精選版 日本国語大辞典 「食品」の意味・読み・例文・類語
しょく‐ひん【食品】
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人が食べるために直接使用できる、食用可能な状態のものをいう。食品を調理や加工などして、食べられるようにしたものの総称が食物である。また、食品の形態にすることのできる材料を食糧という。たとえば、収穫した米は食糧であるが、これを精米すれば食品となり、炊飯(すいはん)したものは、他のものとあわせ、食物とよぶことができる。ただ食物とよぶ範囲は、食糧、食品と比べ、あまりはっきりしていない。
[河野友美]
食品は、その材料となるものの種類、形態、あるいは自然品か合成品かといった違いにより、いくつかに分類することができる。またその分類法も、分類を用いる目的により各種のものがある。
(1)大別的分類 動物性食品、植物性食品、および合成食品
(2)動植物上の種類別分類 穀類、種実類、いも類、豆類、野菜類、キノコ類、果実類、魚貝類、獣鳥肉類、卵類、乳類、海藻類など
(3)食品成分表上の分類 日本食品標準成分表で用いている分類
(4)栄養学的分類 デンプン性食品、タンパク質性食品、脂肪性食品など
(5)加工分類 生鮮食品、加工食品
(6)生産形態別分類 農産食品、畜産食品、水産食品、あるいは天然品、養殖ものなど
(7)食習慣上の分類 主食類、副食類、嗜好(しこう)品類、調味料類など
(8)健康上の分類 健康食品、栄養補助食品、保健食品、純正食品、自然食品、無農薬食品、低エネルギー食品など
(9)加工形態別分類 醸造食品、冷凍食品、レトルト食品、乾燥食品、缶詰食品など
(10)調理形態別分類 インスタント食品、コンビニエンス食品、チルド食品、調理済み食品、キット食品など
(11)特殊目的上の分類 携帯食品、貯蔵食品、非常食品、救荒食品など
(12)その他特殊分類 コピー食品、ジャンク食品、合成食品、組立食品、スポーツ食品など
[河野友美]
多くの食品は、加工されて供給されることが多い。加工法には古来のものもあるが、新しい技術の進歩に伴って、従来あまり行われなかった加工法も多くとられるようになってきた。
食品の加工法としては、米などの搗精(とうせい)、小麦やライ麦などの製粉、つくった小麦粉を原料とした製麺(めん)、製パン、製菓などがある。また、トウモロコシ、いもなどからのデンプン製造、デンプンを使った製飴(せいたい)、糖類製造、さらにデンプンを原料に発酵法によるうま味調味料の製造といったものがある。一般的な加工法としては、酒、しょうゆ、みそ、酢などの醸造による製造、缶詰、瓶詰、乾燥、塩蔵などによる保存性食品の製造、冷凍、レトルト食品、魚肉のすり身を使用した練り製品の製造、ハム・ソーセージなどの風味づけとそれに保存性をもたせる薫製(くんせい)製造など、各種のものをあげることができる。
[河野友美]
食品は、生鮮食品の一部を含め、加工などによって保存が必要で、それにより安定供給が確保できる。保存方法には、生鮮食品では冷蔵・冷凍などの方法、加工によるものでは、脱水、殺菌したあと缶や瓶あるいはフィルムのパックなどに密封といった各種の方法がとられる。冷蔵では、野菜類を収穫後短時間のうちに5℃程度まで冷却し、数週間から数か月間保存が可能である。また、リンゴなど一部の果実では、二酸化炭素含量を多くした空気中で低温で貯蔵するCA貯蔵とよばれる方法などもあり、こうした方法だと1年近く保存が可能である。冷凍では、急速凍結法の発達や液化ガスによる超低温の利用で保存は1年以上可能となり、肉や魚などに利用されている。急速凍結して特別に低温保存をしたものは、解凍し、生鮮品として販売されることが多い。脱水では、急速凍結乾燥、低圧熱風乾燥、噴霧乾燥、天日乾燥など、各種の方法がとられる。乾燥したものは、保存中、成分の酸化が大きいので、缶などの容器に密封し、二酸化炭素や窒素ガスなどを入れて保存性を増す。また、通常の密封包装品では、脱酸素剤の入った小袋をともに封入し、中の酸素をなくして変化を防ぐ方法もとられるようになった。このほか防湿剤も封入することがある。殺菌、密封による保存は、缶詰、瓶詰、レトルト食品などがあげられる。食品は、そのままでは微生物による変化が大きいので、殺菌すれば保存性が増す。殺菌には、前述のものでは加熱殺菌が行われる。このほか、加熱すると変質するような食品の場合は、放射線の照射(ジャガイモなど)、燻蒸(くんじょう)(穀物など)も行われる。
[河野友美]
食品は、それぞれに特有の栄養的価値をもつので、どういう食品にはどの栄養成分がどれくらい含まれているかを知る必要がある。このために食品の成分の分析が行われる。ただし、食品は個々のものに成分のばらつきが大きい。産地、収穫期、品種、飼育法、加工法、保存状態などにより、成分はかなり大きく変動する。それゆえ標準となる成分が必要となるため、『五訂増補日本食品標準成分表』(2005・文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会編)が出されている。栄養調査の集計などはこの表を基準に行われる。また、食品は通常調理して食用に供するが、この調理中の成分変化もあるため、この点も記載されるようになった。
[河野友美]
食品のなかでも加工品については、内容の実質が伴わないもの、加工上とくに必要と思われない成分の添加、あるいは見かけだけのよさなどが優先されるというおそれがある。そのため一定の規格を法律で定め、それに合致したものにはマークをつけるような制度が必要である。もっとも中心となるものはJAS(ジャス)(日本農林規格)であって、これは「農林物資の内容表示の適正化に関する法律」により、審議決定される。この規格に合致し、認可を受けた食品には、JASマークをつけることが許される。このほか公正規約によるものは、公正の表示が行われる。また自主規格のある食品もあり、冷凍食品、乳製品などがその例である。
[河野友美]
食品は、生産されてから消費者の手に渡るまで、各種の中間組織を経ていく。これを食品の流通とよんでいる。流通は食品ごとに異なり、種類によっては特殊な経路をとるものもある。通常は、生産者→集荷団体(業者)→卸売業者(市場)→小売業者の順に食品が流れる。しかし、畜産品のように国の指定した検査を必要とする場合には、これに必要な経路をたどることもある。さらに流通段階で、温度管理が必要な、チルド食品、冷凍食品もある。流通にはほとんどの場合輸送を伴う。この輸送によるコストは無視できないものがあり、食品の形態、輸送手段、梱包(こんぽう)などにくふうが凝らされるようになった。以前は収穫地において消費される形態が強かったが、近代社会の発展とともに都市に人口が集中し、長距離輸送が食品流通の主体となった。そのため、生鮮食品も、輸送や保存上の条件に合致するような改良が行われている。とくに加工食品にして生鮮食品より付加価値を高めることは、前記のような条件下には非常に有利となり、これが加工食品の消費比率を高める原因になっているとも考えられる。
[河野友美]
食品は人の栄養補給上もっともたいせつなものである。もし、この食品が人に危害を及ぼすことがあっては、安定な社会生活が阻害される。そこで食品の安全性が重視されることになる。食品の安全性には、いくつかの要件が考えられる。つまり食品が衛生的で、栄養補給上有意義であるということである。なかでも、衛生的であることは食品にとってもっともたいせつなことで、食品が衛生的に安全に消費者の口に入るようにするため、法律によって守られている。それが食品衛生法である。食品衛生法は強制法で、日本に居住するすべての人がこれに従わねばならない義務がある。また、食品衛生法に定める規準になるように、農作物にあっては農薬の散布条件が、畜産物にあっては飼料や、疾病に対する薬剤投与の条件が、水産物にあっては養殖や、保存の条件が規制され、あるいは担当省庁によって指導されている。
[河野友美]
多数の国民が安心して日常生活を送るためには、食品がいつでも手に入ることが条件の一つである。そのためある程度の食品を保存しておかねばならない。とくに、日本で最重要視されている食品の一つである米は、年間を通じて安定供給が必要である。こういった食品の保存上生ずる問題として、食品の変化があげられる。たとえば、穀物では、虫害を防ぐため燻蒸が行われる。この際の燻蒸剤の残存などが問題になる。また長期の保存により、風味の低下なども生ずる。古米や古々米などの味が問題視されるのも、保存によるものである。また動物性食品のように冷凍保存を長期に行う場合も質的な変化は防止できない。ここでも味の低下の問題がおこる。しかし食品がつねに確保されることと、風味低下は、どこかで妥協せざるをえない。こういったことからも、食品の高度加工による低下風味のカバーが行われることになる。これは近代社会の避けて通れない点である。
[河野友美]
食品は、生鮮食品以外の多くが包装を必要とする。これは変質を防止し、また一定の量をまとめるために必要である。生鮮食品については、量販店などのように適当な単位で食品を陳列する場合、単位ごとの包装が必要となっている。食品を包装する際、その食品に適した包装材が必要である。多くの包装材はプラスチック類が利用されているが、そのほか、紙、アルミ箔(はく)なども広く用いられている。これらも食品に接触するので、食品に健康上有害な物質が移行することを避けなければならない。このため食品包装材についても、衛生的見地からの法的規制が行われている。
[河野友美]
『吉田勉編著、小田尚子・斎藤進・鈴木洋一・馬場修・尾藤宗弘・堀口恵子・森田英利著『食品学各論』(1999・三共出版)』▽『吉田泰治・田島真編『栄養科学シリーズNEXT 食料経済』(1999・講談社)』▽『河野友美編『新・食品事典』全14巻(1999・真珠書院)』▽『森一雄・赤羽義章・小垂真著『ニューライフ食品学――五訂日本食品標準成分表準拠』改訂版(2001・建帛社)』▽『食品総合研究所編『食品大百科事典』(2001・朝倉書店)』▽『清水俊雄著『食品安全の制度と科学』(2006・同文書院)』▽『國崎直道編著『食べ物と健康――食品の栄養成分と加工』(2006・同文書院)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…食べもの,すなわち食欲を満たし,生命を維持するために口から摂取するもの。食品,食糧,食料,食餌(しよくじ)などの類語があり,それらの概念の相違ははっきりしないが,それぞれ多少ニュアンスのちがう使い方がされている。食品の語は,食べものの語がかなり抽象的ないしは象徴的な意味をもつのに対して,明確に人間の摂食行為の対象となる素材の個々,あるいはその群や種類を表現する場合に使われる。…
※「食品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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