がんもどき(医学)(読み)がんもどき

百科事典マイペディア 「がんもどき(医学)」の意味・わかりやすい解説

がんもどき(医学)【がんもどき】

(がん)細胞と似た形をしながら,じつは本当の癌ではなく,転移をしない病変のこと。1996年に発行された《患者よ,癌と闘うな》の著者・近藤誠(慶応大学医学部放射線科講師)が同書のなかでこの理論を展開した。 癌の診断は,X線撮影やCTスキャンなどの画像診断をへて,細胞診や生検(バイオプシー)によって病理医顕微鏡で細胞を観察して,最終的に判断する。しかし,顕微鏡では遺伝子まではわからず,転移する可能性を確定できない。したがって,細胞の形によって病理医の経験や推測で診断するが,その基準には各病理医によって差がある。 近藤によれば,早期癌と診断される病変に〈がんもどき〉がまぎれ込んでいることが多い。この根拠に,近藤は〈乳癌の早期発見が増えているにもかかわらず,死亡率は変わらない〉とするカナダの統計学者マッキノンの調査をあげる。〈つまり,早期発見ではがんもどきの発見が増えているだけ。ヘリカルCTなど検査機器の進歩で早期発見が増えたことで,無駄な手術が多くなっている〉と主張して,大きな議論を呼んだ。
→関連項目上皮内癌

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