…記録映画作家。軍国主義一色の日本の戦時下で,陸軍省の依頼と後援による《上海》(1938),《戦ふ兵隊》(1939)で,うわべは戦意昂揚をうたいながら,〈戦争と生命の悲痛な関係の実証だけ〉を描いて反戦,反骨の姿勢を貫いた。《戦ふ兵隊》は公開禁止になり,亀井は逮捕,投獄された。…
…また,ロマン・カルメーンの《戦うレニングラード》(1942),レオニード・ワルラーモフの《スターリングラード》(1943)というニュース映画を編集したもの2本と,ドブジェンコの《ウクライナの勝利》(1943‐45)のような長編ドキュメンタリーもつくられた。 日本では,日中戦争が泥沼化した1938年に,前線部隊と行動をともにしながら撮影取材を行った亀井文夫の《戦ふ兵隊》が,陸軍省情報部の後援で製作されたにもかかわらず,その〈生命の詩をうたう〉反戦的要素が濃厚すぎて軍当局から公開禁止にされ,以後,40年代に入ると,侵略戦争の激化とともに,〈国民総力戦への戦意昂揚,一億玉砕へと民衆を追い込む宣伝扇動の手段として記録映画は利用された。あらゆる映画は戦争遂行のためにのみつくられた〉(野田真吉《日本ドキュメンタリー映画全史》)。…
※「戦ふ兵隊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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