知恵蔵 「DTCP-IP」の解説
DTCP-IP
映像などのコンテンツは、放送を中心に「著作権保護技術」によってコピー防止策が施されることが多くなっている。だが、「機器内」では著作権保護技術でコピー防止が行われていても、家庭内ネットワークに接続した際や、ディスプレイ機器と接続した際の「経路」が保護されていないと、そこからコンテンツが流出し、著作権保護が正常に働かない、ということになる。それぞれの機器が「同じ著作権保護技術」を採用していれば、「経路」での流出を防ぐのは容易だが、パソコンとテレビ、ビデオレコーダーなど、様々な機器で「まったく同じ著作権保護技術」を使うのは現実的に不可能であり、うまくいっていない。
そこで「現実的な解決策」として登場したのが、DTCP-IPである。この技術は、IPネットワーク上でデータを送信する際に「著作権保護のパイプ」で守って伝送するもの。送信中のデータそのものは、著作権保護が行われていてもいなくてもかまわないため、互換性を維持するのが容易となる。
DTCP-IPの前身であるDTCPは、元々はインテル・日立・パナソニック・ソニー・東芝の5社が中心となって1998年に策定したものだが、その後、家庭内ネットワーク規格「DLNA」で使われることになり、再び脚光を浴びることになった。日本では、デジタル放送の「家庭内LANによる共有のための著作権保護技術」として利用可能であると、社団法人電波産業会(ARIB)が認可したことが、活用の大きな引き金となった。現在、デジタル放送の家庭内LAN共有機能を持つビデオレコーダーやパソコンのすべてで、DTCP-IPが利用されている。
なお、2009年中にマイクロソフトが発売を予定している新OS「Windows7」は、パソコン用OSとしては初めて、標準でDTCP-IPによる著作権保護技術が搭載されることになっている。
(西田宗千佳 フリージャーナリスト / 2009年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報