やらん(読み)ヤラン

デジタル大辞泉 「やらん」の意味・読み・例文・類語

やら‐ん

[連語]断定助動詞「なり」の連用形「に」、係助詞「や」、動詞「あり」の未然形「あら」、推量の助動詞「む」の重なった「にやあらむ」の音変化》
文末用法)
㋐疑問の気持ちを込めた推量の意を表す。…であろうか。
「いかさまこれは祇といふ文字を名について、かくはめでたき―」〈平家・一〉
㋑遠回しにぼやかして言う意を表す。…とかいうことだ。…とか。
まりも難き所を蹴出だしてのち、やすく思へば、必ず落つと侍る―」〈徒然・一〇九〉
(文中用法)体言または格助詞「と」に付いて副助詞的に用いて、不確かなこと、不定の意を表す。
「主上すでに人も通はぬ隠岐国と―に流されさせ給ふ上は」〈太平記・四〉
(「…やらん…やらん」の形で)不確かなことを漠然と並列・列挙する。…やら…やら。
「かやうに浪の立つ―、風の吹く―も知らぬ体にて」〈平家・六〉
[補説]中世以降の語。のちに「やらう」と変化し、さらに室町期には「やら」ともなり、現代の副助詞「やら」につながる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「やらん」の意味・読み・例文・類語

やら‐ん

  1. ( 断定の助動詞「なり」の連用形「に」、係助詞「や」、動詞「あり」の未然形「あら」、推量の助動詞「む」の重なった「にやあらむ」の変化したもの )
  2. 文末にあって、「…(の)だろうか」の意を表わす。
    1. [初出の実例]「この世のありにくくなりにたるやらん」(出典:浜松中納言物語(11C中)一)
    2. 「あまりに思へば夢やらん」(出典:平家物語(13C前)三)
  3. ( 副助詞的に用いられる ) 体言および多くは格助詞「と」を受け、不確実・不定の意を表わす。
    1. [初出の実例]「余に何とやらん心ぼそうて徒然なるに」(出典:平家物語(13C前)二)
    2. 「佐渡とやらんは人も通はぬ怖しき嶋とこそ聞うれ」(出典:太平記(14C後)二)
  4. ( 「…やらん…やらん」の形で ) 不確かなことを漠然と並列・列挙する。…やら…やら。
    1. [初出の実例]「か様に浪のたつやらん、風の吹やらんもしらぬ躰にて」(出典:平家物語(13C前)六)

やらん

  1. 〘 名詞 〙いすか(鶍)

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