脊椎(せきつい)動物において、意志によって行われる運動を随意運動といい、骨格筋にみられるが、この障害を麻痺とよぶ。麻痺はその程度によって完全麻痺と不全麻痺とに分類されるほか、その部位によって、たとえば一側の上下肢におこれば片(へん)麻痺、両側の上肢または下肢に対称的におこれば対(つい)麻痺などとよばれる。随意運動は、大脳皮質運動領から錐体(すいたい)路を経て、脳神経核あるいは脊髄前角細胞を介して、末梢(まっしょう)神経により骨格筋に刺激が伝達されておこるものである。このため、麻痺はまた、上部の障害によって筋緊張の亢進(こうしん)、深部反射の亢進を伴う痙性(けいせい)麻痺と、脳神経核あるいは脊髄前角細胞、およびそれより末梢(つまり下部)の障害によって筋緊張の減退、反射の減弱、消失を伴う弛緩(しかん)性麻痺とが区別されており、麻痺の状態により障害部位の推測が可能である。麻痺がある場合、臨床的には、握力および関節の屈伸力などの筋肉の脱力状態と、その部の体位、姿勢の異常を観察する必要がある。小児麻痺といわれるポリオは、ウイルス感染による急性灰白脊髄炎で、脊髄前角細胞の病変による弛緩性麻痺を特徴とするが、発育しつつある脳組織が障害された後遺症としておこり、知的障害、けいれんなどを合併する脳性麻痺は痙性麻痺の型をとる。なお、神経路の障害以外に、筋自体や神経筋接合部の障害、またはヒステリーによっても麻痺をおこすことがある。さらに、進行麻痺という用語があるが、これは神経梅毒による認知症を主症状とする麻痺性痴呆(ちほう)と同意語であり、振戦麻痺は老人脳の黒質におこる変性病変に由来する強剛と、ふるえを主徴とするパーキンソン病のことである。
[渡辺 裕]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
少子化とは、出生率の低下に伴って、将来の人口が長期的に減少する現象をさす。日本の出生率は、第二次世界大戦後、継続的に低下し、すでに先進国のうちでも低い水準となっている。出生率の低下は、直接には人々の意...
11/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/26 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典を更新
10/19 デジタル大辞泉プラスを更新
10/19 デジタル大辞泉を更新
10/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
9/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新