アジア太平洋地域内で関税や貿易障壁を撤廃した自由貿易圏をつくる構想。略称FTAAP(エフタープ)。2004年にAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のビジネス諮問委員会が提唱し、2006年のAPECハノイ首脳宣言に長期的な検討議題として盛り込まれた。関税の自由化だけでなく、サービス分野の規制緩和、投資障壁の撤廃、知的財産権の保護、人の移動・交流の促進など包括的な自由貿易協定づくりを目ざす。構想が実現すれば、世界人口の約4割、世界の国内総生産(GDP)の約6割を占める自由経済圏が誕生する。
世界貿易機関(WTO)の多国間交渉(ドーハ・ラウンド)が行き詰まっているため、アジア太平洋域内では2国間や複数国間のFTA(自由貿易協定)が相次いで結ばれている。ASEAN(東南アジア諸国連合、加盟10か国)は2015年の経済統合を目標に掲げているほか、1997年のアジア通貨危機をきっかけに始まった日本、中国、韓国にASEANを加えた「ASEAN+3」(13か国)も経済連携を模索している。さらに「ASEAN+3」にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えた「ASEAN+6」(16か国)は2012年11月の東アジア首脳会議において、RCEP(アールセップ)(東アジア地域包括経済連携協定)締結へ向けて交渉を開始することで合意した。一方で、アメリカ、カナダ、オーストラリア、シンガポールなどの環太平洋諸国によるTPP(12か国、環太平洋経済連携協定)交渉に日本も参加を表明し、2013年(平成25)7月より参加している。こうした相次ぐ自由貿易協定を目ざす動きを踏まえ、2010年に横浜で開かれたAPEC首脳会議は「ASEAN+3、ASEAN+6、TPPを基礎」にして、長期的にFTAAPを目ざすことを確認した。ただし、中国が「ASEAN+3」や「ASEAN+6」を軸とした枠組みに積極的であるのに対し、アメリカはTPP締結に積極的であるなど、域内各国の思惑は一致していない。アジア太平洋域内にはミャンマー、ラオス、カンボジアといった低所得国もあり、環太平洋地域の自由貿易圏の樹立にはかなりの時間がかかるとの見方が多い。
[編集部]
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