さめ【鮫】
[1] 〘名〙
① 軟骨魚綱のうち、エイ類を除いたものの
総称。
体形は
紡錘形または延長形で、骨格は軟骨からなる。体表は歯とよく似た構造をもつ皮歯または
楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる
うろこでおおわれ、ざらざらするものが多い。一般に吻
(ふん)はとがり、口は体の下面に開き、歯が鋭い。
鰓孔(さいこう)は体側に五~七対ある。大きさは全長約二〇センチメートルの
ツラナガコビトザメから一八メートルに達する
ジンベイザメまで種類によって異なり、大形種を
フカと呼ぶこともある。体内受精で、
卵生、
卵胎生、
胎生などがある。一部の種は凶暴で、
ホオジロザメなど人を襲うものもある。臀びれの有無や鰓孔の数、歯の形態などによって分類される。暖・熱帯の海洋に多く分布。ふつう肉はかまぼこの材料に、
ひれは乾燥して中華料理の材料に、皮は研磨用の
やすりなどに利用。《季・冬》
※出雲風土記(733)嶋根「凡て北の海に捕るところの雑
(くさぐさ)の物は、志毗、
(ふぐ)、
沙魚(サめ)、
烏賊」
※太平記(14C後)三三「只今為立てたる鎧一縮に、鮫(サメ)懸けたる白太刀」
※雑俳・軽口頓作(1709)「うれにくい・またもどったがさめかいの」
[2]
詩集。七編。
金子光晴作。昭和一二年(
一九三七)刊。日中戦争前後の
日本の軍国主義的弾圧の中で、
国家権力に対する抵抗精神を
高度の象徴的
手法によって示した詩集。
[
語誌]
生命力が強く、凶暴な
性質が畏怖されるところから、古来、霊的な存在と認められてきた。
上代の
文献に見える
ワニは多く鮫を指したといわれる。現代日本語でも、方言で鮫をワニと称する地域(
島根県・兵庫県但馬)がある。
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デジタル大辞泉
「鮫」の意味・読み・例文・類語
さめ【×鮫】
サメ目の軟骨魚の総称。体は細長く、背びれは通常2基あり、尾びれは上葉が長い。口は頭の下面にあり、えらあなは体側に5~7対並ぶ。歯は常に新しいものが生えかわる。動物食。卵胎生が多いが、卵生・胎生のものもある。大半は海産で、現生種は250種、日本近海にいるのはウバザメ・オナガザメ・ツノザメ・ノコギリザメなど150種。肉は練り製品の原料に、ひれは中華料理に用いられる。ふか。わに。《季 冬》「ふなびとら―など雪にかき下ろす/楸邨」
[補説]書名別項。→鮫
[類語]鱶・甚平鮫・鋸鮫・青鮫・頰白鮫・葦切鮫・小判鮫
さめ【鮫】[書名]
金子光晴の詩。また、それを標題作とする詩集。詩集は昭和12年(1937)に発表で、他に「おつとせい」「どぶ」などの詩を収める。当時の日本の全体主義的社会を鋭く批判した作品。
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さめ【鮫】
金子光晴の詩集。1937年人民社刊。〈おつとせい〉〈泡〉〈塀〉〈どぶ〉〈灯台〉〈紋〉〈鮫〉の7編を収録。1928年から5年間,光晴は,東南アジアを経てヨーロッパまで放浪旅行し,植民地の犠牲のもとに繁栄する西欧の実態を見,それに追随しようとする日本のあせり,軍国主義の圧政を見た。そこで,詩集《こがね虫》(1923)の耽美とは一転して,戦争へと傾斜する暗い現実を批判的にえぐり出そうとした。〈おつとせい〉で,内部と外部の世界を同時的に把握し,自己の位置を明確にしながら,〈灯台〉で天皇制権力機構を,〈鮫〉で世界の帝国主義国を象徴的方法であばいている。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
鮫
さめ
青森県南東部,八戸市の一地区。旧村名で,1929年八戸に合併。北海道南東海域から三陸沖にわたる広大な漁場を控え,漁業の根拠地として漁船の出入りが激しい。大規模な魚市場や冷凍工場がある。ウミネコの島として有名な蕪島がある。
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鮫
真継伸彦の小説。1963年、第2回文藝賞中・短編部門受賞。
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鮫 (サメ)
動物。軟骨魚綱,板鰓亜綱に属する,エイ目を除く魚類の総称
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報