翻訳|anise
セリ科(APG分類:セリ科)の一年草。原産地はギリシアからエジプト、オリエントにかけての地域。日本には明治初期に渡来し、いまも少量だが栽培されている。根生葉はやや丸みのある三角形で縁に切れ込みが多く、葉柄は長い。夏に茎が高さ50センチメートルほどに伸び、茎につく葉はミツバ形となる。茎の上部で枝分れをして、白色の小花を多数つける。果実は卵形でやや扁平(へんぺい)、長さ5ミリメートルほどで、褐色地に白い縦筋が入る。種子(果実)がアニシードaniseedである。
古代ギリシア時代から薬草として知られ、漢方では果実は健胃、駆風(くふう)(腸内ガスの排出)、去痰(きょたん)、催乳の薬とされる。
香辛料としては、小さな果実を脱穀したアニシードを使っている。アニシードはクッキーやケーキ、キャンディー、パンやソーセージなどの香味づけに使われ、各種のスープにも用いられる。アニシードやその精油(アニスオイル)はアルコール飲料、たとえばアニゼットなどのリキュール、トルコの蒸留酒ラキ(ラク)などの香りづけにも使われる。葉もよい香りがあり、スープやサラダ、ハーブ・ティーなどに用いられる。アニス特有の芳香と甘味の主成分はアネトールで、アニシードにもっとも多く含まれる。
[河野友美・山口米子・齋藤 浩 2021年11月17日]
種子をアニス実(じつ)aniseedと呼び,古くから香辛料として有名なセリ科の一年草。ギリシアからエジプト,オリエント地域が原産で,ギリシア時代にはおもに薬草として使われた。日本には明治初期に渡来し,今も少量だが栽培されている。根ぎわから出る葉はやや丸みのある三角形で,縁に切り込みが多く,長い柄がある。夏に茎が伸び高さが50cmほどになり,先が枝分れをして白色の小花を多数つける。茎の上部の葉はミツバ形となる。果実は2個の分果からなりやや扁平な卵形で,長さは5mm程度,縦に白い筋がはいり,褐色に熟す。種子(果実)は,香辛料として広く用いられ,丸のままパンやビスケットに入れるほか,スープなどにも使う。甘いリキュールのアニゼットの香り付けにも用いる。薬用としての歴史も古く,健胃,駆風,去痰,催乳の薬とされる。種子からアニス油を採り,医薬品や化粧品に使う。若い葉もハーブ(香草)として使われる。
執筆者:星川 清親
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