アナトリア諸言語(読み)あなとりあしょげんご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナトリア諸言語」の意味・わかりやすい解説

アナトリア諸言語
あなとりあしょげんご

小アジア地方、すなわちアナトリア(「日の昇る所」「東方」を意味するギリシア語に由来)に古く行われた一群言語。アジアニック諸言語ともいう。言語名を列挙すると、(1)ハッティ語、(2)ヒッタイト語、パラ語、ルウィヤ語、象形文字ルウィヤ語(象形文字ヒッタイト語とも称される)、(3)フッリ語(ミタンニ語あるいはスバラヤ語とも称される)、ウラルトゥ語(ハルディ語あるいはバン語とも称される)、(4)プリギア語、リディア語、カリア語、リキア語、(5)スィデ語、などである。(1)から(3)群までは、象形文字ルウィヤ語を除いて楔形(くさびがた)文字で記録され、(4)群はギリシア文字に由来する文字で、(5)は直接セム文字に由来する文字で記録されている。(2)群はいずれもインド・ヨーロッパ語族に属し、(4)群のリディア語、リキア語とともにアナトリア語派を形成する。(4)群のプリギア語もインド・ヨーロッパ語族に属するが、普通にはアナトリア語派よりもギリシア語に近い関係にあると考えられている。(1)のハッティ語は、(2)群などのインド・ヨーロッパ語を話す民族がこの地に到来する以前から行われていた言語で、その系統未詳である。(3)群のフッリ語とウラルトゥ語はアナトリアの東部に行われていたもので、互いに親族関係をもち、カフカス語的な特徴を有しているとされるが、やはり系統は未詳である。(4)群のカリア語、(5)のスィデ語についても、その系統は未詳。

[田中利光]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

発見学習

発見という行為の習得を目指す学習。または,発見という行為を通じて学習内容を習得することを目指す学習。発見学習への着想は多くの教育理論に認められるが,一般には,ジェローム・S.ブルーナーが『教育の過程』...

発見学習の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android