精選版 日本国語大辞典 「飴」の意味・読み・例文・類語
あめ【飴】
たがね【飴】
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菓子の一種。飴菓子のこと。飴は甘い意で、「あまめ」または「甘水(あまみ)」の約転ともいわれる。糯米(もちごめ)、糯アワ、トウモロコシなど、デンプンを含む原料を、麦芽に含まれるデンプン分解酵素のジアスターゼ(糖化酵素)で糖化させると、甘味と粘りのある食品、つまり飴ができる。具体的には、糯米1升(約1.8リットル)を柔らかく蒸し、人肌の温度に冷めたら、麦芽粉1合(約0.18リットル)と、同温の湯8合を加えてかき混ぜ、約5時間ねかせる。甘酒のようにどろりとしたら布袋で漉(こ)し、絞り汁を煮詰めれば水飴ができる。これを汁飴ともいう。水飴をさらに火にかけ、いっそう練って冷却したものが固飴(かたあめ)である。古名に飴を「たがね」とも称したのは、槌(つち)を振るって飴にたがねを打ち込むほど固かったからである。このようにして容器から飴をおこすところから、「おこし飴」の名もある。
[沢 史生]
菓子としての飴は、大まかに分類すれば、水飴か固飴かである。固飴は古代からの麦芽飴(さらし飴)のほか、細工飴に供された有平(あるへい)、朝鮮飴、翁(おきな)飴などの求肥(ぎゅうひ)飴、洋菓子に属するキャンディー(ドロップ、ボンボン、キャラメル、ヌガーなどの総称)類に分けられる。
[沢 史生]
『日本書紀』には、神武(じんむ)天皇が「われ、いままさに八十平瓫(やそひらか)(たくさんの平たい土器の皿)をもって、水無しに飴(たがね)をつくらん。飴成らば、われ必ず鋒刃(つわもの)の威(いきおい)を仮(か)らずして、坐(い)ながら天下を平げん」と天つ神に戦勝を祈願したとある。そうした固飴が上古に存在したかどうかはさだかでない。具体的に飴が記録されたのは奈良時代である。762年(天平宝字6)の『食物下帳』には、白米を原料として煮糖することが記されているが、この糖は今日の飴とみられる。もとより水飴であったことは、『延喜式(えんぎしき)』に「糖料、糯米一石、萌(もやし)小麦二斗、得三斗七升」と記されているのをみても明らかである。また『和名抄(わみょうしょう)』は飴について「米蘖(もやし)為之」と記しているので、10世紀初めには麦もやしも米もやしも使われていたようである。奈良・平安時代の飴は非常に高価で、間食としての菓子には回らず、もっぱら調味料、薬用であった。後代に「飴を舐(ねぶ)らす」が、まず喜ばせておいて欺く手段、あるいは買収手段の表現に用いられたのは、それほどにも飴が貴重であったからにほかならない。水飴の時代は長く、古代から戦国時代までたいした発展もなく続いた。ただ弘安(こうあん)年間(1278~1288)に豆飴(まめあめ)(後の洲浜(すはま))がつくられている。これは水飴と干し柿(がき)を煮て、冷ましたところへきな粉をあわせたものという。豆飴はきな粉飴の前身である。水飴の栄養は高く評価されてきた。諸大名が御用菓子司を任命したのは、単に折々の茶菓をつくらせるばかりが目的ではなく、合戦や籠城(ろうじょう)に際して、陣中糧食として飴を考えていたからだという。また会津若松(福島県)や、東海道の佐夜の中山(静岡県)には、子持ち幽霊が乳がわりに飴を買いにきた伝説がある。
[沢 史生]
(1)麦芽糖系 水飴の製法は前述のとおりだが、これに砂糖を加えると加熱中に赤みがかってくる。そのまま冷却したのが赤飴であるが、冷却する前に棒にひっかけて伸ばす作業を繰り返すと、飴に気泡が入り、白飴になる。いわゆるさらし飴(痰切(たんきり)飴ともいう)である。
(2)有平糖系 有平はポルトガル語のアルフェロアalfeloaから名づけられた。戦国時代末期に南蛮菓子として渡来した飴で、白砂糖に飴を加え、煮詰めて冷ましたものを棒状とし、花や果実などに細工する。
(3)求肥飴系 白玉粉を蒸し、白砂糖と水飴を加え、練り固める。しなやかな感触が特徴で、のちに上生菓子の材料に移行した。
(4)キャンディーcandy 素材は砂糖と水飴。この糖液を煮詰める温度により、ソフト・キャンディーとハード・キャンディーになる。また砂糖と水飴にゼラチン、寒天、バター、牛乳、香料、チョコレート、コーヒー、木の実、着色料を加え、さまざまなキャンディーがつくられる。
[沢 史生]
バター飴(北海道)、黄精(おうせい)飴(岩手県)、五郎兵衛飴(福島県)、梅干飴(東京)、高田飴(新潟県)、みすず飴(長野県)、日坂(にっさか)飴、茶飴(静岡県)、犬山げんこつ飴(愛知県)、甘甘棒(かんかんぼう)(岐阜県)、おこし飴(石川県)、吸坂(すいさか)飴(石川県)、御所飴(京都)、那智黒(なちぐろ)(和歌山県)、松魚(かつお)つぶ(高知県)、朝鮮飴(熊本県)、文旦(ぼんたん)飴(鹿児島県)など。
[沢 史生]
昭和初期に紙芝居屋がべっこう飴、水飴、さらし飴を売ったが飴と子供のつながりは深く長い。江戸時代から屋台を担いだ飴売り、頭上に藁(わら)製の輪を担ぎ、風車をこれに挿して、太鼓をたたきながらやってくる飴屋がおり、衣装は奇抜で、はでであった。また、ヨシの茎に白飴をつけ、空気を入れて膨らましながら、鋏(はさみ)でさまざまに花鳥、動物を細工する飴細工屋もあった。現代に残る風俗としては、七五三祝いの千歳(ちとせ)飴、長野県松本市の飴市などがある。
[沢 史生]
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…しかし,現在では砂糖を用いたキャンデー類や有平糖(あるへいとう)のようなものも,あめと呼ぶことが多い。中国では6世紀の《斉民要術》にすでにくわしい製法の記載があり,日本の文献では《神武紀》に飴(たがね)とあるのを初見とする。古くは餳,糖などの字も用いられ,《延喜式》には諸国から貢納されていたこと,平安京の西市に〈糖〉があって市販されていたこと,また,もち米1石,萌小麦(コムギのもやし)2斗を原料として糖3斗7升をつくったことなどが書かれている。…
※「飴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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