日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳳来寺田楽」の意味・わかりやすい解説
鳳来寺田楽
ほうらいじでんがく
愛知県の鳳来寺新城(しんしろ)市に伝わる修正会(しゅしょうえ)の延年(えんねん)の芸能。以前は正月3日と14日に行われていたが、いまは3日のみに行う。演者は鳳来寺山下の東西両郷の住人グループで、総勢25人。芸能は境内に設置の田楽堂で、寺院の鎮守、本堂、常行(じょうぎょう)堂に捧(ささ)げる次第を演じるが、演目には田楽のほかに呪師(じゅし)、翁猿楽(おきなさるがく)、万歳楽(まんざいらく)、田遊(たあそび)などが含まれる。田楽は8人編成で、鼓打(つづみうち)の舞、編木(びんざさら)役の舞、総田楽、ろん舞などがある。鳳来寺の中世の修正会と延年の史料は失われたが、東海道で有名な古寺のことであり、その起源は鎌倉期ごろにさかのぼるとみることができる。なお鳳来寺田楽は、三河(みかわ)三田楽と称される新城市黒沢の田楽(1月6日)、北設楽郡設楽町田峰(だみね)の田楽(2月11日)とともに、三河の田楽として国の重要無形民俗文化財に指定されている。
[新井恒易]