つぶれ百姓(読み)つぶれびゃくしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「つぶれ百姓」の意味・わかりやすい解説

つぶれ百姓
つぶれびゃくしょう

江戸時代の農民で本来は本百姓(ほんびゃくしょう)であったが、年貢増徴凶作飢饉(ききん)、商品経済の展開などにより破産してその経営を維持できなくなった者をいう。潰百姓、禿百姓とも書き、倒れ百姓ともいう。江戸幕府の法令では、すでに17世紀前半の慶安御触書(けいあんのおふれがき)などでもこれを問題にしているが、18世紀中ごろより各地域において多く発生するようになり、支配者としてもその防止や救済が大きな問題となった。つぶれ百姓は、小作人や日傭取(ひようとり)として村落に残る者もあったが、その多くは奉公人や浮浪人として宿や都市に流入し、都市下層民となり、都市の社会問題の原因ともなった。一方農村では、彼らの放棄した土地が荒れ地となり、その数が増加するにしたがって一村過半が荒れ地となる場合もあり、農村荒廃の原因となった。幕府の寛政(かんせい)の改革や天保(てんぽう)の改革あるいは諸藩藩政改革にみられるように、支配者は、都市への移住の禁止、帰農令、人返(ひとかえし)令による都市貧民の帰村政策をとるとともに、農民経営の助成、年貢の減免などを行って、再発防止と農民経営の維持・安定を図ることに努めた。しかし農民経営の維持にはかならずしも成功せず、つぶれ百姓の発生と農民の出奔を防ぐことはできなかった。

[上杉允彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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