デジタル大辞泉
「てむ」の意味・読み・例文・類語
て◦む
[連語]《完了の助動詞「つ」の未然形+推量の助動詞「む」》
1 推量を強調して表す。きっと…だろう。…にちがいない。
「秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを過ぐし―◦むとか」〈万・四三一八〉
2 意志・希望を強調して表す。必ず…しよう。…てしまおう。
「世にふればうさこそまされみ吉野の岩のかけ道踏みならし―◦む」〈古今・雑下〉
3 可能の推量を強調して表す。…することができよう。
「春日野のとぶ火の野守出でて見よいまいくかありて若菜摘み―◦む」〈古今・春上〉
4 適当・当然を強調して表す。…てしまうのがよい。…のはずだ。
「心づきなき事あらん折は、なかなかその由をも言ひ―◦ん」〈徒然・一七〇〉
5 (多く「てむや」の形で)
㋐相手を勧誘する意を表す。…てくれないか。…たらどうだ。
「ここにてはぐくみ給ひ―◦むや」〈源・松風〉
㋑(多く「まさに」と呼応して)反語の意を表す。どうして…しようか。…しはしない。
「内内の御心清うおはすとも、かくまで言ひつる法師ばら、よからぬ童べなどはまさに言ひ残し―◦むや」〈源・夕霧〉
[補説]5は文末に用いられる。5㋑は漢文訓読からの語法。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
て‐・む
(完了の助動詞「つ」の未然形に推量の助動詞「む」の付いたもの)
①
話し手の強い意志や
決心を表わす。…してしまおう。きっと…しよう。
※仏足石歌(753頃)「この御足跡を 尋ね求めて 善き人の 坐す国には 我も参(まゐ)弖牟(テム) 諸々を率て」
※土左(935頃)承平五年一月一七日「黒き雲にはかにいできぬ。風ふきぬべし。
御船かへ
してん」
② 未来への予期、予想、推量を強調的に表わす。きっと…するだろう。確かに…だろう。
※古事記(712)下・歌謡「笹葉に 打つや霰の たしだしに 率寝弖牟(テム)後は 人は離(か)ゆとも」
※
源氏(1001‐14頃)
夕顔「さりとも鬼なども我をば見許してんとの給ふ」
③ 可能であると推量する意を表わす。…することができるだろう。
※古今(905‐914)春上・一九「春日野のとぶひの野守いでて見よ今いくかありて若菜つみてん〈よみ人しらず〉」
④ 適当・当然のこととする意を表わす。…てしまうべきだ。…するのがよい。
※
徒然草(1331頃)一七〇「心づきなき事あらん折は、なかなかその
よしをも言ひてん」
⑤ (多く助詞「や」「な」などを付けて) 相手に対する
婉曲な要求を表わす。…て(くれる・くださる)でしょうか。…でしょうね。
※竹取(9C末‐10C初)「翁の申さん事、聞き給ひてむや」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報