C23H38N7O17P3S(809.58).略称CH3CO-CoA.アセチル補酵素A,活性アセタートともいう.生体内の解糖反応により生じたピルビン酸は,ピルビン酸脱水素酵素複合体(補酵素はCoA,NAD+,リポ酸,チアミン二リン酸,Mg2+)により,アセチルCoAとなる.また,アセチルCoAは脂肪酸の酸化的分解によっても生成される.アセチルCoAは高エネルギー化合物であり,そのチオエステル結合が加水分解されるときの自由エネルギー変化は-33.5 kJ mol-1 である.アセチルCoAは次式に示すように,カルボニル炭素が部分的に正に,α炭素は部分的に負に荷電する.前者はアミン,アンモニア,アルコール,チオールエステル,リン酸などの求核試薬と反応し,後者はアシルCoA,CO2,CO2-ビオチン複合体などの親電子試薬と反応する.
アセチルCoAの主要な反応には次のものがある.
(1)エステルまたはアミドの生成
(3)縮合反応
このようにして生体内においてアセチルCoAは,炭水化物の代謝,脂肪酸の分解と合成,ステロイド,ケトン体の代謝,プロピオン酸の代謝,分岐鎖アミノ酸の代謝などに関与している.[CAS 72-89-9][別用語参照]補酵素
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アセチル補酵素(coenzyme)Aの略称。Ac-CoA,CoAS-CO-CH3と略記されることもある。コエンザイムAのSH基に酢酸がチオエステル結合した化合物で,高エネルギーリン酸エステル(⊿G°′=-7.7kcal)として,生体内におけるアセチル基の供与体として重要。1950年代のはじめにリネンF.Lynenが酵母から単離し,それまで活性酢酸と呼ばれていた物質に相当することが明らかにされた。生体内ではピルビン酸デヒドロゲナーゼ反応でピルビン酸から生成するのに加えて,脂肪酸のβ酸化,酢酸の活性化反応などによっても生成する。オキサロ酢酸と反応するとクエン酸を生じ,これがクエン酸回路の始まりとなる。微生物から高等動物まで広い範囲で分布しており,ステロイドやカロチノイドの代謝,脂質代謝などで重要な役割を演じている。また代謝の調節因子として,律速酵素rate-determining enzyme(反応過程の進行速度を支配する酵素)の活性化や阻害を行うこともある。
執筆者:徳重 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…生体物質の中で重要なものにはATP(アデノシン三リン酸)のピロリン酸結合,アセチルリン酸のアシルリン酸結合,ホスホエノールピルビン酸のエノールリン酸結合,クレアチンリン酸のグアニジンリン酸結合などリン酸化合物が多く,これらの物質(または結合)を特に高エネルギーリン酸化合物(または結合)という。しかしそのほかにもアセチルCoAのチオエステル結合,S‐アデノシルメチオニンのメチルスルホニウム結合などの重要な例がある。加水分解に伴う大きな自由エネルギー変化(ATP+H2O―→ADP+H3PO4のpH7における標準自由エネルギー変化は7.3kcal/molである)は化学的には,分子内の静電的反発と分解生成物の共鳴による安定化に由来する。…
…グルコース(ブドウ糖)代謝においては,嫌気的,好気的両過程とも,ピルビン酸に至る反応経路は同じである(エムデン=マイヤーホーフ経路)。脱炭酸されてアセチルCoAを生成する。アミノ酸の分解においては,セリン,アラニン,システイン,グリシンがピルビン酸を経て代謝される。…
※「アセチルCoA」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新