日本大百科全書(ニッポニカ) 「アカマタ・クロマタ」の意味・わかりやすい解説
アカマタ・クロマタ
あかまたくろまた
沖縄県八重山(やえやま)列島の稲の豊作祈願の行事。石垣市宮良(みやら)では、アカムタ・クロムタといい、「赤い人・黒い人」の意とする。仮面をつけ、草で装い、稲の豊作をもたらす世持神(よもちがみ)に扮(ふん)した若者が、聖地から現れて、村の家々を訪れ、祝福する。西表(いりおもて)島古見(こみ)が本源で、各地に広まった。旧暦6月の豊年祭の一部で、『八重山島諸記帳』(1727)にもみえる。古見の三離御嶽(みつはなれおたけ)に稲を頭にのせた世持神が現れると豊作であったが、それが絶えたので、人を神の姿にして祀(まつ)り、古見の3部落から1艘(そう)ずつの船を出して競漕(きょうそう)して豊作を祈ったとある。アカマタもクロマタもその仮装神の名で、古見にはほかにシロマタもあり、一神ずつ各部落で祀る。クロマタは親神で、三離御嶽に出現するという。青年になって、この行事に参加するときには、村人としての厳重な資格審査があり、いまも宗教的神秘性が保持されている。石垣市川平(かびら)のマユンガナシ、伊平屋(いへや)諸島のテルコガミも同系統の行事であるが、海神祭(うみがみまつり)とも通じるところがある。
[小島瓔]