鯱張る(読み)シャチホコバル

デジタル大辞泉 「鯱張る」の意味・読み・例文・類語

しゃちほこ‐ば・る【×鯱張る】

[動ラ五(四)]
鯱のようにいかめしく構えた態度をとる。しゃちこばる。しゃっちょこばる。「―・って訓辞を垂れる」
緊張してかたくなる。しゃちこばる。しゃっちょこばる。「―・ってお辞儀をする」
[類語]かしこまる畏れる謹む固くなる・身も縮む・縮こまる小さくなる真面目腐る恐恐恐懼きょうく恐縮有り難いかたじけないうれしいもったいないおそれ多い幸甚恐れ入る痛み入る心苦しい身に余る過分身の縮む思い畏怖

しゃち‐ば・る【×鯱張る】

[動ラ四]しゃちほこばる」に同じ。
我等はあとにと―・って居た」〈浄・忠臣蔵

しゃっちょこ‐ば・る【×鯱張る】

[動ラ五(四)]しゃちほこばる」の音変化。「あまり―・らずに楽にしなさい」

しゃちこ‐ば・る【×鯱張る】

[動ラ五(四)]しゃちほこばる」の音変化。「緊張して―・る」

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精選版 日本国語大辞典 「鯱張る」の意味・読み・例文・類語

しゃちこ‐ば・る【鯱張】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 ( 「さしこわる(差強)」の変化した語か )
  2. いかめしく構える。威厳をつくる。いばって見せる。しゃちほこばる。しゃちばる。
    1. [初出の実例]「小人にしたがうて居よかしと思へども、しゃちこはっていやぢゃと思ふ心があるぞ」(出典:京大二十冊本毛詩抄(1535頃)二)
    2. 「厳しいお巡りさんがしゃちこばって護衛する」(出典:夢見草(1970)〈加賀乙彦〉)
  3. 緊張してかたくなる。からだをこわばらせる。
    1. [初出の実例]「はらにてのりたちがしたやら、しゃちこばり、目を見つめ、すでにあやうき所なり」(出典:咄本・軽口出宝台(1719)一)
  4. 物がかたくなる。こわばる。
    1. [初出の実例]「其木像見せさっしゃれ。ヲヲしゃちこばった荒木作り」(出典:浄瑠璃・菅原伝授手習鑑(1746)二)

鯱張るの語誌

( 1 )シャチホコ‐バル(鯱張)の転とする説があるが、用例の年代や各地の方言形などから、シャチホコバルはシャチコバルよりも新しい語形であり、考えにくい。中世の口語資料に見えるサシ‐コハル(差強)がもとの形であると考えられる。
( 2 )一方、シャチは硬直する意の動詞「しゃつ」の連用形とする見方もある。
( 3 )シャチ‐コハルのコハル(強)がコバルに変化すると、シャチ‐バルなどへの類推からバル(張)が意識されシャチコ‐バルと異分析を生じ、さらにシャチを鯱とする語源解釈からシャチホコ‐バル、シャッチョコ‐バル等が生まれたと思われる。


しゃち‐ば・る【鯱張】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙
  2. しゃちこばる(鯱張)
    1. [初出の実例]「相如も犢鼻をといて、高蓋駟馬で蜀へかへるぞ。是も皆銭のする処ぞ。しゃちはった事をかいたぞ」(出典:寛永刊本蒙求抄(1529頃)三)
  3. しゃちこばる(鯱張)
    1. [初出の実例]「糊つくる苔の衣もいかなれや〈西花〉 坐禅のとこにしゃちはってゐる〈直成〉」(出典:俳諧・天満千句(1676)八)
  4. でしゃばる。さし出る。〔志不可起(1727)〕

しゃちほこ‐ば・る【鯱張】

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙しゃちこばる(鯱張)
    1. [初出の実例]「『賢臣は二君に事(つか)へず』抔と云って鯱鉾張(シャチホコバッ)てて」(出典落語・お祭佐七(1890)〈禽語楼小さん〉)

しゃっちょこ‐ば・る【鯱張】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 「しゃちほこばる(鯱張)」の変化した語。〔東京語辞典(1917)〕
    1. [初出の実例]「両手をテーブルの角へ突いて、変に鯱鉾張(シャッチョコバ)った様子をしながら」(出典:彼と彼の内臓(1927)〈江口渙〉)

しゃっちこ‐ば・る【鯱張】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 「しゃちこばる(鯱張)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「何か体をぎくしゃくとしゃっちこ張(バラ)せて入来る様子」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)初)

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