改訂新版 世界大百科事典 「アメリカコウチュウ」の意味・わかりやすい解説
アメリカコウチュウ (アメリカ鉤虫)
Necator americanus
ヒトの小腸に寄生する体長約10mm,体幅約0.4mmのセンチュウ(線虫)。線形動物門円虫目コウチュウ科に属し,ズビニコウチュウとともにジュウニシチョウチュウ(十二指腸虫)ともいわれ,人体寄生コウチュウの代表的な種類である。中南米やアフリカ,アジアの熱帯から温帯に分布する。成虫は,口囊に1対の歯板を有し,小腸粘膜に咬着して血液および組織液を摂取する。その際の腸からの失血量は,1虫につき1日約0.03ml(ズビニコウチュウの1/5~1/7)と推定されている。雌虫1虫当りの産卵数は1日5000~1万個(ズビニコウチュウの約1/2)。虫卵が外界に出た場合,熱帯地方などでは土壌中で速やかに発育し,約1週間でヒトに感染可能なフィラリア型幼虫(第3期幼虫または被鞘幼虫)となる。経口感染もあるが,主として皮膚を通して感染し,血行を介して肺に達して一定の発育をとげた後,気道を経て咽喉から消化管に入り,小腸上部で成虫となる。感染後約6週間で産卵を開始する。感染の際の症状としては,幼虫による皮膚炎(かぶれ)や肺炎,成虫による消化器の不定愁訴,肝機能障害のほか,鉄欠乏性貧血(小赤血球性低色素性貧血)がみられる。
執筆者:小島 荘明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報