日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳳来」の意味・わかりやすい解説
鳳来
ほうらい
愛知県東部、南設楽郡(みなみしたらぐん)にあった旧町名(鳳来町(ちょう))。現在は新城(しんしろ)市の東部と北部を広く占める。1956年(昭和31)大野町と七郷(ななさと)、鳳来寺、長篠(ながしの)の3村が合併して鳳来町と改称。同年三輪村の一部、海老(えび)町、山吉田村、新城(しんしろ)町の一部を編入。2005年(平成17)新城市に合併。JR飯田線(いいだせん)、国道151号、257号が通じる。豊川(とよがわ)上流(寒狭(かんさ)川)と宇連川(うれがわ)の流域に位置する山村で、旧町域の90%以上が山林である。林業が盛んで、三河材を産する。伝統産業に硯(すずり)がある。霊峰鳳来寺山を中心に、渓谷美と史跡・名勝に富み、天竜奥三河国定公園の観光拠点である。国の名勝・天然記念物の鳳来寺山(695メートル)は中腹に鳳来寺、東照宮や自然科学博物館があり、湯谷(ゆや)温泉からパークウェーも通じている。宇連川と寒狭川の合流点近くに長篠の戦いで知られる長篠城跡(国史跡)があり、史跡保存館もつくられている。東部に国指定名勝・天然記念物の阿寺の七滝(あてらのななたき)、乳岩(ちいわ)および乳岩峡があり、ほかに天然記念物馬背岩(うまのせいわ)、黄柳野(つげの)ツゲ自生地がある。国の重要無形民俗文化財として黒沢田楽(でんがく)、鳳来寺田楽、選択無形民俗文化財として設楽のシカウチ行事などがある。
[伊藤郷平]
『『鳳来町誌』全7冊(1967~2003・鳳来町)』