アカクラゲ(読み)あかくらげ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカクラゲ」の意味・わかりやすい解説

アカクラゲ
あかくらげ / 赤水母
[学] Dactylometra pacifica

腔腸(こうちょう)動物門ハチクラゲ綱旗口(はたくち)クラゲ目オキクラゲ科に属するクラゲ。傘は柔らかい寒天質に富み、半球よりやや扁平(へんぺい)で、普通、直径9~12センチメートル、ときにはさらに大形になることがある。傘の外表面上に、16本の顕著な褐色の太い縞(しま)が放射状に並んでいるが、これらの縞はときには薄くて目だたぬこともあり、また場合によってはほとんど消失してしまっていることもある。触手は長く濃褐色で、傘縁に普通40本みられるが、大形のものでは56本に達することもある。口腕(こうわん)は4個、淡褐色できわめて長くリボン状である。触手の上の刺胞(しほう)の毒はきわめて強く、その触手で獲物小魚などをつかまえて食べる。人間がこれに手を触れると強い痛みを感じ、漁師海水浴の人々などに嫌われる。このようなこともあって本種は古くからよく知られ、また各地でいろいろな俗称でよばれている。外傘の模様が旧日本軍の連隊旗の模様に似ていることからレンタイキクラゲ、口腕が長いのでアシナガクラゲ、触手の刺胞が乾燥して微粉となり人間の鼻に入ると粘膜を刺激してくしゃみが出るのでハクションクラゲ、などがそれである。また、瀬戸内海ではアカンコとよばれて釣りの餌(えさ)に用いられる。このクラゲは北海道から沖縄まで日本の沿岸に広く分布しており、またフィリピン、北太平洋、北アメリカ西岸などからも知られている。

[山田真弓]


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改訂新版 世界大百科事典 「アカクラゲ」の意味・わかりやすい解説

アカクラゲ
Dactylometra pacifica(=Chrysaora melanaster

ハチクラゲ綱オキクラゲ科の腔腸動物(刺胞動物)。かさの表面にふつう16本の赤褐色の太い筋があるところからレンタイキクラゲ(連隊旗水母),または触手の刺胞が乾いて鼻の中に入ると粘膜を刺激してくしゃみがでるところからハクションクラゲ,4本の口腕が長いところからアシナガクラゲなどの別名がある。また瀬戸内海ではアカンコと呼んで釣りの餌に用いている。本州から台湾に分布し,春から夏にふつうに見られる。かさは直径9~12cmの半球状で,赤褐色の太い筋には個体によって多少変化が見られる。4本の口腕は太くて長い。かさの縁には糸状の細長い触手がふつう40本ほどあるが,大型の個体ではさらに多く,よくのびると長さが50~60cmにもなる。触手にある刺胞は強い毒をもっていて,これに刺されると非常に痛くて赤くはれあがる。小魚などを刺胞毒で麻痺させて口へ運ぶ。近似種のオキクラゲPelagia panopyra(かさの直径5~7cm)はかさを刺激すると粘液をだして強い光を発する。
クラゲ
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アカクラゲ」の意味・わかりやすい解説

アカクラゲ
Dactylometra pacifica

刺胞動物門鉢虫綱旗口クラゲ目オキクラゲ科。別名サナダクラゲともいい,また傘の模様が連隊旗に似ているところからレンタイキクラゲと呼ばれたこともある。傘は直径 10~15cmの半球状で,表面に 16本の褐色の太い筋が放射状に並ぶ。傘の縁から長さ 50~80cmに及ぶ褐色,糸状の触手が 40~50本垂れ下がっており,泳ぐとこれが髪の毛のように水中になびく。触手の刺胞には強い毒があり,刺されると非常に痛く,みみずばれや水ぶくれになる。また魚網にかかったまま引き上げられ,それがそのまま乾燥して粉末状になったものでも刺激性が強い。風に飛ばされた粉末が鼻に入るとくしゃみが出ることからハクションクラゲの名もある。本州から台湾近海にかけて分布し,日本では春から夏に沿岸で見られる。(→クラゲ刺胞動物鉢虫類無脊椎動物

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百科事典マイペディア 「アカクラゲ」の意味・わかりやすい解説

アカクラゲ

傘の模様からレンタイキクラゲ(連隊旗水母)ともいう。ハチクラゲ綱オキクラゲ科の腔腸(こうちょう)動物。傘の直径は9〜12cm,半球状で表面にふつう16本の赤褐色のしまがある。本州〜台湾に分布。触手には強い毒をもった刺胞があり,刺されると非常に痛く,赤くはれあがる。小魚などを捕らえて食べる。
→関連項目腔腸動物

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世界大百科事典(旧版)内のアカクラゲの言及

【ビゼンクラゲ】より

…〈備前〉の名は明治年間に岡山県児島湾でこのクラゲの小規模な漁を行い,食用にしていたことによる。俗称アカクラゲ(有明海沿岸地方による)。傘は半球状で,直径30cmほどであるが,1mくらいになるものもある。…

※「アカクラゲ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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