精選版 日本国語大辞典 「香」の意味・読み・例文・類語
こう カウ【香】
か【香】
かか・える かかへる【香】
きょう キャウ【香】
こり【香】
かざ【香】
かか・う かかふ【香】
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香料(こうりょう)のうちで固形香料を一般に香といい、加熱すると芳香を放つ物質である。これに2種類ある。一つは自然の樹木で、たとえばインドのマラバル地方に自生する高木ビャクダン(白檀)のごとき類と、埋れ木、たとえば沈(じん)とがある。他の一つは練香(ねりこう)と通称される線香の類である。後者は人為的に調製されるため、芳香を発散するのは当然であるが、前者の場合は、匂(にお)いが多様で、かならずしも万人向きとは限らない。スギやヒノキなどもよい匂いを発散する。そこで、香を香道のうえでよぶ場合には、匂いの種類を厳しく規定している。それは香道が匂いの鑑賞に焦点を求めているためである。芸術的価値の高いものでなければ香と認めない。日本人の優れた繊細な感覚に合致するものでなければならないのである。このようにして合格したものが沈香(じんこう)、すなわち伽羅(きゃら)である。ぴんからきりまであるが、たとえば名香「初音」などは最高級品の代表の一つとされている。そのため沈香を、かつての原産地名によって、匂いの良否の基準と定めている。伽羅、羅国(らこく)、真南蛮(まなんばん)、真那伽(まなか)の4段階がそれである。これに沈外(じんがい)として佐曽羅(さそら)と寸聞多羅(すもたら)を加え、六国(りっこく)と称し、香道で使用する香を限定したのである。
しかし17世紀の後半に至り、米川常白(よねかわじょうはく)が五味(ごみ)説を提唱するに及んでからのちは、これが基準として一般に認められている。五味説は、良質の伽羅が五味をもっているのに基づいて考案されたもので、五味とは、辛、甘、酸、苦、鹹(かん)をさすのである。たとえば、辛いたちをもつものは伽羅、甘くたつものは羅国だと判定する類をさすのである。したがって後世では、沈香は伽羅だけを意味する名称となってしまった。沈香は埋れ木の一種で、よく芳香を放ち、水中に投げ込むと沈むところからつけられた名称であり、その沈み方によって質の上下が決められる。すなわち、よく沈むものを上品(じょうぼん)、水中に漂うものを中品、水面に浮かぶものを下品(げぼん)という。沈がいかなる木であったかは不明で、定説がないので、香料関係者は沈香樹(じんこうじゅ)と名づけている。沈は学名をアクィラーリヤ・アガローカAquilaria agallochaという。
香という文字はつけられているが、薫物(たきもの)(合香(あわせごう)、練香)の材料中にみえる何々香とは、沈香の場合の香とは別である。たとえば乳香や安息香は現在成長している木の液体状の樹脂であり、麝香(じゃこう)や竜涎香(りゅうぜんこう)の類は動物の分泌物で、これらはそれ自体が芳香を放つものではなく、人為的に調製されて初めて香となるのである。薫物には草根木皮なんでもよいのである。その化学的処置のいかんによるのである。液体状では香水となり、固形状にすれば薫物や匂い袋が生まれる。したがってその製品は無数となるわけである。
香木の発見は、パミール高原のヒンドゥー人に始まるといわれ、インドに香がもたらされたとき、香気の精神浄化作用を仏教文化が取り入れた。僧侶(そうりょ)は塗香(ずこう)と称して自己の身体に粉末を塗り、ときには嚥下(えんげ)して用い、また焼香(しょうこう)と称して仏前に焚(た)き、敬虔(けいけん)の念を深めるのに利用し、さらには十種供養や五種供養のうちに加え、香華(こうげ)と並び称して花とともに仏供養の代表的な要素とした。また密教では、修法の種類によって香を区別し、それぞれを仏教教理に例えるほどに重要視したのである。
やがてこれがインドから分かれて、一つはエジプトに流れ、没薬(もつやく)や肉桂(にっけい)などの香は防腐・殺菌作用を有するので、紀元前1世紀ごろにはミイラの製造に利用された。エジプト文化がギリシア・ローマ時代になると、さらに需要が増加し、練香から、使いやすい液体の香水へと形態を変えていった。またキリスト教にも取り入れられ、典礼上、自然象徴の一つとして、キリスト教徒の熱心さや徳、神への祈願を表すために、神に香を捧(ささ)げ、祭式の荘厳さを倍加するために、撒香(さんこう)が行われるようになったのである。そしていま一つの流れは中国に入り、仏前焼香のほか、丁香(ちょうこう)や肉桂などは媚薬(びやく)としても用いられた。
このように古代世界各国で尊重された香が、日本には中国を経て仏教文化とともに6世紀ごろ紹介されたのである。最初は寺院で、仏前を清浄化するために供香(そなえこう)として用いられたが、8世紀ごろからは、上流社会で実用的方面にも使用するようになり、衣服や部屋などに香を焚きしめる風習が流行した。いわゆる空薫物(そらだきもの)の隆盛を出現したのである。そしてこの場合の薫物とは、主として沈香を粉末にしたものに、甲香や丁香をはじめ麝香を加えて調製したので、各自の好みに応じてその処方には相違があり、その相違が製品にでるのは当然のことである。その相違が、やがて薫物合(あわせ)として平安朝宮廷の優雅な遊びをつくりだしたのである。これが、薫物を用いずに香木を用いるようになると名香合(めいこうあわせ)とよばれ、15世紀ごろに流行したが、そのすぐあとからは、香合から組香(くみこう)が生まれ、以後現在まで香道の主要な地位を占めるのである。
[三條西公正]
『三條西公正著『組香の鑑賞』(1965・理想社)』▽『三條西公正著『香道』(1971・淡交社)』▽『北小路功光著『香道への招待』(1969・宝文館)』▽『一色梨郷著『香道のあゆみ』(1968・芦書房)』
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…香木を素材とする聞香(ぶんこう∥もんこう)の芸道を香道という。日本独自のもので他に類例をみない。…
※「香」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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