アフタル(読み)あふたる(その他表記)al-Aal

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アフタル」の意味・わかりやすい解説

アフタル
あふたる
al-Aal
(640ころ―708ころ)

アラブ詩人イラクの両河地方に生まれ、生涯を通じてキリスト教徒であった。アフタルとはあだ名で「耳の垂れ下がっていること」をいう。幼少のころ母を失い、継母に育てられたが、真の母性愛に恵まれず、この継母を恨む詩を書き始め、飲酒にふけるようになった。のちにウマイヤ朝をたたえる詩をつくり、これに接した第5代カリフのアブドゥル・マリクは、彼を案内してダマスカス市中をパレードし最大級の賛辞を呈するよう部下に命じた。こうして宮廷との関係が生まれ、桂冠(けいかん)詩人となったが、遊牧民としての血は彼をしばしば砂漠へと駆り立て、部族抗争に身を投じた。ファラズダクジャリールらとともに、ウマイヤ朝の詩人として傑出した地位を占める。

[内記良一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アフタル」の意味・わかりやすい解説

アフタル
al-Akhtal

[生]640頃
[没]710頃
アラブの詩人。本名ギヤース Ghiyāth。タグリブ族の人。ジャリールおよびファラズダクとともにウマイヤ朝三大詩人の一人

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世界大百科事典(旧版)内のアフタルの言及

【アラブ文学】より

…政治詩ではイスラムはもとより,そのなかでもウマイヤ朝,シーア派,ハワーリジュ派などをそれぞれ支持する詩人が輩出した。これらのなかで重要なのはアフタルal‐Akhṭal(640ころ‐710),ファラズダクal‐Farazdaq(640ころ‐732ころ),およびジャリールJarīr(?‐733ころ)である。3人ともウマイヤ家の保護のもとにジャーヒリーヤの部族主義的な手法を用いて政争にかかわった。…

【宮廷文学】より

… アラビア半島においてはイスラム期前に詩人は各部族に属し,部族の武勇や栄誉をたたえる詩を作った。預言者ムハンマドの時代には詩は不振であったが,ダマスクスに都したウマイヤ朝(661‐750)の宮廷においては詩人が活躍し,部族的な頌詩の伝統のほかに,恋愛・抒情詩が台頭し,とくにカリフ,アブド・アルマリクに保護されたキリスト教徒のアフタルal‐Akhṭal(640ころ‐710)は最も代表的な宮廷詩人であった。 バグダードに都したアッバース朝(750‐1258)の宮廷においてはペルシア文化の影響が著しく,宮廷詩人が重要な位置を占め,中心的な人物はカリフ,ハールーン・アッラシードに仕えた宮廷詩人アブー・ヌワースであった。…

※「アフタル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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