高札(読み)コウサツ

デジタル大辞泉 「高札」の意味・読み・例文・類語

こう‐さつ〔カウ‐〕【高札】

主に江戸時代法度はっと禁令、犯罪人の罪状などを記し、一般に告示するために町辻や広場などに高く掲げた板の札。明治6年(1873)廃止。たかふだ。
相手を敬ってその手紙をいう語。

たか‐ふだ【高札】

こうさつ(高札)
入札で最も値段の高いもの。

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精選版 日本国語大辞典 「高札」の意味・読み・例文・類語

こう‐さつカウ‥【高札】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 掟、条目、禁制などを板に書き、市場、町辻、追分、橋詰、渡し場など、人目につきやすい場所に掲げたもの。法を迅速に周知させるため作られたもので、すでに奈良末期からみられるが、江戸時代のものが特に有名。内容により、親子札、キリシタン札、毒薬札、駄賃札、火事場札、徒党札、抜荷札、浦高札などに分けられた。明治六年(一八七三)二月撤廃。制札。たかふだ。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. 高札<b>①</b>〈伊勢参宮名所図会〉
      高札〈伊勢参宮名所図会〉
    2. [初出の実例]「Cǒsat(カウサツ)。タカ フダ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    3. 「源の頼光、勅宣の御高札(カウサツ)に任せ」(出典:浄瑠璃嫗山姥(1712頃)五)
  3. 入札の中で価格の最も高いもの。たかふだ。
  4. 他人を敬って、その書簡をいう語。お手紙。
    1. [初出の実例]「高札畏悦候」(出典:実隆公記‐明応七年(1498)五月紙背(江南院龍霄書状))

高札の補助注記

の漢字の読みは「こうさつ」か「たかふだ」か確定できない。古辞書類を除いては、中世に「こうさつ」の確例は少なく、「たかふだ」が一般的だったと思われる。


たか‐ふだ【高札】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中世・近世で、禁制(きんぜい)法度(はっと)・掟書(おきてがき)・犯罪人の罪状などを記し、寺社の門前や人通りの多い場所に立てた板札。私事によるものもあった。立札。こうさつ。
    1. [初出の実例]「作者に鎌田政家と書きたる高札をこそ立てたりけれ」(出典:平治物語(1220頃か)下)
    2. 「其の高札(タカフダ)に『大塔宮の候人〈略〉昼強盗を致す間、誅する所也』とぞ書かれたりける」(出典:太平記(14C後)一二)
    3. 「おほくのなんじょをしのぎつつ、ではの国に入給ふ。是にたかふだの立て有」(出典:浄瑠璃・凱陣八島(1685頃)三)
  3. 入札価格の高いもの。こうさつ。
    1. [初出の実例]「普請奉行、与茂四郎を召れ、銘々高札におく書なし、その方安札に慥かなるおく書」(出典:浮世草子・棠大門屋敷(1705)一)

高札の補助注記

に関して、「高札」は「たかふだ」とも「こうさつ」とも読めるが、中世では古辞書類を除いては「こうさつ」の確例は少ない。→「こうさつ(高札)」の補注

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改訂新版 世界大百科事典 「高札」の意味・わかりやすい解説

高札 (こうさつ)

〈たかふだ〉ともよみ,立札ともいう。江戸時代に行われた法令公示の一方式。ヒノキ,梅などの板札に法令を墨書して高く掲げたもの。禁止,制限を内容とすることが多く,制札の称もある。この種の法令告知方法は,奈良時代末すでに存在したが,鎌倉~室町時代を通して発達し,江戸幕府も治政上大いに活用した。特定の地に特定の目的で立てられるものと,広く一般民衆に基本的な法令を知らせたものとに分けられ,前者の例に堀札,川越場札,関所札,浦高札などがある。後者では,1711年(正徳1)定められた5枚の高札が,幕末まで1世紀半の間維持されて著名である。これらは1682年(天和2)の高札を修正増補したもので,親子兄弟札,毒薬札,駄賃札,切支丹札,火付札からなり,封建倫理の教諭やキリシタン禁制など幕府民政の根幹が示されている。幕府は私領にもその掲示を強制した。ほかに新田高札や徒党札が重要な施策に出るものとして名高い。大名は独自に高札を立てることもあり,これを幕府の公儀高札と区別して,自分高札と呼ぶ。高札は通常,人々の目をひきやすい市街の中心の辻や出入口,橋詰めなどに掲げられ,〈札の辻〉の地名は今日も各地に残っている。江戸では日本橋南詰,常盤橋外,浅草橋内,筋違橋(すじかいばし)内,高輪(たかなわ)大木戸,半蔵門外の6ヵ所が大高札場とされ,さらに35ヵ所の高札場があった。高札場には矢来をめぐらし,あるいは石垣,芝土居を築くなどして,厳重な管理が行われた。高札は為政者の権威を象徴し,それ自体畏敬の対象であったのである。明治新政府も高札の制度を受け継ぎ,1868年(明治1)3月従来からの高札を取り除かせるとともに,永制たる定(さだめ)札として人倫札,徒党札,切支丹札を,暫時掲示すべき覚(おぼえ)札として外国交際札,脱国札を発した。いわゆる〈五榜(ごぼう)の掲示〉である。切支丹札には国外の批判が寄せられ,条約改正の障害とされるにおよんで,73年2月政府は高札法令の周知を理由に,高札一般を撤去した。
制札
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百科事典マイペディア 「高札」の意味・わかりやすい解説

高札【こうさつ】

法令などを公示する掲示板。制札(せいさつ)ともいう。古くは〈たかふだ〉といった。中世に犯罪事実の公示に用いることが多く,懸賞などをかけて通報・逮捕などの協力を求めた。また公示自体が社会的な制裁を意味した。江戸時代には立札(たてふだ)ともいった。禁止・制限を掲示することが多く,場所・目的を特定して立てられたものと,一般民衆に基本的な法令を知らせたものとがある。高札場は市街中心の人目をひきやすい辻,橋詰・出入口などに設けられた。1873年廃止。
→関連項目禁制五榜の掲示日本橋(地名)箱根関

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高札」の意味・わかりやすい解説

高札
こうさつ

立札(たてふだ)ともいう。法令伝達の一形式で、法度(はっと)、掟(おきて)、禁制を板面に墨書したもの。庶民に対し法の周知徹底、順法と基本法の強調を意図した。高札は古代から行われたが、とくに江戸時代に発達した。通常、幕府の高札を公儀高札、大名・旗本のものを自分高札という。高札のなかでも忠孝札、火付禁止札、切支丹(きりしたん)札、毒薬札、駄賃定(だちんさだめ)札を五札(ごさつ)または大高札(だいこうさつ)といい高札の中心となった。高札を掲示する所を高札場(ば)といい、都市や町村の要衝に設置した。明治政府も高札制度を踏襲したが、1873年(明治6)太政官(だじょうかん)布告をもって廃止された。

[神﨑彰利]

『三浦周行著『法制史の研究』(1918・岩波書店)』『服藤弘司著『幕府法と藩法』(1980・創文社)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「高札」の解説

高札
こうさつ

江戸時代,幕府や藩が法度類を民衆に周知させるため,横長の板札に墨書して高く掲示したもの。町の辻や橋のたもとなど人通りの多いところに建てられた。室町時代にも徳政・撰銭(えりぜに)などの札がみられた。江戸幕府の法度は早くから,撰銭令やキリシタンの取締令のほか法令の改正などが頻繁に高札で触れ出された。幕府の建てた高札は大名領内にも建てるよう要求され,その基本的なものが1711年(正徳元)に建てられた親子兄弟札・毒薬札・駄賃札・キリシタン札・火付札の5枚の高札で,これらは修正されることなく幕末期にいたった。このほか諸国浦々に建てられた浦高札や,特定の宿場・渡船場・関所にかぎり建てられた高札がある。1868年(明治元)明治新政府もいわゆる五榜(ごぼう)の掲示を建てたが,73年撤去。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高札」の意味・わかりやすい解説

高札
こうさつ

戦国時代以降,明治初期にいたるまで,広く行われた法令公布の一形式。明代の教民榜文 (ぼうぶん) の影響を受けて成った制度。法の周知徹底,基本法の強調,告訴の奨励などの機能において,すぐれた点が認められ,為政者によって重んじられた。江戸期においては,親子兄弟札,切支丹札,徒党札などが,各町村に立てられ,また,浦方には,諸国浦札が掲げられていた。江戸市中の高札場は,日本橋をはじめとして,6ヵ所にあり,「札の辻」といわれる地名は,今も残されている。明治政府は,前代の制を受継ぎいわゆる「五榜」を中心とする高札を多く立てたが,それらは,1873年に,その大半が撤去され,残されたものも,75年にはまったく姿を消した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「高札」の解説

高札
こうさつ

法度・掟書・犯罪人の罪状などを板書し,交通量の多い市場や辻に立てた制札
立札ともいう。中世末期から明治初期まで用いられ,封建支配者が庶民に法令を徹底させることを目的とした。江戸時代に最も盛ん。1873(明治6)年廃止された。

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世界大百科事典(旧版)内の高札の言及

【高札】より

…この種の法令告知方法は,奈良時代末すでに存在したが,鎌倉~室町時代を通して発達し,江戸幕府も治政上大いに活用した。特定の地に特定の目的で立てられるものと,広く一般民衆に基本的な法令を知らせたものとに分けられ,前者の例に堀札,川越場札,関所札,浦高札などがある。後者では,1711年(正徳1)定められた5枚の高札が,幕末まで1世紀半の間維持されて著名である。…

【御触書集成】より

…狭い範囲の人や役所にあてられたものを,とくに御達(おたつし)という。高札(こうさつ)も御触書の一種と見てよい。御触書は老中,若年寄の合議体である御用部屋で方針を定め,奥右筆組頭が調査,起案し,将軍の裁可によって制定法となる。…

【強訴】より

…順法的な訴訟もふえ,代表越訴も少なくならなかったが,18世紀後半以降は激しい全藩的強訴が農民闘争の中心となり,諸藩の政策の変更を迫った。幕府は70年(明和7)4月,全国に高札を立てさせ,そのなかで〈よろしからざる事に百姓大勢申合〉せることを徒党,〈徒党して強いて願い事企〉てることを強訴と規定し,褒賞を約して訴人をすすめた。多数者の行動である強訴では頭取と呼ばれる指導者が活躍し,刑死するとひそかにまつられ,義民となった。…

※「高札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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