改訂新版 世界大百科事典 「4Hクラブ」の意味・わかりやすい解説
4Hクラブ (よんエッチクラブ)
農村の青少年が地域社会において交流と親睦をはかりながら,農業の生産技術や経営を学ぶとともにひろく生活上の課題を解決する力を養うことを目的としてつくられた学習グループである。4Hとは,head(頭),hand(手),heart(心),health(健康)の頭文字をとったもので,活動の目標を象徴している。農業普及事業の父として知られているアメリカ人ナップSeaman Asahel Knapp(1833-1911)が1907-08年ころに始めた農業研究クラブを母体として生まれ,欧米はもとより第2次大戦後はアジア諸国にまで普及した。日本では1948年にアメリカを範とする農業改良普及事業が発足したさい,その普及員や生活改良普及員などの指導のもとに育成がはかられた。名称は4Hクラブのほか,4Kクラブまたは若草会など必ずしも統一されていない。会員もアメリカなどでは20歳未満に限定されているのに対し,15~16歳から26~27歳までの青少年で構成されている。作物の病虫害防除,土壌調査,新品種・農薬・肥料の試作試用,衣食住の改善などの課題に会員の個人プロジェクトあるいはクラブの共同プロジェクトとして取り組んでいる。そうした日常活動のほか,見学旅行,夏季キャンプ,共進会などの行事に加え,年2回(春・夏)の研究大会を開催して技術交換などの交流を行っている。青年団とならぶ青少年活動であったが,青少年の就職離村,脱農家とともに会員数の減少と老齢化が著しく,活動内容も多様化してきたため,79年全国組織であった社団法人日本4H協会は解散し,現在は全国農村青少年教育振興会に全国農業青年クラブ連絡協議会として事務局を設けている。
執筆者:島田 修一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報