(読み)モ

デジタル大辞泉 「も」の意味・読み・例文・類語

も[係助・接助・終助]

[係助]種々の語に付く。
ある事柄を挙げ、同様の事柄が他にある意を表す。…もまた。「国語好きだ」「ぼく知らない」
「み吉野の山のあらしの寒けくにはたや今夜こよひがひとり寝む」〈・七四〉
同類の事柄を並列・列挙する意を表す。「木枯れる」「右わからない」
しろかねくがね―玉―何せむにまされる宝子にしかめやも」〈・八〇三〉
全面的であることを表す。
㋐不定称の指示語に付き、全面的否定、または全面的肯定を表す。「疑わしいことは何ない」「どこいっぱいだ」「だれが知っている」
「何―何―、小さきものは皆うつくし」〈・一五一〉
㋑動詞の連用形や動作性名詞に付き、打消しの語と呼応して、強い否定の意を表す。「思いよらぬ話」「返事しない」
おおよその程度を表す。…ぐらい。…ほど。「一週間あればできる」「今なら一万円しようかね」
驚き・感動の意を表す。「この本、三千円するんだって」
「限りなく遠く―来にけるかなとわびあへるに」〈伊勢・九〉
ある事柄を示し、その中のある一部分に限定する意を表す。…といっても。…のうちの。「中世鎌倉のころ」「東京西のはずれ」→もこそもぞもや
[接助]形容詞・形容詞型活用語の連用形、動詞・動詞型活用語の連体形に付く。逆接の意を表す。…とも。…ても。…けれども。「見たく見られない」「努力する報われなかった」
「いつしかと涼しき程待ちでたる―、なほ、はればれしからぬは、見苦しきわざかな」〈・宿木〉
「身一つ、からうじて逃るる―、資財を取りづるに及ばず」〈方丈記
[終助]文末で、活用語の終止形助詞接尾語「く」に付く。感動・詠嘆を表す。…ことよ。…なあ。→かもぞもはもやも
「春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐひす鳴く―」〈・四二九〇〉
[補説]主に上代の用法で、その後は「かな」に代わった。係助詞終助詞的用法ともいう。

も[副]

[副]
もう3」に同じ。さらに。いま。「少し待とう」「一ついかがですか」
もう1」に同じ。もはや。
「東京へは、―二十年も出ん」〈漱石草枕

も[助動]

[助動][○|○|も|も|○|○]《上代東国方言》活用語の未然形に付く。推量の助動詞」に同じ。
上野かみつけの佐野田の苗の群苗に事は定めつ今はいかにせ」〈・三四一八〉

も[五十音]

五十音図マ行の第5音。両唇鼻音の有声子音[m]と母音[o]とから成る音節。[mo]
平仮名「も」は「毛」の草体から。片仮名「モ」は「毛」の末3画から。

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精選版 日本国語大辞典 「も」の意味・読み・例文・類語

  1. [ 1 ] 〘 係助詞 〙
    1. [ 一 ] 文中用法。
      1. 文中の種々の連用語を受ける。
        1. (イ) 同類のものが他にあることを前提として包括的に主題を提示する。従って多くの場合、類例が暗示されたり、同類暗示のもとに一例が提示されたりする。類例が明示されれば並列となる。単文の場合は活用語を終止形で結ぶ。
          1. [初出の実例]「太刀が緒(モ) いまだ解かずて 襲(おすひ)(モ) いまだ解かねば」(出典:古事記(712)上・歌謡)
        2. (ロ) 主題を詠嘆的に提示する。
          1. [初出の実例]「沖つ鳥 胸見る時 羽叩ぎ(モ) これはふさはず」(出典:古事記(712)上・歌謡)
        3. (ハ) 願望の対象を感動的に提示する。
          1. [初出の実例]「我が命(モ) 長くもがと 言ひし工匠はや」(出典:日本書紀(720)雄略一二年一〇月・歌謡)
      2. 同じ語の間にはさみ、強調の意を表わす。
        1. (イ) 「AもA(だ)」の形で同じ語(名詞または形容動詞語幹)を受けて、一般的なAではなく特別な、程度の甚だしいAである、ということを表わす。→折りも折り
          1. [初出の実例]「下へ来て居さっしゃる客は、田舎田舎、箸の持様も知らぬ、野暮助のたわいなしでござりまする」(出典:歌舞伎幼稚子敵討(1753)三)
        2. (ロ) 「AもAだが(なら)BもBだ」の形で人を表わす名詞を受けて、AもBも共に常軌を逸していてあきれるほどである、の意を表わす。→何方(どっち)もどっち
          1. [初出の実例]「是を二十五円で売りつけられる阿爺(おとっさん)阿爺だが、それを又二階迄、えっちらおっちら担ぎ上げる御前御前だね」(出典:虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一〇)
        3. (ハ) 「…も…たり」(「たり」は完了の助動詞)などの形で、同じ動詞の連用形を受けて、その動作が激しく、あるいは長時間にわたって行なわれた、ということを、驚きの気持を込めて言う。→揃いも揃う
          1. [初出の実例]「をほへをほへたり、云云たりそ」(出典:史記抄(1477)三)
      3. 対照的な二つの語に添えて強調の意を表わす。
        1. (イ) 「…も…ないもない」の形で同じ語(動詞・形容詞)を受け、…するか(…であるか)どうかを論ずるまでもない、ということを表わす。
          1. [初出の実例]「容す容さん有るものか」(出典:金色夜叉(1897‐98)〈尾崎紅葉〉続)
        2. (ロ) 「AもBもない」の形で対照的な意味の二つの語を並べて、AとBの区別をする場面・状況ではない、という意を表わす。「ここでは先輩後輩ない。みんな平等なんだ」
          1. [初出の実例]「いや、何もお前、医学的な話ぢゃないか。上品下品無い」(出典:桜桃(1948)〈太宰治〉)
        3. (ハ) 「Aもへったくれ(くそ)もない」「Aも何もない」などの形で、この状況ではAなぞ本来の意味・価値をもたない、また、Aが存在しない、必要ない、ということを強めて言う。
          1. [初出の実例]「イヤ置け置け、断(ことはり)へったくれ入らぬ」(出典:浄瑠璃・小野道風青柳硯(1754)四)
      4. 詠嘆を表わし、間投助詞的に用いられる。
        1. (イ) 間投助詞に上接して軽い詠嘆を表わす。
          1. [初出の実例]「置目(モ)や淡海の置目明日よりはみ山隠りて見えずかもあらむ」(出典:古事記(712)下・歌謡)
        2. (ロ) 形容詞の連用形・副詞・数詞・接続助詞「て」などを受け、また複合動詞の中間に介入して詠嘆的強調を表わす。
          1. [初出の実例]「うれたく(モ) 鳴くなる鳥か」(出典:古事記(712)上・歌謡)
      5. 係助詞に上接して副助詞的に用いられる。→もこそもぞもやもか
    2. [ 二 ] 文末用法。文末の終止形(文中に係助詞がある時はそれに応ずる活用形)およびク語法を受けて詠嘆を表わす。体言を受ける場合は同じく詠嘆を表わす他の係助詞が上接して「かも」「はも」「そも」などの形となる。終助詞とする説もある。
      1. [初出の実例]「はしけやし 我家(わぎへ)の方よ 雲居立ち来(モ)」(出典:古事記(712)中・歌謡)
  2. [ 2 ] 〘 接続助詞 〙 活用語の連体形を受け、また「ても」の形で確定の逆態接続を表現する。
    1. [初出の実例]「心ひとつにいとど物思はしさ添ひて内裏へ参らむと思しつる出で立たれず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)橋姫)
  3. [ 3 ] 〘 終助詞 〙[ 一 ][ 二 ]

  1. 〘 副詞 〙 ( 「ま(今)」の変化したものか )
  2. もう
    1. [初出の実例]「『よひものがあらばおいてこひ』〈略〉『もおいてきたか』」(出典:虎明本狂言・鼻取相撲(室町末‐近世初))
  3. もう
    1. [初出の実例]「やいやいも一番とらふといへ」(出典:狂言記・文相撲(1730))

も【も・モ】

  1. 〘 名詞 〙 五十音図の第七行第五段(マ行オ段)に置かれ、五十音順で第三十五位のかな。いろは順では第四十五位で、「ひ」のあと、「せ」の前に位置する。現代標準語の発音では、両唇を閉じて発する有声通鼻音 m と母音 o との結合した音節 mo にあたる。「も」の字形は、「毛」の草体から出た。「モ」の字形は同じく「毛」の第一画を省略した形から出た。ローマ字では、mo をあてる。

  1. 〘 助動詞 〙 推量の助動詞「む」にあたる上代東国方言。
    1. [初出の実例]「人妻とあぜかそを言はむ然らばか隣の衣を借りて着なは毛(モ)」(出典:万葉集(8C後)一四・三四七二)

  1. 〘 名詞 〙もがさ(痘瘡)
    1. [初出の実例]「此年少童もをやむ。亦はいなすりをやみ候。大概はつるる也」(出典:勝山記‐大永三年(1523))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「も」の意味・わかりやすい解説

五十音図第7行第5段の仮名で、平仮名の「も」は「毛」の草体から、片仮名の「モ」は「毛」の第2画以後からできたものである。万葉仮名では「毛、母、物、方、茂、文、目、望(以上音仮名)、藻、哭、喪、裳(以上訓仮名)」などが使われたが、『古事記』には甲(=毛)、乙(=母)の区別がみられる。ほかに草仮名としては「(毛)」「(裳)」「(母)」「(茂)」などがある。

 音韻的には/mo/で、両唇を閉じた唇内鼻音の[m]を子音にもつが「ともしい―とぼしい(乏)」「ひも―ひぼ(紐)」などのように語によっては[b]と子音交替する場合もある。上代(古事記)では甲乙2類に仮名を書き分けるが、これは当時の音韻を反映したものと考えられる。

[上野和昭]

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