の気圧が低くなる。特殊な風(たとえばカタバティック風)を除き,風は日中強まり,息を増し,夜間に弱まる。また地形・地物の影響を受け強まったり弱まったりする。一般に風が収束するような場所では風は強まり,発散しているところでは弱まる。地球上を吹く風は,山谷風海陸風のような小規模のものから,中規模の季節風,地球全体が一つのまとまりをもっている偏西風(偏西風帯),貿易風ジェット気流のような大規模のもの(大気大循環)まで,各種の規模のものがあり,世界の天候はこれらの各種の風系に左右されている。風には,ある場所でほぼ定常的に吹くもののほかに,竜巻(たつまき)や低気圧,高気圧,台風などのように地球上を移動していく風系に伴われたものがある。風をひき起こす物理的な機構にもとづくものに,地衡風傾度風旋衡風温度風などがある。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「風」の意味・わかりやすい解説


かぜ
wind

地球の表面に対する相対的な空気の運動。地表面近くでは大気の運動の垂直成分は比較的小さいため,風という場合は水平成分について用いる。鉛直成分については,上昇気流または下降気流という。風はベクトル量であり,風速風向をもつ。自然の風は風速,風向ともに乱れがある。地表風は風速計で測定され,風速,風向は通常,観測時刻の前 10分間の平均値で表される。地表付近の風速は,高度とともに増す。上層風はラジオゾンデ,GPSゾンデ,飛行機,静止気象衛星によって観測される。空気の運動(風)は気圧の高いほうから低いほうへ圧力差に比例する速さで起こるが,気圧差のほかに地表摩擦とコリオリの力が空気の運動に関係する。


ふう

日本音楽用語。特徴ある演奏表現様式を示す語。特に義太夫節では,対照的な竹本座の西風と豊竹座の東風が競いあい,全盛期を築いた。また名人の個人的な芸風 (語り口) を染太夫風,駒太夫風などと称している。

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知恵蔵 「風」の解説

地球上における水平な空気の流れ。気圧の高い所から低い所に向かって吹く。大気の大循環の一環の貿易風や偏西風、偏東風などは広範囲に吹く風の代表。大陸と海洋との間で吹くのが季節風。小範囲のものに、海陸風(かいりくふう)と山谷風(やまたにかぜ)がある。昼間は陸が海より暖まるため海から陸に向かう海風(うみかぜ)が、夜間は陸が海より冷えるので陸から海に向かう陸風(りくかぜ)が吹く。海風の先端には海風前線ができ、積雲が発生することもある。海風と陸風が交代する朝夕はなぎで、瀬戸内の夕なぎは有名。また、南向きの山の斜面では、日中は谷から山頂に向かって谷風が、夜は山頂から斜面に沿い、谷やふもとに向かって山風が吹く。

(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)

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世界大百科事典 第2版 「風」の意味・わかりやすい解説

ふう【風】

中国の《詩経》にいう六義(りくぎ)(風,賦,比,興,雅,頌)の〈風〉は,〈雅〉〈頌〉とともに内容上の分類を示し,国風(くにぶり)ともいわれ,諸国の風俗・習慣をうたった民謡をいう。日本では古く《古今和歌集》に中国の六義にならった和歌の六義ということが説かれ,連歌でも物によそえて言う〈そえ歌〉のことを〈風〉といった。また,これとは別にある種の様式,方法,風采,風習,風潮などを意味する言葉としても用いられ,これが六義の〈風〉と習合したのか,芸術上の様式や流儀の意味に転じ,風体や作風の意味に用いられるようになった。

かぜ【風 wind】

一般には地球上における水平な空気の流れをさして風といっているが,地球以外の惑星大気の動きも同じく風と呼んでいる。また,太陽から放出されるプラズマの流れを太陽風という。なお上向きや下向きの空気の流れは気流と呼んで一般に風とは区別している。風はベクトル量であるから,ふつう風向と風速の二つの量で示されるが,気象学の分野で理論的な取扱いをするときは,東西成分と南北成分に分けて考えることが多い。風向は風の吹いてくる方向をさし,例えば北東から吹いてくる風は北東の風という。

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とっさの日本語便利帳 「風」の解説

噺家が使う扇子のこと。筆、刀、キセルなどを表現する。また、手ぬぐいはまんだらといい、手紙、財布などを表す。演者はこれらを使って、顔を上手・下手に動かしながら大勢の人物を表現する。これを、上下(かみしも)を付けるという。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

デジタル大辞泉プラス 「風」の解説

日本の唱歌の題名。原詩はクリスティナ・ロセッティ。作曲:草川信、訳詞:西条八十。発表年は1921年。2007年、文化庁と日本PTA全国協議会により「日本の歌百選」に選定された。

近藤耕人の戯曲。1962年、第1回文藝賞戯曲部門佳作受賞。

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世界大百科事典内のの言及

【屁】より

…【東 健彦】
[文化史]
 《和名類聚抄》では,屁は〈下部出気也〉というだけだが,《和漢三才図会》では〈按屁人気下泄也〉とし,気が充実していれば高音,少なければ低音で,食物が滞っていればひじょうに臭いといい,人前で放屁することを傍若無人のふるまいと戒めている。屁は英語ではwind,fart,ドイツ語ではWind,Furzという。〈恋は心のおならthe fart of every heartです。…

【エネルギー資源】より

…エネルギーは人類の生存にとって欠くことのできないものであるが,今日,主として利用されているのは,石油,石炭,天然ガス,水力,核燃料などによるものである。このほか,太陽の光や熱,川の流れ,風,あるいは牛糞,廃品など,対価を支払わずに利用されているエネルギーも大量にあるが,通常,エネルギー資源という場合には,対価の支払を必要とする商業的資源を指している。 しかし,2度の石油危機で1970年代半ば以降,石油価格が上昇し,資源の有限性が強く意識されるようになってくると,これら非商業的エネルギー源も,新しいエネルギー源としてより大規模に利用することが考えられるようになった。…

【堆積作用】より

…地球の表面付近の地殻は風,雨,河川,氷河,波浪,気温変化,生物などの作用によって一部が削剝され,それが運搬され,ある場所に集積して岩石になっていく。この全過程が堆積作用である。…

【風害】より

…異常に強い風によって生ずる被害の総称。風の強さは普通10分間平均風速で示されるが,最大瞬間風速で示されることもある。…

【詩】より

…文字に記されて残っているものとしては,古代オリエントの《ギルガメシュ叙事詩》や古代インドの二大叙事詩,古代エジプトの〈ピラミッド・テキスト〉や神々への賛歌,古代ギリシアのホメロスの叙事詩,旧約聖書中の韻文テキスト,古代中国の《詩経》などが名高い。日本の場合は,《古事記》《日本書紀》《風土記》などに古代の歌垣や婚姻の歌,国ほめや神ほめの歌が記録されているほか,祝詞(のりと)などの宗教的テキスト,《万葉集》の中の伝承歌謡などがあり,また沖縄の《おもろさうし》や,時代は下るがアイヌ民族の口誦叙事詩群〈ユーカラ〉も知られている。口承文芸
【西欧の詩】
 ひとくちに西欧の詩といっても,ギリシアからローマに至る古代のそれと,中世から現代に至るヨーロッパのそれとは,本来は別個のものと考えるべきだろう。…

【詩経】より

…孔子以来,儒家の経典とされた。諸国の民謡を集めた〈風〉,宮廷の音楽〈雅〉,宗廟の祭祀の楽歌〈頌〉の三部分から成る。〈風〉は,〈国風〉とも呼ばれ,周南・召南・邶(はい)・鄘(よう)・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳(ひん)の15国160編,〈雅〉は,小雅74編・大雅31編,〈頌〉は,周頌31編・魯頌4編・商頌5編を収める。…

※「風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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