アスベスト公害(読み)アスベストこうがい

百科事典マイペディア 「アスベスト公害」の意味・わかりやすい解説

アスベスト公害【アスベストこうがい】

アスベスト石綿)は化学的に安定しているうえ,熱に強く,燃えない。また摩耗もしにくく,電気絶縁性,保温性,防音性など多くの優れた性質を持つ。このため工業原料として使われている製品は約300種もある。このうち,壁材,防火板,吸音板,水道管など,第2次大戦後の建造物に多用されたアスベスト製品から出る粉塵繊維)に発癌性が認められ,また,それが呼吸器疾患の原因になると判明したことから社会問題となった。アスベストが原因とみられる中皮腫(癌の1種)は潜伏期間30〜40年とされ,致死率が高い。建物の解体現場や工場では粉塵が一定以上飛散しないように規制され,米国では1986年にアスベストが使用禁止となった。日本でも1975年に吹き付け工法が禁止され,1995年に毒性の強い青石綿と茶石綿を使用禁止,2004年に残る白石綿も含めて原則として使用禁止。2005年には,代替品がないために例外的に使用されているものも2008年までに全面禁止の方針が決まった。2006年,石綿被害者救済法が成立し,石綿の除去を進める関連4法(大気汚染防止法地方財政法建築基準法廃棄物処理法)が改正されるとともに,同年9月,労働安全衛生法施行令が改正され,全面禁止が施行された。

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