先天性もしくは後天性に食道の一部に狭窄を生じたものであり、先天性のものの多くは離乳期(生後6か月ごろ)以降になって初めて発見されることが多い。狭窄の診断は食道造影や内視鏡により行われる。狭窄の原因は、先天性では気管原基迷入型、繊維性狭窄、膜様狭窄に大きく分けられる。後天性食道狭窄としては食道腫瘍(しゅよう)(おもに食道癌(がん))によるものと瘢痕(はんこん)性によるものとがある。
瘢痕性狭窄の原因としては、(1)酸やアルカリなどの腐食性毒物を誤って、あるいは自殺目的で飲んだ場合、(2)逆流性食道炎、(3)手術後や内視鏡治療後の瘢痕性狭窄がある。腐食性毒物の嚥下(えんげ)による食道炎の治療においては、急性期と瘢痕が形成された慢性期とではまったく異なってくる。嚥下後比較的間もない急性期では、症状や全身状態の程度によるが、喉頭(こうとう)や咽頭(いんとう)の内視鏡による観察のほか、必要に応じて気管切開や気管内挿管による気道の確保、および誤嚥の防止を行う。また、瘢痕狭窄を予防するために、定期的な内視鏡的拡張術が必要になることもある。慢性期においては、狭窄の範囲が数センチメートル以下と比較的狭い場合はブジーによる拡張や電気メスによる切開が行われる。狭窄の範囲が広範でブジーによる拡張が困難な場合は食道切除や食道空置(くうち)によるバイパス手術が適応になることもある。なお、食道空置とは、食道を切除せず、ほかの消化管(胃、大腸、小腸など)を用いてバイパスする技法である。
癌性の狭窄に対しては、まず癌に対する治療(手術、抗がん剤、放射線など)が第一に考慮されるが、これらの治療が困難な場合、姑息(こそく)的な治療として食道ステントが留置されることがある。「姑息的な治療」とは、palliative therapyの日本語訳で「根治を目的とした治療ではなく、症状を改善し、クオリティ・オブ・ライフquality of life=QOL(生活の質)の向上を目的とする治療」を意味する医療用語であり、「症状緩和のための治療」ともいえる。患者の違和感や疼痛(とうつう)の強い上部食道、胃内容物の逆流が問題となる胃食道接合部などステント留置が適さない場合や、狭窄が強すぎてステント留置が不可能な場合には、経皮的に胃内に栄養を注入することを目的に胃瘻(いろう)を造設することがある。胃瘻造設は開腹下に造設する場合と、内視鏡的に造設する場合があるが、近年では内視鏡技術の進歩により内視鏡的に胃瘻を造設するPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy)が普及している。
[掛川暉夫・北川雄光]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…大きなものの場合は憩室摘除術が行われる。(9)食道狭窄 食道の一部が狭くなって,液体や食物の嚥下が困難になった状態。異物による狭窄,腫瘍による狭窄(食道癌,食道肉腫,食道筋腫など),ひきつれによる狭窄(食道炎,食道潰瘍,食道手術後など),外圧迫による狭窄(食道憩室,隣接臓器の疾患など),機能的狭窄(食道アカラシアなど)がある。…
※「食道狭窄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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