御府内備考(読み)ごふないびこう

日本歴史地名大系 「御府内備考」の解説

御府内備考
ごふないびこう

一四五巻 三島政行編

成立 文政一二年

写本 東京国立博物館(一九一冊)・都立中央図書館(草稿、四冊)

解説 江戸幕府官撰の江戸の地誌。幕府が文政九年に三島政行らに命じて「御府内風土記」を編纂するための参考資料としてまとめさせたもの。「御府内風土記」は明治五年の皇居火災焼失本書はその難を免れた。江戸の歴史や各町の沿革および概要町方からの書上などをもとに記されている。ただし、曲輪内・下町辺りの町は掲載されない。

活字本 大日本地誌大系一―六(正編、雄山閣)

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「御府内備考」の意味・わかりやすい解説

御府内備考
ごふないびこう

江戸幕府が編集した江戸の地誌。1826年(文政9)幕府は『御府内風土記(ふどき)』の編集を開始し、書院番士三島六郎政行を主任として、29年成稿した。この風土記は1872年(明治5)の皇居火災で焼失してしまったが、編纂(へんさん)の備考として整理された資料集が『御府内備考』として残された。正編は145巻と付図23からなり、総説に始まり、地勢や町割、江戸城内外の沿革、名所旧跡などが記されている。これらは主として江戸町方の書上げによって編集された。続編は神谷政順編で147巻、付録1巻からなり、江戸府内の寺社縁起をまとめたものである。江戸の地誌を知るうえでの基本的史料である。『大日本地誌大系』に正編を収める。

[吉原健一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御府内備考」の意味・わかりやすい解説

御府内備考
ごふないびこう

江戸時代後期における江戸市中の地誌。正編 145巻,後編 147巻。文政9 (1826) 年,幕府は『御府内風土記』の編纂を三島政行に命じ,同 12年に完成させたが,明治5 (72) 年,皇居の火災で焼失。そのとき焼け残った編纂時の資料をもとに集成されたのが本書である。江戸城の沿革や市街の名所旧跡,神社,寺院などの記事は,文政期 (24~30) の江戸を知る貴重な史料。正編のみ『大日本地誌大系』所収

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世界大百科事典(旧版)内の御府内備考の言及

【地誌】より

… 幕府官撰の地誌は後期に下り,大学頭林述斎の建議により,彼が総裁となって昌平坂学問所に地誌編修取調所を置き,地誌を収集して《編修地誌備用典籍解題》を作成し,間宮士信(ことのぶ)ら40人が武蔵国各郡を分担して1810年(文化7)起稿,28年(文政11)完成し,《新編武蔵風土記稿》として30年幕府に献上した。これから江戸府内をはずし別に《御府内風土記》を編纂したが焼失し,収集資料を整理して《御府内備考》として出版した。ついで《新編相模国風土記》編纂の命があり,41年(天保12)献呈した(《新編相模国風土記稿》)。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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