日本大百科全書(ニッポニカ) 「つる」の意味・わかりやすい解説
つる
つる / 蔓
細長く伸びて、それ自体の力で立たない茎をいう。つるには、他物に巻きついて高いところまで伸びる巻きつき茎(フジ、アサガオ)、巻きひげ・刺(とげ)・付着根などを出して他物に捕まって高いところまで伸びるよじ登り茎(ブドウ、ジャケツイバラ、キヅタ)、および地表面に沿って伸びる茎(サツマイモ、スベリヒユ)がある。
つるをもつ植物を「つる植物」というが、この語は、巻きつき茎をもつ「巻きつき植物」とよじ登り茎をもつ「よじ登り植物」だけをさすのが普通である。この場合は、形態的な類似性だけでなく、巻きつかれた、あるいはよじ登られた植物が光を遮られるなどの生態学的な現象にも注意が払われている。なお、木本性のつる植物を藤本(とうほん)植物とよぶことがある。
つるは、植物学のうえで明確に定義された語ではないため、地表面に沿って伸びるものを含めるか否か、含めるとしても途中から発根するもの(シバ)や先端に近い部分が立ち上がるもの(ツルネコノメソウ)を除外するか否か、また逆に、地下にあるストロン(走出枝)までも含めるか否かなどについてはかならずしも統一されていない。しかし、よじ登り植物が他物に捕まる手段の一つである巻きひげのことを日常的につるとよぶことがあるが、植物学上は巻きひげとつるとは区別される。
[福田泰二]