〈善きサマリア人〉の法(読み)よきサマリアびとのほう

百科事典マイペディア 「〈善きサマリア人〉の法」の意味・わかりやすい解説

〈善きサマリア人〉の法【よきサマリアびとのほう】

近隣者間や〈隣人愛〉的関係に関わる特定の道徳義務遂行を促進することを目的として制定される政策。Good-Samaritan-Lawの訳語。〈善きサマリア人〉とは,困っている人に同情して援助する者を言う(新約聖書ルカによる福音書》に由来)。コモン・ローのもとで英米において発展した。例えば,近所で児童虐待が行われているらしいことを知りながら当局に通報しない近隣者や,死の危険に瀕している者を救助することを怠った者などに対する罰則や損害賠償請求を定める法規など。広い意味では,特定の行為をした者に対して一定の金銭的・社会的報償などを与えるというタイプの政策をも含む。プライバシーの権利との抵触や,法律と道徳の関係という法哲学的な根本問題にも関わり,特に最近では児童福祉法上の要保護児童発見者の通告義務強化論の是非が論議の対象となっている。→遺棄罪

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